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【Click→】エンゲブラ的短編集

【3分で読めるショート】好感度メガネ

作者: エンゲブラ

それはすごい発明だった。

そのメガネを掛けるだけで、対象の好感度が数値化されて見えてしまう、という画期的なものであった。

友人に言わせれば、グー〇ルグラスに、自作アプリを組込んだだけのものらしいが、とにかくすごかった(語彙力)。



先日、開発者の友人が、私に「とりあえず、このメガネをかけて、俺の顔を見てみてくれ」と言ってきた。

私は、彼に「なんだ、お前のおでこに浮かんでる()()って数字は?」と応えると、「()()とは意外に高得点だな。テレるじゃないか」と、彼は少し顔をほころばせ、そのメガネの性能を教えてくれた。


あたりを見渡すと、通行人たちの(ひたい)にも、やはり各々の数字が、薄い光の文字で浮かびあがっていた。


「まじか、スゲーな、これ!ちょっと()、借りてもいいか?」


「ああ、かまわんよ。モニターなら大歓迎だ。

その代わり、誰が何点だったとか、ちゃんと後からレポートしてくれよ」

友人はニヤニヤとしながら、そのメガネを私に貸してくれた。



私は、構内を歩き回った。

道行く人々が、私に対して抱く好感度。

そんなものが分かってしまえば、様々な人間関係も、もっと巧くいくに違いない。

ナンパだって、自由自在だ。


私は、サークル棟へと向かい、お目当てを探す。

途中、容姿はかなり良いが「性格がアレなビッチ」と噂の女とも出くわした。

意外にも、彼女のおでこに浮かび上がっていた数字が「87」もあったことに、ニンマリもした(今度、ためしに誘ってみるべきか、これ?と)。


小1時間ほど、探し回り、ようやく見つけたお目当ての彼女。

彼女は、いわゆる「サークルの姫」などではなかったが、知性と教養を感じさせ、よく見ると、けっこう容姿も整った品のある女性。

私のようなバカな男には、いわゆる高嶺の花とも言える存在であった。

さあ、彼女の点数はいったい何点なんだ!

点数次第では、告白もしようではないか!



「おうおう、どうだった、そのメガネの性能?」

開発者の友人が、ニヤニヤとした顔で近づいてきた。


「いやあ、抜群だったよ。おかげで彼女に告白もできた」


「おう、聞いたよ、その話。

イケメンのくせに奥手なお前にしては、よくやったな」


「そりゃなんせ、彼女からの好感度が97もあったら、さすがに俺でも男を見せなきゃだろ」


「ふははははっ」笑いが堪え切れない様子で、天を仰ぐ友人。


「……な、何なんだよ、その笑い?」


「それ、誰も、()()()()()()()()とは言ってないぜ」


「……はぁ、いまさら何言ってんだ!?

97点もあったから俺は告白したし、実際、彼女もOKしてくれたじゃないか?」


「だからその数字、()()()()()()()()()()()()()の数値化なわけよ」


「えっ……」私は絶句した。


「まあ、自分の気持ちをよく知るって意味では良かっただろ?

おかげで告白も出来たわけだし。

で、他の連中の数字はどうだったんだ、教えろよ」


私の視線は、中宙を泳いだ。

私のなけなしの勇気を奮い立たせた、あの97という数字は、カノジョから私に寄せられたものではなく、私から見た……?

だとすれば、私は今後どのようにしてカノジョと……。


「お、何、何、その変な踊り?」


私は恥ずかしさのあまり、頭を抱え、肩を小刻みに揺らしながら、その場で何度も足踏みをしていた。


そして、告白した瞬間の彼女の笑顔を思い出し、また別の意味での足踏みを始めた。




カノジョが、意外に強気で男らしい告白をしてくれたカレに対し、幻滅しない日が来ることを祈りたい(笑)。

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― 新着の感想 ―
面白かったです。 まさかの機能でしたが、告白がうまくいってよかった。
ナイスです。 結果オーライ、ですねw
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