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094_赤色は桃色を思う

今回は百香について触れてみます。

少し短めです。

094_赤色は桃色を思う


「アズイールさん、言いそびれていましたけど、『アナスト』の情報は絶対じゃありません。

一応『学園襲撃イベント』は5月頃になっていましたが時期がずれることも十分考えられます。

準備は早めに行った方がいいでしょう。

合わせて『国王暗殺イベント』についても準備しておく必要があります。

ちなみにアズイールさんは戦えますか?」


「う~ん無理だね。だって僕はオランジュだしね。

そもそも戦闘訓練とか全然してないから。」


アズイールが言ったオランジュ(橙)と言ったのは彼の炎の色である。

ギルバートはルージュ(赤)であるが、王族はこの炎の色によって力を見分けられ、名前の最後にもこの色が入る。

アズイールの場合、アズイール=フラム=オランジュで

ギルバートの場合、ギルバート=フラム=ルージュである。


王族の炎の力は

ルージュ(赤)>オランジュ(橙)>ブロン(白)>ブルー(青)

という具合になっている。

地球の炎色温度とは逆だがここは異世界で魔法の炎なのでこういう物だと納得してもらいたい。


つまりアズイールは炎で言えば、ギルバートより才能がないのである。

実際アズイールとギルバートが戦ったらアズイールは惨敗するだろう。

政治特化の人間を戦わせようというのが無理な相談なのである。


「取り敢えずおっさんの警備の強化だな。ジルには止められたがやはり『0番隊員』を強化するか。

その時はレットにも付き合ってもらうぞ。」


「了解、その時は亜美ちゃんも参加させたい。あの子は俺より教えるのがうまいからな。」


「わかった、でもいいのか?俺が言っていてなんだが今の話だとお前、今までの中で一番長い期間村を離れる事になるが。」


「ああ、今は任せられる仲間がいるからな。

百香も魔族を根絶やしにする為に手ぐすね引いて待っているだろうし。

あいつ魔族に対して相当切れてたからな。」


「それは魔族もご愁傷様だな。

まあ自業自得だからせめて苦しんで死んでくれるとありがたいな。」


「それなら保証する。百香が相手なら間違いなくそうなるだろう。」


「えっと、モニカちゃんの中にいる子の話だよね。

やけに物騒なんだけどどんな子なの?」


列人とヴィルヘルムの物騒な話に思わずアズイールが疑問を口にする。

それに対して列人が答える。


「桃梨百香、植物の霊術と棒術を使う万能型。

ヒーローの頃についた二つ名は『百花』『万能の植物使い』

植物を使った幅の広い戦術と無数とも言える技の数々からこの名がつけられた。

普段は非常に優しく、気遣いのできる人間だが、若干悪ふざけをする癖があり怒るとすぐに手が出る。

戦いにおいては非常に冷酷で敵対する者に一切手心を加えないだけではなく、人道に反する事も躊躇いなく行う。

敵を騙したり貶めたりするのは当たり前、拷問だって必要と思えば躊躇しない。

だがそんな自分をなによりも嫌っていて、それでも自分から汚れ仕事を引き受けようとするお人好し。

そのせいか、ストレスを溜め込む傾向があり、非常に危なっかしい。

家族構成は両親と姉が一人。姉の名は桜。家は舞踊の家元で姉の桜はその後継者だが体が弱くあまり踊れない。

百香自身も舞の教えを受けており、体の弱い姉の替りに後継者としての指導も受けていたがヒーローの素質があった為断念。

その為か、ヒーローの仕事に並々ならぬ責任感を持っていた。

色々嫌な事があっても溜め込むのはその責任感のせいだと思われる。

また普段ふざけた態度をとるのももしかしたら一種の防衛行動かもしれない。

これが俺の知っている百香像だな。」


「「・・・・」」


列人から聞いた百香像にアズイールとヴィルヘルムは思わず絶句する。


「・・・なんていうか、すごく苦労しそうな子だね。

僕みたいに適当に生きればいいのに。」


「それができないから苦労しているんだろう。

この子の責任感の100分の1でもおっさんに分けて欲しいところだ。」


「なにげに酷くない。もうちょっと老人を労ろうよ。」


「うるさいな!そう思っているならもう少し体面に気を使ってくれるかな。」


「お前ら、一応主従関係なんだよな。いいのか、こんなんで。」


「いいんだよ!これがこのご主人様の希望なんだから。」


「さりげなく僕を貶めるのやめてくれないかな。本気で泣くよ。」


「どうぞ、ご勝手に。」


ヴィルヘルムとアズイールが騒いでいる中、列人は百香について考えていた。

列人が普段百香の前でふざけている理由の一つとして百香の溜め込み癖から来るストレスを少しでもガス抜きする為というのがある。

勿論意識してやっている訳ではないが、これはあくまでも対処療法で根治はできないのでないかとも考えている。

そう考えるとこの問題に真っ直ぐに向き合ってくれたジーニアスには感謝してもしきれない。

百香にはきっとジーニアスの様な人間がそばに必要なんだと列人は思っていた。

まあ、自分の出来る事など限られているし、出来る範囲で百香の支えになればいいのかなとも列人は思っている。


「ヴィルヘルム、少し長話が過ぎたな。今後の方針も決まった事だし俺達はお暇しようか。」


「そうだな、レット。これからやる事は山ほどあるしな。」


「え~、もっと居てよ。君達が帰ったらつまらない仕事が待っているじゃないか。」


「よし、一刻も早く帰るぞ、レット。」


「そうだな、光の速度で帰ろう。」


「酷い!あんまりだ!そんなに僕に仕事をさせたいのか。」


「「やかましい!!仕事しろ!!」」


「わかったよ。もう~。・・・・レット君、息子の事ありがとうね。」


「・・・また来ますよ。アズイールさん。」


こうして列人達は王の屋敷を後にした。


「なんかずるいな。あの王様。」


「そうだな。あれでも一国の王だからな。」


してやられたという思いで呟く列人に対して、ヴィルヘルムが肯定の意を示す。

ヴィルヘルムが振り回されてもそれを好ましく思っている理由がわかった列人であった。

そろそろ登場人物の掘り下げをやっていきたいと思っています。

まずは百香からですね。


アズイールは本当に食えないおっさんです。

性格はあんな感じですが、現在魔窟と化している王宮で国を回している傑物です。

普通なわけがありません。

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