096_怪人ツァオガウ
今回は戦闘回です。
転生後、初の怪人戦です。
096_怪人ツァオガウ
・怪人
人が悪霊や禍津神に取り憑かれ異形へと変貌を遂げた者で、人や世界に災いを振りまく存在となる。
今、目の前にいる四天王_ツァオガウはまさにその怪人である。
前世において怪人に対抗できるものは『変身』したヒーローのみだった。
今の百香と亜美は『変身』しない状態でこれに挑まなくてはならない。
前世ぶりの強敵を前に2人に緊張が走る。
まず先に動いたのはツァオガウからだ。
『アイスランサー』
無数の氷の槍が高速で飛び交い、百香と亜美を襲う。
『エボニーシールド』『疾風』
氷の槍に対して亜美が無数の風の矢を持って撃ち落とし、その撃ち漏らしを百香の黒檀の盾で防ぐ。
『烈風』『オークレイン』
『アイスウォール』
亜美が放つ直径5mの巨大な風の矢と百香が作り出した樫の木の槍の雨がツァオガウに飛来するがそれをツァオガウの氷の壁が阻む。
『アイシクルレイン』
『エボニーシールド』×2
『春雷』
ツァオガウが作り出した氷柱の雨を百香の黒檀の盾が防ぎその隙に亜美の雷の矢がツァオガウを捉える。
「ぐっ、雷の矢か、なかなかやりおるのう。」
「ち!あんまり効果がないみたいだよ。」
「そうね、あいつかなりタフそうね。」
「楽しいのう、『アイススパイク』」
「くっ、『オークランス』×3」
地面を走る巨大な氷のトゲを樫の木の槍3本で迎え撃つ。
なんとか相殺できたがこのままではジリ貧だ。
百香は『メッセージアイリス』を起動させる。
「ジーニー、聞こえる。今から要件だけ言うからその通りにして。
列人とバクラさんに連絡。列人にはなるべく早く帰還するように言って。
それからバクラさんには絶対に住民から離れないように言って。お願いね。」
そう言うと返事を聞かずにメッセージアイリスの通話を切る。
連絡の隙を付かれたら危なかったが、どうやら敵はこちらに攻撃できなかったようだ。
亜美が弓矢でツァオガウを牽制してくれたおかげだ。
牽制してくれていた亜美に百香も加勢する。
「亜美ちゃん、今列人に救援を頼んだわ。3時間粘るわよ。いいわね。」
「うん、わかった。百香お姉さん。」
百香と亜美は救援が来るまで只管時間稼ぎをする戦術を取る。
おそらく敵は単独行動だ。
もし複数行動なら別部隊がメリッサを狙ってくるはずだがそれがない。
単独ならこちらが救援を呼んで、袋叩きにすればいいと思ったからだ。
ツァオガウの氷により一面銀世界になった森のなかで百香と亜美の戦いは続く。
一方その頃、ジーニアスは
「こちらジーニアス。レット、聞こえるかい。」
「こちら列人。どうしたジーニー。」
「ピンチだよ。釣り上げた獲物が大物で、モカとアミが苦戦中だよ。
急いで援軍に来て欲しい。」
「わかった。2時間でそちらに行く。それまで持ちこたえろ。」
「了解、頼んだよ。」
ジーニアスは列人との会話を終え、『メッセージアイリス』の通信を切る。
「バクラさんへの連絡も済ませた。僕もモカ達の力にならないと。」
(でもどうやって、あれはモカとアミが苦戦する化物だ。僕が出ても足手纏いになる。
いや、考えるんだ。時間を稼げばいいんだから、僕にだってやりようはあるはずだ。)
場面を戻して百香達
『リグナムバイタロッド』
百香が戦闘用の棒を作り出し、ツァオガウに突撃。
接近戦を試みる。
『フリージングニードル』
『疾風』
突撃する百香に対してツァオガウは無数の氷の針で迎撃する。
それを亜美が同じく無数の風の矢を放つ事で撃ち落としていく。
亜美の矢で守られた百香はツァオガウの懐に飛び込む事に成功。
「くらいなさい!」
『アイスシールド』
「くっ!まだまだ!」
『烈風』
百香の棒撃は氷の盾で阻まれるも氷の盾を出している隙に亜美が風の矢で攻撃。
それに合わせて百香も攻撃を続ける。これには流石の四天王も防戦一方。
「く!やりおるのう。これでは攻撃に移れんわい。『アイスウォール』」
「そのままくたばりなさい。この!」
『旋風』
亜美はドリル状に回転する風の矢を放つ。
これは亜美の持つ技の中でもっとも貫通力が高く、その威力は氷の壁を貫くほどだ。
「く!なんという貫通力。『アイスウォール』を貫くとは!」
百香の攻撃はツァオガウにダメージを与えられないものの攻撃する隙も与えない。
結果、亜美が一方的に攻撃できる状況を作っている。
決定打には欠けるがこのままいけば、十分に時間を稼げると百香は考えていた。
さらに
「う!なんじゃ、体の動きが鈍い。」
「ふぅ、ようやく効いてきたようね。」
『リリーミスト』
無味無臭の鈴蘭の毒により敵に気づかれずにダメージを与える術。
百香はツァオガウに近づいてからずっとこの術を使い続けていた。
「百香お姉さん、一気に畳み掛けるよ。『烈風』×10」
「だめ!時間稼ぎよ。体力の消耗を抑えて!」
亜美が決着を付けようと巨大な風の矢をまとめて10発打ち込む。
それに対して百香が制止の声をあげるが間に合わず、風の矢は土煙を上げながらツァオガウに襲いかかる。
「『アブソリュートシェル』・・・危ない危ない。どうやら間に合ったようじゃのう。」
「防がれた・・・え!おかしい、身体が震えている。感覚も鈍い。」
「やっぱり!これを狙っていたのね。」
先ほどの『アイスウォール』よりも強固な氷のシェルターが亜美の巨大な風の矢の連射を阻む。
その直後、亜美の身体に異変が起きた。亜美の身体がうまく動かない。
意外そうに驚く亜美と苦虫を咬み殺すように毒づく百香。
「ほう、アメリアの方はうまく騙せたが、モニカのほうは気づいておったか。」
「どういうことなの!百香お姉さん!」
「・・・低体温症よ。」
今この場はツァオガウの氷の魔法により急激に気温が落ちており、地面には氷が張っている。
その気温-20℃、しかも百香と亜美の格好は全く防寒をしていない春先の服装である。
だが戦闘中とは言え、普通ならこれだけの気温の変化に気づくはずだ。
おそらくツァオガウの魔力に気温変化を気づかせないようにする効果があったのだろう。
亜美は周囲の気温の変化に気づいていなかった。
亜美は急激な術の使用により体力が落ちた事に加え、急激な体温の低下の為、身体がうまく動かなくなっていた。
今の亜美は歩く事も覚束無い状態にあり、そのせいか回復魔法もうまく使えない。
百香は周囲の変化に気づき、その差を埋める為にわざわざツァオガウに近づき『リリーミスト』を使った。
また接近戦をする事で激しく動き体温を上昇させる狙いもあった。
だが、亜美は敵の策に嵌ってしまった。
亜美が戦線離脱した事により均衡が崩れ、状況はツァオガウ側に大きく傾いた。
「さあ、一気に押しつぶしてくれよう。くらうがいい!」
「く!」
「まだまだ、『アイスランサー』」
『エボニーシールド』
「ほう、粘るのう。」
「亜美ちゃん!ジーニーに連絡!この場を退避して!」
「うん、わかったよ。」
今度は百香が防戦一方、ツァオガウの巨大な錫杖による攻撃を躱し、氷の槍を黒檀の盾で防ぐがこのままでは遠くない未来に捕まってしまう。
せめて亜美の無事だけでも確保し、列人が来るまでの時間を稼がないと。百香は亜美に救援を呼ぶように指示を出す。
「ほう、仲間の心配とは余裕だのう。」
「!!」
その僅かな隙にツァオガウの錫杖が百香を襲う。
『ロックランス』
しかしその錫杖は岩の槍に阻まれて百香に届かない。
ジーニアスだ。救援を呼んだ直後なのにもう来ている。
おそらく近くに潜伏していたのだろう。本当に頼りになる。
「ジーニー!亜美ちゃんを連れて退避して!」
「だから言ったであろう。そんな余裕はないと。」
『ロックウォール』×5
ツァオガウの拳が百香に迫るがそれをジーニアスの岩の壁が防ぐ。
「隙だらけじゃ。『フリージングニードル』」
「ぐぁ!!」
ブスブスブスッ!!!
ツァオガウの放った無数の氷の針が今度はジーニアスを襲う。
氷の針が肉に突き刺さる音がした。
ジーニアスが被弾した。ジーニアスはその場から吹き飛び動かなくなる。
この瞬間、百香の目の前が真っ白になり、頭の中で人として大事ななにかが切れる音がした。
『百香は人ではなくなった。』
「ああああああああああ!!!!!殺す!!殺す殺す殺す!!!!殺す殺す!!!」
今の百香の顔は人とは思えない表情だ。それはまさしく鬼である。
百香は激情に任せて獣の様に叫ぶ。
「『ティターニア』、力を貸しなさい!『変身』!!!」
その瞬間、百香から眩い光が放たれ、その姿が変貌を遂げる。
緑のラインが入ったピンク色のスーツ。
桃色の花に植物の蔦が絡んだ様なデザインだ。
ピンクの仮面の奥には抑えられない怒りと殺意で溢れている。
「・・・百香おねえちゃん。」
「!!、なんじゃそれは!お前は一体何者じゃ!」
亜美は焦り、困惑し、今にも泣き出しそうだ。
そのあまりに異様な光景にツァオガウも驚愕と疑問を隠せない。
そんな周りの様子を意に介さず、百香は地獄の底から響く様な声で呟く。
『『エレメンタルピンク』、貴様を地獄に叩き落とす者の名前よ。』
補足
百香と列人は体の負担さえ考えなければ、変身できる状態です。
ただ余りにもリスクが高すぎる為、よっぽどの事がない限りは使用しなかっただけです。
そして今回はそのよっぽどが起こったわけです。




