急停車
ガツンとぶつかりそうになる。
思わず舌打ちをしてしまうような急ブレーキだ。
バス通勤で乗っていた時の出来事だ。
何を考えたのか、突然歩道から飛び出してきたご老人のせいだということに気づいたのは、それから数瞬してからのこと。
クラクションを鳴らすこともなく、ただバスの運転手のお詫びと出発するというアナウンスだけが、ただ、バスの中にむなしく響いた。
乗客は複数人乗っていたが、けがをだれもしなかったのが幸いだっただろう。
ただ、あのご老人が一番悪いと、俺は思いつつも、また動き出したバスに乗っていた。