第9筋肉 熱闘!筋肉と友情とマシュマロと
「…というわけで、村の皆さん!今日から、俺と、このシックスが、皆さんを、真の筋肉へと導く、特別な訓練を、指導します!」
ガンガンは、村人たちを前に、そう高らかに宣言した。その声は、まるで、これから戦場へ向かう兵士を鼓舞する、将軍のようだ。そして、その背後には、なぜか、巨大なホワイトボードが設置されている。
「…特別な、訓練…?」
「…一体、何を、やらされるんだ…?」
村人たちは、皆、不安げな表情を浮かべている。無理もない。彼らのほとんどは、農作業や、家事労働に従事する、一般市民なのだ。筋肉トレーニングとは、縁遠い生活を送ってきた。
「…ふっ、心配するな!この訓練を受ければ、お前らも、今日から、筋肉モリモリ、生涯健康、間違いなしだ!」
「…はあ…」
ガンガンは、自信満々に、胸を張った。その大胸筋は、まるで、分厚い鋼板のようだ。しかし、村人たちの反応は、いまいち、芳しくない。
「…まあ、そうは言っても、いきなり、難しいことは、やらねえ。まずは、筋肉について、正しい知識を、身につけることが重要だ」
ガンガンは、そう言うと、ホワイトボードに、「筋肉とは」と、大きく書きなぐった。
「…筋肉とは、人生の伴侶!筋肉は、最高のファッション!そして、筋肉は、世界を救う!」
ガンガンは、そう言いながら、次々と、筋肉名言(?)を、ホワイトボードに書き連ねていく。
「…まず、筋肉の構造から説明しよう!筋肉は、主に、筋繊維と呼ばれる、細い繊維状の細胞から、構成されている。そして、その筋繊維は、さらに、アクチンとミオシンと呼ばれる、2種類のタンパク質で、構成されているのだ!」
「…アクチン…?ミオシン…?」
「…なんだか、よく分からないぞ…」
村人たちは、ガンガンの、専門用語(?)満載の説明に、早くも、困惑の色を浮かべている。
「…そして、筋肉を鍛えるためには、このアクチンとミオシンに、適切な負荷を与え、成長を促すことが、重要となる!その具体的な方法とは…」
ガンガンは、さらに、熱弁を続けようとしたが、
「…あの、すみません」
一人の村人が、おずおずと、手を上げた。
「…なんだ?」
「…その、筋肉の話は、よく分かったんですが…もっと、こう、実際に体を動かすような、訓練は、ないんでしょうか…?」
「…なんだと!?お前さん、この、筋肉講座の、ありがたみが、分かっていないのか!?」
ガンガンは、驚愕の表情を浮かべた。
「…まあまあ、ガンガン、そう熱くなるな」
割男は、そう言って、ガンガンをなだめた。
「…シックス、お前さんは、この、筋肉講座の、重要性が、分かっているのか!?」
「…ああ、もちろん分かっている。しかし、村人たちの言うことも、一理ある」
「…どういうことだ?」
「…実際に体を動かした方が、筋肉の働きを、より深く理解できる、ということだ」
「…ふむ、なるほど」
ガンガンは、そう言うと、腕を組み、考え込んだ。
「…よし、分かった!では、座学は、これくらいにして、実技に移るとしよう!」
「…おお!」
ガンガンの言葉に、村人たちは、歓声を上げた。
「…では、まずは、この俺の、筋肉を、見てもらおう!」
ガンガンは、そう言うと、上半身の鎧を、勢いよく脱ぎ捨てた。
「…おおっ!?」
その瞬間、村人たちから、驚きの声が上がった。
そこには、まさに「岩」と形容するにふさわしい、見事な筋肉が、現れたのだ。特に、胸筋、背筋、そして肩の筋肉は、異常なまでに発達しており、まるで、岩が、そのまま、そこに張り付いているかのようだ。
「…す、すごい筋肉だ…」
「…あんな筋肉、見たことがないぞ…」
村人たちは、皆、ガンガンの筋肉に、釘付けになっていた。
「…ふっ、どうだ!これが、ドワーフの、鍛え上げられた、筋肉だ!」
ガンガンは、自慢げに、自分の筋肉を、叩いてみせた。
「…しかし、シックスの筋肉は、これとは、また違った、美しさがある…」
「…ほう、どんな感じだ?」
「…そうだな、シックス、お前さんも、服を脱いで、皆に、その筋肉を見せてやってくれ」
「…えっ!?俺も…?」
割男は、突然のことに、戸惑いながらも、
「…まあ、いいだろう」
そう言って、タンクトップを、ゆっくりと脱いだ。
「…おおおおおおおっ!!」
その瞬間、村人たちから、先ほど以上の、大きなどよめきが起こった。
割男の、見事に鍛え上げられた、筋肉が、露わになったのだ。特に、腹筋は、まるで、彫刻のように、完璧に6つに割れており、その美しさは、見る者を、圧倒する。
「…な、なんという、美しい筋肉…!」
「…まるで、芸術品みたい…」
「…これが、シックス様の、筋肉…」
村人たちは、皆、割男の筋肉に、見惚れていた。
「…ふっ、やるじゃねえか、シックス」
ガンガンも、割男の筋肉を、まじまじと見つめながら、そう言った。
「…しかし、俺の筋肉の方が、より、力強く、美しい…!」
「…さあ、どうかな?」
割男は、そう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
「…よし、それでは、トレーニングを開始する!」
ガンガンは、そう言うと、近くにあった、大きな丸太を、指差した。
「…まずは、あの丸太を、使ったトレーニングだ!」
「…丸太…?」
「ああ!まずは、そうだな…『マシュマロキャッチ・トレーニング』から、始めるか!」
「…マシュマロキャッチ…?」
割男は、怪訝そうな表情を浮かべた。
「…シックス、お前さん、マシュマロを、上空に投げられるか?」
「…マシュマロを、上に…?」
「ああ。…できるだけ、高く、そして、遠くへ、投げてほしい」
「…まあ、それくらいなら、できるが…」
割男は、そう言うと、ガンガンから、マシュマロの入った袋を受け取った。
「…よし、では、いくぞ!」
割男は、そう言うと、マシュマロを、一つ取り出し、
「…せいやっ!!」
渾身の力で、空高く、放り投げた。
「…おおっ!?」
マシュマロは、まるで、矢のように、空高く舞い上がり、そして、放物線を描いて、落下してきた。
「…さあ、村人たちよ!そのマシュマロを、口で、キャッチするんだ!」
「…ええっ!?」
「…これを、キャッチしろと…!?」
村人たちは、ガンガンの言葉に、驚愕した。
「…安心しろ!このトレーニングは、動体視力と、反射神経を、鍛えるのに、最適なんだ!」
「…は、はあ…」
「…さあ、いくぞ!シックス、どんどん投げろ!」
「…お、おう…!」
割男は、ガンガンの指示に従い、次々と、マシュマロを、空高く、放り投げていく。
しかし、割男の投げるマシュマロは、速すぎて、高すぎて、村人たちは、全くキャッチできない。
「…くそっ、速すぎる…!」
「…全然、追いつけないぞ…!」
「…目が回る…」
村人たちは、皆、悪戦苦闘していた。
「…よし、俺が、手本を見せてやる!」
ガンガンは、そう言うと、自ら、マシュマロをキャッチしようと、試みる。しかし、
「…ぐぬぬ…!速い…速すぎるぞ、シックス…!」
ガンガンでさえ、割男の投げるマシュマロには、全く追いつけない。
「…ははは、どうした、ガンガン!その程度か!」
割男は、そう言いながら、さらに、マシュマロを投げ続ける。
「…くそっ…!こうなったら…!」
ガンガンは、そう言うと、近くにあった、大きな網を、持ち出した。
「…それで、キャッチするつもりか…?」
「…ああ!これなら、どうだ…!」
ガンガンは、そう言いながら、網を、大きく広げ、マシュマロをキャッチしようとする。しかし、
「…ぐぬぬ…!速い…速すぎるぞ、シックス…!」
やはり、割男の投げるマシュマロは、速すぎて、網でも、キャッチすることはできなかった。
「…あはははは!どうだ、ガンガン!参ったか!」
割男は、そう言いながら、さらに、マシュマロを投げ続ける。
「…くそっ…!こうなったら、奥の手だ…!」
ガンガンは、そう言うと、
「…村長!すまんが、ちょっと、手を貸してくれ!」
そう叫んだ。
「…えっ!?わ、私…!?」
村長は、突然の指名に、驚きの声を上げた。
「…ああ!村長、あんたの、その大きな口で、マシュマロを、キャッチしてくれ!」
「…ええっ!?わ、私に、そんなこと、できるわけ…」
「…できるさ!あんたなら、できる!さあ、早く!」
「…わ、分かった…!」
村長は、そう言うと、覚悟を決めた表情で、大きく口を開けた。
「…さあ、シックス!マシュマロを、投げてこい!」
ガンガンが、そう叫ぶと、割男は、
「…よし、いくぞ!」
そう言って、マシュマロを、大きく振りかぶり、
「…それっ!!」
渾身の力で、マシュマロを、村長の口を目掛けて、投げつけた。
「…っ!?」
マシュマロは、一直線に、村長の口へと、向かっていく。
「…来いっ!!」
村長は、そう叫びながら、大きく口を開け、マシュマロを、キャッチしようとした。
しかし、
「…ああっ!?」
マシュマロは、村長の口を、僅かにそれ、そのまま、後方へと、飛んで行ってしまった。
「…ちっ、外したか…!」
ガンガンは、悔しそうに、舌打ちをした。
「…しかし、今の、惜しかったな、シックス!」
「…ああ、そうだな」
割男は、そう言うと、苦笑いを浮かべた。
「…よし、次、行くぞ!」
「…ああ!」
こうして、割男とガンガン、そして村人たちによる、「マシュマロキャッチ・トレーニング」は、しばらくの間、続けられたのだった…。
その頃、エルファは、家の中で、一人、何やら、書物を読みふけっていた。
「…『筋肉の神殿』…『古代エルフ』…『封印』…」
エルファは、難しい顔をしながら、ぶつぶつと、呟いている。
「…やはり、『事件』の真相を、突き止めるためには、『筋肉の神殿』に、行くしかないのか…」
エルファは、そう言うと、深く、ため息をついた。
「…しかし、シックスの、あの『筋肉』…」
エルファは、先ほどの、割男の「筋肉」を、思い出し、
「…まさか、本当に、『筋肉の神』の…」
エルファは、そこで、言葉を詰まらせた。
「…いや、そんなはずは…」
エルファは、小さく頭を振り、その考えを打ち消した。
「…とにかく、『筋肉の神殿』に、行けば、何かが分かるはずだ…」
エルファは、そう言うと、決意を込めた表情で、立ち上がった。