第14筋肉 爆燃!筋肉の鼓動と迫る魔王軍
「…皆、下がっていろ!」
割男は、そう叫ぶと、燃え盛る黒い炎の、前に躍り出た。
「…シックス様、しかし…!」
「…あんな炎、いくら、あなたの筋肉でも…!」
村人たちは、心配そうに、割男を見つめる。
「…大丈夫だ」
割男は、そう言うと、静かに、深呼吸を始めた。
「…この『筋肉』を、信じろ」
割男は、そう呟くと、目を閉じ、精神を集中させていく。
(…筋肉の神よ…俺に、力を…!)
割男の、祈りに呼応するように、彼の全身の「筋肉」が、脈打ち始めた。特に、腹直筋、大胸筋、上腕二頭筋、そして、大腿四頭筋が、まるで、生き物のように、蠢いている。
そして、次の瞬間、
「…おおおおおおお!!」
割男は、雄叫びを上げながら、両腕を、大きく広げた。
すると、どうだろう。彼の全身の「筋肉」から、黄金色の、眩い光が、放たれ始めたのだ。
「…な、なんだ…!?」
「…シックス様の、筋肉が、光って…!?」
村人たちは、皆、驚愕の表情を浮かべ、その光景を、見つめていた。
「…今だ…!」
割男は、そう言うと、両腕を、前に突き出し、
「…マッスル・エナジー・バースト!!」
そう、叫んだ。
次の瞬間、割男の、全身の「筋肉」から、黄金色の、エネルギー波が、放出された。そのエネルギー波は、まるで、生き物のように、うねりながら、黒い炎へと、向かっていく。
「…おおおおおおお!!」
そして、エネルギー波が、黒い炎に、直撃した、その瞬間、
「…!!!!!!」
激しい爆発音が、辺り一帯に、響き渡った。
「…な、なんだ…!?」
「…目、目が…!」
村人たちは、皆、その、眩い光と、爆風に、思わず、目を覆った。
しばらくして、光と、爆風が、収まると、
「…消えた…?」
「…黒い炎が、消えている…!」
村人たちが、恐る恐る、目を開けると、そこには、先ほどまで、燃え盛っていた、黒い炎が、完全に消え去った、森の姿があった。
「…やったのか、シックス様…!?」
「…あの、黒い炎を、消し去ったというのか…!?」
村人たちは、皆、信じられない、といった様子で、割男を見つめた。
「…はあ、はあ、はあ…」
割男は、その場に、膝をつき、荒い息をついていた。
「…シ、シックス…!大丈夫か…!?」
村人たちが、慌てて、割男に、駆け寄る。
「…ああ、大丈夫だ…」
割男は、そう言うと、ゆっくりと、立ち上がった。
「…しかし、一体、何が…」
割男は、自分の「筋肉」を、見つめながら、そう呟いた。
「…今の、力は…」
その時、
「…シックス!!無事か!?」
遠くから、聞き覚えのある声が、響いてきた。
「…!この声は、ガンガン!?」
割男は、声のする方を、振り返った。
「…シックス!!」
そこには、ガンガンと、そして、彼に背負われた、エルファの姿があった。
「…ガンガン!エルファ…!」
「…無事だったか、シックス…!」
ガンガンは、そう言うと、割男の元へ、駆け寄ってきた。
「…エルファは…!?」
「…ああ、何とか、無事だ…。しかし…」
「…しかし?」
「…気を失っている…。それも、ただ、気を失っているだけじゃねえ…。何か、様子がおかしい…」
「…様子が、おかしい…?」
割男は、そう言いながら、エルファを、覗き込んだ。
「…これは…!」
エルファの顔色は、青白く、その体は、まるで、氷のように冷たくなっていた。
「…エルファ…!しっかりしろ、エルファ…!」
割男は、そう言いながら、エルファの体を、抱き起こした。
「…これは、一体…」
その時、割男は、エルファの首筋に、何かが、刺さっていることに、気づいた。
「…これは…!?」
割男が、それを、よく見ると、それは、一本の、黒い矢だった。
「…黒い、矢…?」
「…シックス、それは…!」
ガンガンが、そう言いかけた時、
「…くくく…流石は、『筋肉の神』の、力を受け継ぐ者、といったところか…」
突然、どこからか、低い男の声が、響いてきた。
「…!?」
「…!?」
「…誰だ!?」
割男は、そう言いながら、辺りを見回した。
「…くくく…我らの邪魔をする、『筋肉』は、全て、排除する…」
「…なに…!?」
「…お前たちは、ここで、終わりだ…」
声は、そう言うと、
「…我が名は、バルザック。『魔王軍』、四天王が一人…」
「…魔王軍、だと…!?」
「…そして、この『呪いの魔炎』の、使い手…」
「…呪いの、魔炎…!?」
「…くくく…お前たちの『筋肉』、我らが、魔王様に、捧げてやろう…!」
そう言うと、
「…消えろ、『筋肉』ども…!」
バルザックと名乗った男は、そう言うと、
「…『カースド・フレイム』!!」
呪文を唱えた。
次の瞬間、再び、あの、黒い炎が、辺り一面を、包み込んだ…!
「…くっ…!また、この炎か…!」
割男は、そう言いながら、歯噛みした。
「…しかし、今度は、そうは、いくまい…!」
割男は、そう言うと、再び、全身の「筋肉」に、意識を集中させた。
「…『筋肉』の神よ…!俺に、力を…!」
割男が、そう呟いた、その時だった。
「…シックス…やめろ…!」
突然、意識を取り戻した、エルファが、掠れた声で、そう言った。
「…エルファ!?気がついたのか…!」
「…その炎は、お前の『筋肉』でも、消せない…!」
「…なに…!?」
「…あれは、『呪いの魔炎』…。『筋肉の神』の力を、封じるために、作られた、特別な炎だ…」
「…『筋肉の神』の力を、封じる…!?」
「…ああ…。そして、その炎を、生み出したのは…」
エルファは、そう言いかけた時、
「…ぐっ…!?」
突然、激しく咳き込み、口から、黒い血を吐き出した。
「…エルファ!?しっかりしろ、エルファ…!」
「…その、矢には…『魔王軍』の、『呪い』が…込められている…」
「…『魔王軍』の、『呪い』…!?」
「…ああ…。私の、体は…もう、長くは…」
「…そんな…!?」
「…しかし、希望は、まだ、ある…」
「…希望…?」
「…『筋肉の神殿』に、行け…、シックス…」
「…『筋肉の神殿』…」
「…そこで、お前さんの、『筋肉』の、真実が、分かるはずだ…」
「…俺の、『筋肉』の、真実…?」
「…そして、『古代エルフの秘薬』を、完成させろ…」
「…『古代エルフの秘薬』…」
「…その秘薬があれば、この、『呪いの魔炎』を、消し去ることができる…」
「…そんなことが…」
「…ああ…。そして、アルカディアを…救ってくれ…」
エルファは、そう言うと、力なく、目を閉じた。
「…エルファ!?エルファ…!」
割男は、必死に、エルファに、呼びかけた。
「…くくく…無駄だ…」
その時、再び、バルザックの声が、響いてきた。
「…そのエルフは、もう、助からない…」
「…貴様…!」
割男は、怒りに満ちた表情で、声のする方を、睨みつけた。
「…我らが、『魔王軍』の、『呪い』の、力を、侮るな…」
「…」
「…さあ、『筋肉』の男よ…。お前も、そのエルフと共に、ここで、果てるがいい…!」
バルザックは、そう言うと、
「…『カースド・フレイム』!!」
再び、呪文を唱えた。
そして、
「…シックス!!」
ガンガンが、割男を、突き飛ばした。
次の瞬間、
「…ぐああああああ!!」
ガンガンが、黒い炎に、包まれた…!
「…ガ、ガンガン!!」
割男は、叫んだ。
「…くそっ…!このままじゃ…!」
割男は、そう言いながら、立ち上がろうとした、その時、
「…シックス…」
エルファが、微かに、目を開け、割男に、話しかけてきた。
「…エルファ…!」
「…こ、これを…」
エルファは、そう言うと、震える手で、懐から、何かを、取り出した。
「…これは…?」
「…『秘薬』の…レシピ…」
「…!?」
「…それと…私の…研究ノート…」
「…エルファ、お前…!?」
「…頼む…シックス…。アルカディアを…救って…」
エルファは、そう言うと、力尽き、再び、意識を失った…。
「…エルファ…エルファァァァァァ!!」
割男の、絶叫が、燃え盛る森に、響き渡った。