5.食堂
久しぶりにこの学校の制服を着た。うん、変なところはないね。
その場でくるっと1周する。
私と奏は寮に入ったのが遅いのもあり、入学式はすぐやってきた。中学から持ち上がってる子もいるって事だからグループが出来ているんだろうな。馴染めるかな、ちょっと不安。
「綾愛~!!準備出来た!?朝ごはん食べに行くよ!!」
「あ、は~い!!」
実は節約したいのはやまやまだったのだが入りにくくて今までコンビニでご飯を買っては食べていた。奏は初日から食堂を使っていたみたいだが。
いい加減慣れなければと思い、今日は食堂に行ってみる事にしたのだ。
黙って隅の方で食べてれば良いんだよと奏は言っていたが上級生もいるであろう食堂で、しかも賑わっていて、そんな所に入る勇気はない。奏と一緒じゃなかったら今日も行く気になってない絶対。
食堂までの道を歩きながら私は思わず
「食堂ってどんな所?」
と奏に聞いていた。だって怖いんだもん…。
「うーん、ご飯食べる所だよ?」
え…?いや、それは分かってる、食堂だもん。名前からしてそうじゃん。
「あ、あとは飲み物とデザートもある!!」
あー、うん、駄目だこりゃ。奏って普段しっかりしてる様に見えるのになんだろう、このそうじゃない感。私の質問の仕方も分かりにくかったのは認めるけれど、うん…。
「あ、ほら着いたよ~!!」
はぁ、とため息をつきそうになるのを抑え奏の後に続いて入る。
食堂の中はがやがやしていて、みんな制服を着ている。なんか制服を着ていてもわりかし自由だからか一見私服を着ている様にも見える。目に映る物がカラフルだ。凄い…。
「あ、綾愛ちゃんと奏ちゃん!!やほやほ~!!」
声のした方を向くとセレナちゃんとすっごい見た事のないくらいの美人さんがご飯を食べていた。うわぁ、世の中こんなに綺麗な人もいるんだ…。しかもなんか雰囲気でしか言えないけど賢そうというか貫禄があるというか…。先輩かな?
「どう?寮生活には慣れた?」
セレナちゃんが心配してくれているのが分かる。セレナちゃんめちゃくちゃ優しいなぁ。
「うん、なんとか。」
と言って苦笑いする。どうしてもまだ寝つきが悪かったりしていてそれは奏も同じみたい。同じ様に苦笑いしている。
「そっかぁ、まぁしょうがないね、慣れない所だとそーなっちゃうよね~。うわ、やっばセレナ達入学式の準備しないと!!じゃあね、綾愛ちゃん奏ちゃん!!」
セレナちゃんはそう言って慌てて片づけ始めた。
「あ~、もう美愛さん!!のんびり食べてる時間ないから!!最終確認するって言いだしたの美愛さんでしょう!?」
なんだか私と奏みたいな会話をしているような…。
あの美人さんは美愛さんっていうんだ。セレナちゃんと一緒に準備をするって事は生徒会の人かな?
「さ、私達も食べよ。」
奏の言葉に頷く。セレナちゃん忙しそうだったけど話しかけてくれたお陰でだいぶ緊張がほぐれていた。