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少女、いやエヴァはどうして名前を聞いただけなのにそんなに笑うんだろうか?
そう疑問に思ってエヴァに聞いてみた。
「どうしてそんなに嬉しそうなの?」
「だって、名前を聞いてきたのは貴方だけだから」
「そっか」
彼女は嬉しそうな笑顔で、悲しいことを言う。
なぜ、そんなに悲しいことを言うのだろうか。
たとえ幼くても名前を聞かれたことぐらいはたくさんあるだろうに。
「誰も君の名前を聞かないのか?」
「うん」
「どうして?」
「私が悪い子だから」
「エヴァは悪い子なの?」
「うん」
「何か悪いことしたのか?」
「うん」
「何をしたんだ?」
「アヴィンを殺したの」
アヴィンそれはさっきエヴァを閉じ込めた女が言っていた名前だ。
エヴァはそのアヴィンという奴を殺したと言うのだろうか。
「アヴィンって誰?」
「私の双子のお兄さま」
「どうしてアヴィンを殺したんだ?」
「私を庇って死んだの」
「それは君が殺したとは言わないだろ?」
「ううん、私のせいで死んだんだから、私が殺したのと同じなの」
子供の言葉とは思えない。
これは誰かに教えられないとこんなことなど言わないだろう。
いったい誰がそんなことを教えたのだろうか?
まあ、おそらくあの女だろうが。
まあそれでも確認はしておくべきだろう。
「それは誰が言ったんだ?」
「お母さまが言ったの。」
エヴァは最初あの女のことをお母さまと呼んでいたから、やはりあの女なのだろう。
「お前はアヴィンを殺していないだろう?
なのになぜお前が殺したというんだ?
アヴィンはお前を悲しませるために庇ったんじゃないだろ?お前を守りたいから庇ったんじゃないのか?」
「でも私のせいで死んだの。だから私が悪いの。お母さまを悲しませた私が悪いの」
「お前は悪くない。なんならとてもいい子だ。」
「ううん、私は悪い子なの」
これはあきらかな虐待だろう。
普通の母親は我が子をこんなボロい部屋に閉じ込めたりもお前が殺したなどとは言わない。
おそらくエヴァは自分が悪いと思い込んで、自分を守っているのだろう。
きっと俺がエヴァにしてやれることは何もない。
ただの火はあたりを照らすだけ。
エヴァを逃すには俺はこの部屋の作りを把握できていないし、脱出の仕方も知らない。
うまく逃げれるかすら分からない。
それでもだ、俺は人間で社会のゴミだったけど、立派な大人だ。
なんの力がなくとも、人として、大人としての知識はあるのだ。
だから、少しくらいはこの少女の役に立てるのではないだろうか。
いつ消えるか分からない火の俺にはこの少女の役に立つことで、クズみたいな人間で終わった人生を変えることができるんじゃないだろうか。
それが俺が出来る最善の、人間としての終わり方なのかもしれない。
「エヴァ、ここから逃げないか?
君が望むなら、俺が知識を貸してやる。」




