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第10筋肉 筋肉伝承!秘薬と使命とドワーフの親父


「…皆、よく聞いてくれ」


特別訓練を終え、割男とガンガンが村人たちと別れを告げようとしていた時、エルファが真剣な表情で皆に呼びかけた。


「…実は、話しておかなければならないことがある」


「…話?」


「…なんだ、エルファ?改まって」


割男とガンガンが不思議そうにエルファを見つめる。村人たちも、何事かとエルファに注目した。


「…単刀直入に言おう。私は、この村を離れる」


「…!?」


「…!?」


エルファの言葉に、割男とガンガンだけでなく、村人たちも驚きの声を上げた。


「な、なんだって!?」


「どういうことだ、エルファ!?」


「エルファ様、どうして…!?」


皆が口々にエルファに問いかける。


「皆、落ち着いて聞いてくれ」


エルファはそう言うと、ゆっくりと話し始めた。


「私は先祖代々、『筋肉の神殿』を守る一族の末裔だ」


「『筋肉の神殿』を守る…?」


「ああ。しかし、数年前の『事件』で、私の一族は私を残して皆、死んでしまった…」


エルファは悲しげな表情でそう言った。その瞳には、深い悲しみの色が浮かんでいる。


「そして私は、その『事件』の真相をずっと探ってきた。その中で、確信したことがある」


「確信?」


「ああ。『事件』の裏には、『医療ギルド』、そしてその背後にいる『魔王軍』の影がある、と…」


「『医療ギルド』と『魔王軍』…!?」


「ああ。そして奴らは今、『筋肉の神殿』に封印されている『筋肉の神』の力を狙っている…!」


「『筋肉の神』の力を…!?」


「ああ。その目的は…おそらく、アルカディアの支配…いや、それ以上の…」


エルファはそこで言葉を切り、


「とにかく、一刻の猶予もない。私は『筋肉の神殿』に向かう」


「『筋肉の神殿』に…」


「ああ。そこで全ての真実を明らかにする」


エルファはそう言うと、固い決意を込めた表情で遠くを見つめた。


「しかし、エルファ、一人で行くのは危険すぎる…!」


割男がそう言ってエルファを止めようとする。


「ああ、分かっている。しかし私には、どうしても確かめなければならないことがあるんだ」


「確かめなければならないこと…?」


「ああ。そして、そのためには、どうしても『筋肉の神殿』に行かなければならない」


「しかし…」


「心配するな、シックス。私はエルフだ。それなりに、自分の身を守る術は心得ている」


「しかし…」


「それに私には、秘策がある…」


「秘策…?」


「ああ。これを見てくれ」


エルファはそう言うと、懐から一枚の古びた羊皮紙を取り出した。


「これは…?」


「『筋肉の神殿』に通じるとされる、『古代エルフの秘薬』の製造方法が記された羊皮紙だ」


「『古代エルフの秘薬』…?」


「ああ。その秘薬があれば、『筋肉の神殿』への道が開けるかもしれない」


「そんなものが…」


「ああ。しかし、この秘薬を完成させるためには、特殊な触媒が必要となる」


「触媒…?」


「ああ。そして、その触媒とは…」


エルファはそこで言葉を切り、


「お前さんの『筋肉』だ、シックス」


「!?」


「俺の『筋肉』!?」


割男は驚愕の声を上げた。


「ああ。お前さんの『筋肉』には、他の者にはない、特別な力が宿っている。それは、この前のブラッド・スライムとの戦いで証明された。あの、常識外れの再生能力を持つブラッドスライムを倒せたのも、そして、奴の再生能力を一時的に封じた私の薬品が効果を発揮しなかったことも…全て、お前の、その異常なまでの『筋肉』が、何らかの影響を与えているとしか、思えない…」


「しかし、なぜ、俺の『筋肉』が…」


「詳しいことは分からない。しかし、お前さんの『筋肉』があれば、必ず、『秘薬』を完成させることができると私は信じている」


「…」


「だから頼む、シックス…。私に力を貸してくれ…!」


エルファはそう言うと、割男に深々と頭を下げた。


「エルファ…」


割男はエルファの、その真剣な眼差しに心を打たれた。


「分かった。俺も一緒に行く」


「シックス…!」


「俺も、自分の『筋肉』の秘密を知りたいと思っていたところだ。それに、お前さん一人を危険な目に遭わせるわけにはいかない」


「ありがとう、シックス…!」


エルファはそう言うと、割男に微笑みかけた。


「しかし、エルファの姉ちゃん、心配だな…」


「ああ、そうだな…」


村人たちもエルファを心配そうに見つめている。


「俺も一緒に行くぜ!」


その時、ガンガンがそう言って名乗りを上げた。


「ガンガン!?」


「お前さんまで…」


「俺はドワーフだ!そう簡単にやられはしねえ!」


ガンガンはそう言うと、腰に携えた巨大な戦斧をドン、と地面に突き立てた。


「それに、『筋肉の神殿』には、俺の親父の秘密が隠されているかもしれないんだ」


「そうだったな…」


「ああ。だから俺も行く!」


ガンガンはそう言うと、固く拳を握りしめた。その眼には、強い決意の光が宿っていた。


「分かった、ガンガン。共に、行こう」


割男はそう言うと、ガンガンと力強く握手を交わした。


「しかし、この村を、このままにはしておけない…」


エルファが心配そうに村人たちを見つめながらそう言った。


「ああ、そうだな」


割男もそう言って頷いた。


「何か、対策を考えなければ…」


「対策、ねぇ…」


「そうだ!」


割男はそう言うと、何かを思いついたように手を叩いた。


「どうした、シックス?」


「この前の『特別訓練』を思い出してくれ」


「『特別訓練』?」


「ああ。村人たちに『筋肉トレーニング』を教えるんだ」


「『筋肉トレーニング』を…?」


「ああ。筋肉を鍛えれば、ブラッド・スライムにも対抗できるはずだ」


「しかし、本当に、そんな効果が…」


「ああ、任せろ!この『筋肉』にかけて保証する!」


割男はそう言うと、自信満々に胸を叩いた。その大胸筋は、まるで鉄板のように硬く、厚い。


「ふっ、おもしろい。その話、乗った」


ガンガンはそう言うと、ニヤリと笑った。


「よし!では、早速始めるぞ!」


こうして、割男とガンガンによる、村人たちへの二度目の「特別訓練」が始まることになったのだった…。


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