008_ゲームの世界だけどフラグは破壊済み?
説明回です。
008_ゲームの世界だけどフラグは破壊済み?
「『ザ・ストーリーオブアナシス』それって『アナスト』のことだよな。
百合ちゃんに頼まれてチーム全員で攻略したやつ。」
「ええ、その『アナスト』よ。
私は百合ちゃんと一緒に全ルート攻略したから大体の事は憶えているけど、列人はどのくらい憶えている?」
「俺は戦闘の攻略を手伝っただけだからストーリー部分はほぼわからん。
だってあれって、所謂乙女ゲームだろう。」
何故ヒーローが乙女ゲーム等をしているのか?ヒーローがゲームをやる理由はいくつかある。
まず、22世紀のゲームは恐ろしく進化しており、フルダイブタイプのVRゲームは当たり前。
更にゲーム中は時間感覚を圧縮させられる為、わずかな隙間時間でもたっぷり時間をかけてゲームを楽しむことができる。
時間の少ないヒーローの息抜きに最適なのである。
次にヒーローは霊力を使って戦うが、その際イメージ力が非常に重要になってくる。
ゲームは様々な非現実を楽しむ事が出来る為、ヒーローのイメトレの助けに使われる事も多い。
ちなみに列人は自分そっくりのアバターを作り、炎を使った空中跳躍(所謂空中2段飛び)を練習し、現実でもそれができる様になった。
最後に身体がボロボロで休みが必要にも関わらず、戦いたがる戦闘狂のヒーローを黙らせる為である。
夢の中でも戦闘が体験できるゲームは重宝されている。
(大半がこの用途で使われている。日本のヒーローは戦闘狂が多い。)
ちなみにこの『ザ・ストーリーオブアナシス』だが、乙女ゲームの割に戦闘はかなり凝っていた。
特に最高難易度のインフェルノは使用キャラがゲーム熟練者もしくは実践経験者並の実力がなければ、クリアできない鬼畜仕様となっている。
その為、ゲーマーであるホワイトこと百合のおねだりによりメンバー全員が招集されたという経緯がある。
メンバー全員百合には甘い。
「ちなみにだけど列人、あなたが使っていたキャラは馬鹿王子だから。」
「まじかよ。あいつ弱かったけどパーティーで近接タイプの剣士ってあいつしかいなかったから我慢して使ったんだよな。」
「いや、あのパーティーじゃステータス高いほうだからね。
ってそんな話じゃないの!」
「そうだった。仮にここが『アナスト』の世界だとして、何か問題でもあるのか?」
「まず、あなたの転生先であるアルフレットだけど、ゲームの攻略対象の一人よ。
ただしルートによっては主人公と敵対して中ボスになるわ。」
「主人公って馬鹿王子一味だろう。
もしかして『氷の暗殺者』アルフレットか?」
「はい、正解。大半のルートで主人公への暗殺依頼を受けて1対多数で戦闘して、それでも互角の勝負をしてくる。
個人戦力はゲーム内最高クラスのアルフレットね。」
「なんで説明口調なの?」
「確認の為よ。大事なことよ。」
「つまり、状況によっては馬鹿王子と戦争になるってことか。」
「まあ、そっちに関してはあんまり心配してないけどね。
そもそもアルフレットが暗殺者になったのって、母親が死んだ絶望で氷の能力が覚醒してその力を暗殺者ギルドが目を付けたからなの。
今、マリアさんは生きているし、中身はあなたでしょう。
それに多分暗殺者ギルドはあなたが壊滅させているわ。」
この百香の発言に列人は首をかしげる。
「俺に絡んできたチンピラ共って、もしかして暗殺者ギルドだったの?
いや、ないわぁ~。だって8歳の俺に負ける様な雑魚だぞ。
あ、そういえば別口で暗殺者共を始末した事はあるけど、でもそいつらにしたってギルドっていうには弱すぎだったしな。」
「ヒーロー基準で考えないこと。
一般人から見たら、一部でもヒーローの術を使えて鼻歌交じりにモンスターを駆除できるなら子供でも化物よ。」
「・・・そう、だったな。」
先ほどまでふざけていた列人がこの時だけは少し寂しそうだった。
列人のデリケートな部分に触ってしまったと百香は苦い思いを感じた。
これ以上この事に触れるべきではないと判断し、話題を切り替える事にする百香であった。