090_赤色の結婚詐欺師
王都に到着です。
今回は情報収集です。
090_赤色の結婚詐欺師
「うわぁ、本当に一日でたどり着いたわね。」
「そうだね。正直フラフラでそれどころじゃないけどね。」
「そうだな。さすがに少しだけ疲れた。」
「・・・バクラさん、少しだけですか?」
「・・・ああ、少しだけだ。」
「おめでとう、バクラ!お前も晴れてこちら側の人間だ。」
「・・・そんな事アースドラゴンを殺った時点で分かっている。」
「「・・・・」」
列人達一行は夕方頃に王都にたどり着いた。
到着直後の会話があまりにも物騒ではあるが、都に入る事に関しては特に問題はなかった。
受付で入場料100クレトと身分証明書として全員ハンターカードを提示する。
ちなみにジーニアスとミランダもコル村でハンターとして登録している。
呼び名はそれぞれ『ジーニー』と『ミラ』で現在の2人のランクはE、最低のFの一つ上である。
今回列人達はバクラのパーティーメンバー兼弟子と設定である。
「じゃあこれからの予定だ。レット、ジーニー、ミラは取り敢えず今日の宿の確保。
俺はヴィルヘルムにアポイントを取りに行く。
宿はセキュリティが高いところで探せ。ただしあまり高級宿など目立つ場所は避けろ。
それからレット、絶対に厄介事は起こすなよ。いいな。」
「わかってるよ、バクラさん。連絡は『メッセージアイリス』で送るよ。」
「「・・・・完璧に演技している。」」
列人の変わり様を見てジーニアスとミランダはなんとも言えない表情を浮かべる。
これはゲオルグの時などに使っていた猫かぶりモードの応用である。
今の列人は『バクラの弟子』を完全に演じている。
呆然としている2人に列人が急かすように声を掛ける。
「ほら、2人とも早く行くぞ。急がないと宿が取れなくなる。」
「ああ、すまない。今行くよ。」
宿の確保については特に問題なかった。
列人は王都へ来るのは初めてではなく何件か宿に心当たりがあり、その内の1件がすぐに予約できた。
その事をバクラに連絡すると、バクラの方も無事アポイントが取れたから合流しようと言う事になった。
場所は王都ハンターギルドの食堂にした。
ここは多くのハンターが利用するため質、量ともになかなか評判がいいのである。
ギルドに向かう途中、ミランダが数人の少女達に声を掛けられていた。
「あら、もしかしてミランダ様ではございませんか。」
「!!」
それに対してミランダは少し驚き、わずかに嫌そうな顔をする。
「どうした、ミラ。知り合いか?」
列人が小さくミランダに耳打ちする。
「ええ、『学園』の生徒よ。モカを嵌めた。良くも私に声を掛けられたものね。」
「あぁ、なるほどね。」
ミランダの声に列人は『道理で嫌な顔をするわけだ』と思った。
「そちらに居られるのはジーニアス様ではございませんか。」
「クソッ、気づかれたか。」
声を掛けられたジーニアスも嫌そうな顔をする。
そこに列人が少女達に声を掛ける。
「ちょっとごめんなさいね。君達、人違いしているよ。
こいつらは俺のハンター仲間でジーニーとミラだ。
・・・ジーニー、ミラ、ちょっとこっちに来てくれ。」
「なんだい?レット。」
「・・・・・」
列人がジーニアスとミランダに手招きして近づくように声を掛ける。
2人ともものすごく不機嫌そうだ。
「いいか、今のお前らの学園での立ち位置を知りたい。
この馬鹿女共から情報を引き出すから俺に合わせろ。いいな。」
「わかったよ、レット。君に任せる。」
「・・・頼んだわよ。」
2人の同意を取り列人は少女達に声を掛ける。
それはもう満面の笑みで。
普段列人を知っているものが見れば『お前、誰。さては偽物だな。』というレベルの胡散臭さである。
フィオが見たら『アルくん、その顔気持ち悪いですよ』と言うだろう。
だが知らない人間にとってはとても魅力的な笑顔に見えるらしい。
列人は割と目的の為なら手段を選ばないのである。ジーニアスとミランダの顔が思わず引き攣る。
「申し訳なかったね。手間を取らせてしまって。
でも少し嬉しいかな。君達みたいな綺麗な子に声を掛けてもらえたんだから。
気品もあるし、さぞ高貴な方なんだろう。」
列人の言葉に2人は更に大きく顔を引き攣らせる。
列人は騙すと決めたら徹底的に演技をする。
少女達も満更でもないみたいだ。
「まあ、あなた見たところ平民ですが見る目はあるみたいですわね。」
「いや、誰だってそう思いますよ。ただ俺が不遜だから口に出せるだけで、きっとみんな君達を褒め称えたいはずだよ。」
「なかなかお上手ね。」
実はこのやり取り、昔バクラとメリッサがやっていたものを100分の1に薄めて嘘で塗り固めただけのものである。
列人は内心こんなのに騙されるなんて頭悪いなと思っている。
本人は気づいていないが、列人は結婚詐欺師の才能もあるようだ。
「ところでさっき、うちのミラとジーニーを誰かと間違えたみたいだけどどんな人なんだい?
君達の知り合いならさぞ素晴らしい人なんだろうな。」
ここで気を良くした少女達は次々に列人に情報を漏らしていく。
要約すると以下の通りである。
まずモニカと親しかったアメリア、ジーニアス、ミランダは『学園』で白眼視されているが、王子であるギルバートとも親しい為、表立ってそういう態度を取れないでいる事、
今、この3人が『学園』にいない為、王子と親しくなるチャンスだと思っている者が多数いる事、
ジーニアスは顔と家柄がいいから自分達側になるとお願いされれば快く受け入れてもいいとの事、
ミランダも家柄は良いし、個人の性格も悪くはないから頭を下げれば見捨てないでいてやるとの事、
アメリアは平民の癖に王子に近づいた事が許せず、退学して清々しているとの事、
『無気力令嬢』が修道院送りにされて清々している事、
王子はあの『無気力令嬢』の事も未だに気遣っているお優しい方だという事、
王子の傍に居ていつも勇ましかったトーマスが最近大人しいとの事、
ナタル伯爵令嬢が最近『エレメンタルズ』を打倒する為の有志を募っているとの事、
まあ、喋る喋る、聞いていない事までペラペラと。
こいつら口から生まれたのかと危うくツッコミそうになった。
そしてアメリア、ジーニアス、ミランダ、モニカの悪口に対して何度ぶん殴ってやろうかと思ったか。
挙句の果てにモニカが修道院送りになった事を自分達の武勇の様に語る。
これほど列人が忍耐力を使ったのは久しぶりである。
少女達が去った後、列人はとうとう怒りが限界に達し、
ズドーーーーーン!!!!!
地面を思いっきり殴り1mのクレーターを作ってしまった。
幸い裏路地の舗装されてないところまで我慢できたのでそれほど騒ぎにはならなかったが。
「はぁあああああ!!あのクソアマ共、ぶち殺してーーー!!」
「落ち着け、レット。君の怒りはわかるが落ち着け。」
「そうよ。実際悪口を言われた私達よりなんであんたが怒っているのよ。」
「あたりめーだろうが、こちとら友人を侮辱されたんだぞ!!」
この言葉に2人は目を丸くする。
自分達の為にこれほど真っ直ぐに怒ってくれる人間に今まで出会った事がなかったからである。
ジーニアスとミランダの表情が思わず緩む。それに反して列人は悪人の様な表情で笑う。
「しかし、耐えた分だけなかなかいい情報を収集できた。
この情報を元にフィオにハッキングを依頼して情報を更に集めてもらい、あいつらを潰すって手もあるな。」
「いや、そこまでやる必要はないから。それとナチュラルに幼馴染に犯罪を指示しようとしないで欲しい。」
「全く、でもレット。あなたが結婚詐欺師の才能があるなんて初めて知ったわ。フィオさんもそうやって騙したの。」
「おい、ミラ。人聞きの悪い事言うなよ。」
「いや、だってさっきのやり取り見ていたら普通にそう思うでしょう。」
「うん、うん。」
ミランダのあんまりな言い草に列人は反論するもジーニアスはミランダの味方のようだ。
しばらくわぁわぁと言い争っていると『メッセージアイリス』からバクラの声がした。
バクラはハンターギルドについたからさっさと来いとの事だ。
思えばかなり時間が経っていた。3人は急いでハンターギルドへと足を進める。
ジーニアスとミランダは列人の友情が本物であったと再確認し少し暖かい気持ちになっていた。
皆様お忘れかも知れませんが、列人の転生先であるアルフレットは金髪に碧眼のイケメンです。
そして忘れがちですが、ゲーム『アナスト』の攻略対象です。
そんなイケメンに褒められれば悪い気はしないのではないでしょうか。
列人はコル村以外では結構この方法で情報収集していたりします。
正直列人もこの方法は好きではありませんが、列人は手段を選ばないタイプです。




