088_魔封じのチョーカー調べよう
今回は長らく放置していた魔封じのチョーカーについてです。
途中ギスギスします。
088_魔封じのチョーカー調べよう
ジーニアスとミランダがコル村についてから8日目、
明日からはミランダを王都に送る為、今日が全員揃っている最後の日。
この日、ジーニアスから百香にある提案がされた。
「ねえ、モカの魔封じのチョーカー調べさせて欲しいんだけどいいかな。」
「ん!構わないけどジーニー分かるの?」
「やってみないとなんとも言えないけど多分外せると思うよ。」
百香の質問にジーニアスは何でもないと言った風に答える。
ジーニアスは『学園』一番の魔法研究者でありその実力は国に認められている程である。
その上魔道具については国でも5本の指に入る程の知識を持っている。
ジーニアスにかかれば普通の魔封じであれば問題なく解除できる。
しかし今回はそう上手くは行かなかったようだ。
百香のチョーカーを調べていたジーニアスの表情が曇る。
「すまない、モカ。これはおそらく解除しないほうがいいと思うよ。」
「どういう事かしら?」
「このチョーカー、圧搾術式が掛けられている。
要するに解除しようとしたら首が締まってモカを殺す仕組みになっているんだ。
その上圧搾術式が発動したら、術式を仕込んだ相手に居場所がわかる様になっている。」
「つまり、私を殺して死体を回収できると。」
「何を淡々と言っているんだい!!!」
「!!!」
ジーニアスが思わず怒鳴り声を上げたのに対して百香はわずかに驚いた。
ジーニアスはそれを見て自分の失敗を悟りすぐに百香に謝罪する。
「すまなかった、モカ。怒鳴るつもりはなかったんだ。
ただ、君が殺されると思うと無性に腹が立って。」
「そうね、モニカが殺されたら腹が立つわよね。」
平坦な声で呟かれた百香のこの言葉にジーニアスは息を詰まらせる。
「いいのよ、あなたがモニカに対して友情以上の感情を持っていた事はなんとなく察しているから。
私はモニカの記憶を持っているからあなたとモニカのやり取りは全部わかっているわ。
あなたの思いに土足で踏み込むようで申し訳ないけど今後の為にはっきりさせておきましょう。
私は桃梨百香よ。モニカ=ローゼスベルクじゃないわ。」
百香は淡々と諭す様にジーニアスに語り掛ける。
それに対してジーニアスは慌てて反論する。
「いや、違う。そんなつもりで言ったんじゃない。」
「ごめんね、ジーニー。私はそれに対してどう思っているわけでもないんだけど、
あなたがキチンと整理をつけないと今後私と付き合うのが辛くなると思うの。」
「いや、だから違う・・・」
狼狽えるジーニアスに百香は冷たい声で更に追い打ちを掛ける。
「私はね、基本的に碌でもない人間なの。
モニカの様にちょっと感情表現の下手ないい子じゃないの。
目的の為なら人道に反する事も平気で出来るわ。それを見た時あなたがどう思うか。
『モニカはそんな酷いことはしない。』なんて的外れな感想は持って欲しくないのよね。
だって私は桃梨百香。列人やあなた達とは違うろくでなしよ。」
百香は先日、魔族のガウロンに対して行った様な拷問をヒーロー時代に怪人にも行った事があり、それは一度や二度ではない。
普段のふざけた態度からは理解出来ないが、地球の、そしてこちらの『エレメンタルズ』の中で一番冷徹なのは百香だ。
おそらくガウロンの拷問風景をジーニアス達が見ていたら百香と友人になろうとは思わなかっただろう。
そんな風に百香は思っている。
だがこれを聞いた瞬間、ジーニアスの心の奥の方にあるスイッチが切り替わった。
そのその目には強い意志が宿り、胸の奥には熱いものが煮えたぎっていた。
しかし頭の中はあくまでも冷静で、激しい感情を理性でコントロールしている状態である。
いまジーニアスの心にあるのは自分への憤り。
目の前の少女は自分をろくでなしと蔑みながらその顔は迷子の子供の様に寂しげだ。
彼女にこのような顔をさせたと思うと自分に腹が立って仕方がない。
だから決めた。彼女はろくでなしなんかじゃない事を彼女自身にわかってもらうために、
『彼女を徹底的に論破する』と。
「モカ、少し誤解があるようだけど、君は決してろくでなしじゃない。
なぜなら君はそれを気にして僕から距離を取ろうとしている。
それはモニカと僕のやり取りを知っていて、その記憶を汚したくないと思ったからだろう。
前も同じ様な事を言ったけど、そんな気遣いをするろくでなしはいないよ。」
この時ジーニアスは考えていた。自分はちゃんと百香に対して君が大切だと伝えたか?
いや伝えていない。ミランダはちゃんと言った。『モニカもモモカも諦めたくない』と。
百香はもしかして自分の好意がモニカだけに向けられていると思ったのではないだろうか。
だとしたらそれは自分の失敗だ。
「それから言っておくけど、別に僕はモニカ『だけ』が殺されそうになったから怒ったわけじゃない。
僕はね、『モカ』も『モニカ』も等しく大事なんだ。
君の友達をやめる気なんて一生ないと思って欲しい。」
ジーニアスの言葉を聞いて百香は思わずため息をついた。
「ほんと、あなたといい列人といい、私の周りにはお人好しが多いのかしら。
別に私の事なんて放っておけばいいのに。」
「そういう言い方は好きじゃないな。僕は友人を放っておく様な薄情物ではないつもりだよ。
それに君が魔族に対して何をやったかはだいたい察しがつくし、その程度の事で僕は怯まないよ。
やったことはないけど僕も頭の中は下衆の部類だから。」
「知っている事と実際やるのでは大違いよ。
泣き叫んでる相手に喜々として苦痛を与え続けられる人間なんて狂っているわ。」
「そうだね。『喜々として』できればね。君のそれはどう見てもそうじゃない。
必要な事とわかっていつつそれをする自分を忌み嫌っている。
僕から言わせてもらえば君が一番お人好しだね。」
「「・・・・・・」」
わずかばかりの間、2人は沈黙したまま睨み合うが、先に百香が視線を逸らす。
「・・・はあ、どうやら私の負けね。ごめんなさい、変な事言って。」
百香は降参とばかりに手をあげて応じる。
「別にいいよ。でもきつい事があったらたまには吐き出したほうがいいよ。
どうもモカは溜め込む傾向があるみたいだ。」
「それ、光太郎さんと百合ちゃんによく言われたな。その時はよろしくね。」
「ああ、いつでも頼ってくれ。お姫様。」
「ぶふぅっ、なにその気障な台詞。似合わないわよ。」
「はは、自覚はあるつもりだよ。」
先ほどと打って変わり緩んだ表情で軽口を言い合う2人。
一頻り笑いあった後、再び魔封じの話に戻る。
「よし、せっかくだからこの魔封じのトラップ、こっちで利用しましょう。」
「はぁ、利用だって?」
「そうよ、この馬鹿なトラップのせいでさっき私とジーニーは喧嘩する羽目になったのよ。
意趣返しでもしてやらないと気が収まらないわ。」
「ぶはぁ、やっぱり君はモカだよね。そう来なくっちゃね。」
百香の言葉にジーニアスは思わず、吹き出しながら賛成をする。
「でも具体的にはどうするんだい?」
「それはね・・・・・・・・」
「なるほどね。うまく釣れるといいけど。」
「取り敢えず、作戦決行はミラを王都に送った後ね。」
「そうだね。この作戦は村全体の協力が必要だからね。
僕たちがミラを送っている間にその辺を詰めといてくれるかな。」
「勿論よ。あのくそ魔族どもに目にもの見せてやるんだから。」
「モカ、君の個性なんだろうけど言葉汚すぎない。」
「あら、ごめんあそばせ。ジーニアス様。」
「ははは、それ最高に似合わないよ。やっぱりさっきの方がいい。」
「はは、私もそう思うわ。」
ともに笑い合いながら友情を再確認する。
お互いに本音でぶつかり合い、理解を深め、信頼し合っていく。
こういうのが青春なのかな、と思う百香だった。
本日投稿ミスをしてこの時間になりました。
時間が変わる事があってもまだまだ1日1話は死守するつもりです。
楽しみにしている方がいたら誠に申し訳ありませんでした。
ネタバレ
百香の魔封じのチョーカーの利用法は割とベタだと思います。
この地点で分かる人には分かると思います。
まあ、それは後のお楽しみということで。
ここからもっとネタバレ
ようやくこいつらをピンチにする方法を思いつきました。
近々ピンチになってもらいます。




