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087_ネスの怒り

アースドラゴン撃破後の事後処理です。

サブタイ通り新ギルドマスターのネスが切れます。


今回はバクラ視点です。

087_ネスの怒り


俺は再び愕然としていた。

いや、確かに自分が提案したことではある。

しかし本当にやってしまうとあまりの非常識さに震えが止まらない。

落ち着け、よし今の俺は冷静だ。


目の前には巨大なアースドラゴンの死体が転がっている。

そう、自分が人間をやめた証が・・・・


「やりましたね、バクラさん。無事討伐できたみたいで何よりです!!」


「しかしすごいわね。この短期間でこんなデカ物とガチの殴り合いができるくらい強くなれるなんて。」


「・・・これ、本当に俺がやったんだよな。」


「何言ってるんですか。その証拠が目の前にあるじゃないですか。」


「まあ、流石にグレートボアを投げつけるとは思わなかったけどね。

でも亜美ちゃん、ちょっとモンスター狩りすぎよ。どうやってこれ運ぶのよ。」


そういえばグレートボアを投げつけた後、アミの姿が見えなかった気がするが、まさか外で狩りをしていたのか。

ドラゴンの巣の外を見ると大量のモンスターの死体が転がっている。


「さすがにちょっとやり過ぎたかな?王都の周りだとこんな大物いなかったから張り切りすぎちゃったかな?」


「・・・はぁ、2人ともちょっとはしゃぎすぎね。

これ全部ギルドに運んだら絶対職員の皆さん怒るわよ。

どうする。少し素材置いて帰る?」


「ダメだよ!それだと無用な殺生をした事になるよ。

殺生は否定しないけど無駄にするのはダメなんだから。」


「亜美ちゃん。もっともな事を言っているけど目が¥マークになってるわよ。」


こいつらなんでこんなに平然としているんだ。

俺はSランクハンターが複数人必要な超Sランクのモンスターを単独で撃破したんだぞ。

普通もっと別の反応があるだろう。確かに俺は冷静じゃなかった。

ここ最近のことでメリッサを危険に晒していたものの正体を知った。

そして俺にはそれを倒す事ができる力がある事を知った。

苛立ちと高揚感の両方があってこんな馬鹿げた提案をした事は否めない。


「バクラさん、早く復帰して荷物まとめる手伝ってくれるかしら。

量が多いから大変なの。ほら、早く手を動かして。」


「そうですよ、バクラさん。素材は鮮度が命なんですから。急ぎましょう。」


「・・・ああ、すまない。今やる。」


俺は言われるがまま、素材の処理を行う。


「おお!!バクラさん凄い手際で処理しますね。」


「本当ね、列人でもこんなに早く処理できないわ。しかも丁寧。

これなら少しはギルドの方々の怒りも和らぐかしら。」


いや、関心するのはそこじゃないだろう。


「よし、血抜きは大体終わったわね。

このドラゴンの血はゲオルグ先生行きね。」


「確かにそうだね。血はデリケートだから売り手が見つかる前にダメになっちゃうもんね。

内臓もお願いしちゃおうか。その方が何かと有効利用できると思うの。」


「え?いいの亜美ちゃん。内臓は結構いい値段になるけど?」


「もう!百香お姉さん。私をなんだと思っているの。」


「ん・・・・守銭奴。」


「ひどいよ。私だって貴重な素材の有効利用とか色々考えるんだよ。

そんな欲の皮が突っ張った人間みたいに人の事言わないでよ。」


「欲の皮が突っ張ってない人間は人の貯金を狙ったりしません。」


こいつら、何和気あいあいと話してんだよ。

おかしいだろう。この高難易度モンスターの素材の山の中でする会話じゃないだろう。


「よし、荷造りは終わったわね。バクラさんそっちのソリを持って。

亜美ちゃんはこっちね。」


「百香お姉さん、自分の分少なくしてるよね。ずるいよ。」


「いや、私周辺警戒と護衛があるから。」


何平然とアースドラゴン括ったソリ渡してんだよ。

これ10トンはあるぞ。こんなの運べる訳が・・・・運べた。

よく見るとアミも大量のワイバーンとロック鳥を運んでる。

あれも10トンくらいありそうだな。あいつ前より運べる量増えてないか?


それから人間卒業証書授与式が終わった俺と百香と亜美はその足で村のギルドに戻る。

当然ギルドのみんなには怒られる。あのネスに青筋を立てながら小言を言われる日が来るとは思わなかった。

俺達は素材を渡した後、ネスにマスター室に呼ばれた。


「・・・バクラさん、あなたがついていながらこんな馬鹿げた事をするとは思っていませんでしたよ。」


「・・・すまん、ネス。俺も冷静じゃなかったと思う。今後はこういう事がない様にする。」


「・・・何があったんですか?あなたらしくない。

ハンターの心身に気を配るのもギルドの仕事です。

話してください。マスターだったあなたならわかりますね。」


「ああ、わかった。モモカ、アミ。お前達も聞いてくれ。アルとフィオには後で言う。

ただしメリッサには内緒で頼む。」


「「「・・・・・」」」


3人は驚愕の表情を浮かべながら黙って頷いた。

それはそうだろう。俺がメリッサに隠し事をしているのだから。だが必要な事だ。


「メリッサの本名はメアリー=スチュワート。元公爵家の人間だ。

モモカとアミならこの意味が分かるだろう。」


俺の言葉に2人は頷くがネスだけは状況が理解できないようだ。珍しく不満げな表情を浮かべる。


「私にもわかる様に説明してください。」


「ああ、メリッサは命を狙われている。そしてその原因が先日わかった。

敵は魔族、そしてジギスムント公爵だ。」


「!!」


俺の言葉にネスは驚いた表情をするが俺は構わず話を進める。


「そして俺には霊力、アル達と同じ力がある事も先日わかった。

俺は魔族やジギスムントに対抗する為に力を付ける必要があるんだ。」


「・・・それであんな馬鹿げた行動を取ったというわけですか。

本当にあなたはメリッサさんが絡むと馬鹿になりますね。」


「・・・・」


本当に珍しく辛辣な言葉を吐き出してくるネスに俺は黙って頷くしかなかった。


「いいですか?バクラさん。それとモモカさん、アミさんもです。

あなた達がいくら強いとは言え、アースドラゴンに1人で挑むなど無茶だと言う事を理解してください。

あなた達が力を欲している理由は納得しましたが、無茶を許す理由にはなりません。

あなた達はもっとあなた達を心配している人間がいる事を自覚すべきです。

後でレットさんを連れて私のところに来てください。あの人にも同じ説教が必要そうです。」


「すまん。」「すみません。」「ごめんなさい。」


ネスの説教に3人で謝罪する。どうやらネスは怒っているようだ。

怒ったネスを見るのは初めてだ。


「だいたいバクラさん、あなたにもしもの事があったらメリッサさんはどう思うか考えた事がありますか。

モモカさんにアミさんもです。あなた達はもう村の一員なんです。

あなた達になにかあって悲しまない村の人間はいないんですよ。

私はもう10年前のような思いはしたくありません。」


そうか、ネスも10年前の防衛線で父親を亡くしている。

最後は折れたが弟のロバートの自警団入りにも難色を示していた。


「それにメリッサさんに内緒とはなんですか。

彼女は当事者ですし、私達も関係者です。

このことは村人全員に知らせます。

私達を守られているだけのか弱い存在と思わないことです。」


「おい、ネスそれは・・」


「これは決定事項です。分かりましたね。」


「「「・・・・・」」」


ネスの言葉に俺達3人はただ黙り込むしかなかった。

普段怒らない人間が本気で怒ると怖い事を身を持って知らされた。


この後ネスの宣言通り俺達はアルを呼びに行かされた。

ネスはアルにも説教をしていたがなぜか俺達より長かった気がする。

ネスの言う通り、この村の人間は守られるだけの存在ではありません。

列人が無茶をしすぎている為、なかなか分かりづらいですが、それぞれが村を支える為に自分が出来る事を日々尽力しています。

そうしないと辺境のド田舎では生きていけません。

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