079_戦争(訓練)の結末
今回の訓練の結末です。
さて、勝敗はどちらの手に。
079_戦争(訓練)の結末
『ラピッドファイヤ』
『オークレイン』
亜美の『神風』を突破した直後の隙を狙い、すかさずミランダと百香が攻撃を放つ。
列人はミランダのナイフを全て躱し、百香の樫の木の雨を2人に弾き返す。
当然列人が弾いた樫の木は2人に向かって飛んでいく。
『オークシールド』
百香は黒檀の盾で自分とミランダへの被弾をガードするが、百香も限界に近い。
先ほどから一番術を使用しているのは百香だ。
百香は意識が僅かに遠のきそうになるのを感じる。
ミランダも先ほど投げたナイフで弾切れのようだ。
バクラも列人の攻撃を再三に渡り受け止めている為、疲労は隠せない。
それは列人にも言える事だ。
周囲を囲まれながら攻撃を回避し続ける事に集中力を使っている上、先ほどの『神風』突破により霊力をほとんど使ってしまった。
そして手持ちの木刀もあと1本、これが折れたら攻撃、防御手段を失い負けが決まる。
列人は亜美の『神風』により崖っぷちまで追い詰められていた。
列人は笑っていた。いや、嬉しかった。
子供だった亜美が自分を追い詰める程に強くなっている。
彼女は守られる子供ではなく、頼もしい自分達の仲間だ。
分かっていたつもりではいたが、こうやって実感すると嬉しくて堪らない。
そして他の者も自分を追い詰める為に死力を尽くしている。
みんながみんな、それぞれの全力で自分にぶつかり、自分も全力でぶつかっている。
その事になんとも言い難い高揚感を感じる。
だが、終わりにしなければならない。
皆、限界だ。決着の時は近い。列人は無言でバクラに木刀を振るう。
「・・・・」
「くッ・・・」
バクラも木刀を受け止めるが、霊力の密度が足りない。
『アイアンウォール』は砕けバクラは吹き飛ぶ。
列人はすかさずバクラにトドメの一撃を放とうとするが、ここで百香が動く。
『オークランス』
「・・・・」
最後の力を振り絞り術を放つが、列人が無言で弾き返す。
列人に弾き返された樫の木の槍に百香が被弾。ここで百香はリタイアである。
これでジーニアス、亜美、百香がリタイア、ミランダのナイフは弾切れでバクラは術を使う力が残っていない。
列人は勝負に幕を引くべくバクラに一太刀入れようとする。
ヒュン、コツ。
列人の頭になにか硬いものが当たった感触がした。
「よし、レットさん被弾、私達の勝ちね。」
列人が振り向くと満面の笑みを浮かべて勝利を告げるミランダがいた。
そう、彼女は自分の持っていた防御用のロッドを列人に投げたのである。
この時、列人は笑いがこみ上がってくるのを感じた。
久しぶりに全力で戦って負けた。悔しいがとても楽しかった。
「はははははは、ああ、俺の負けだ。おめでとう。」
こうして模擬戦は列人の負けで幕を閉じた。
その後、全員がその場に倒れ休む事、約1時間。
「どうだった。今のが列人式ヒーロー育成術オリジナル版だ。
バクラが受けたのが中級編で他のみんなは入門編だな。
みんな、体の方は平気か?」
列人が全員に体調の状態を確認する。
「私はもう治ったわ。」
「私も平気よ。一番ダメージが少なかったし。さすがに疲れてはいるけど。」
百香とミランダが答える。この二人は比較的軽傷である。
「私も平気だよ。霊力の使いすぎで少しフラフラするけど。」
「亜美ちゃん、無理するな。君が一番重症なんだから。」
「僕もかなり重症だと思うんだけど、心配してくれないのかい。」
「ジーニー。お前は初っ端でやられてただろう。」
「あんなの喰らったら普通死ぬよ。」
亜美とジーニアスはまだダメージが残っているようだ。
無理もない。亜美は霊力のほとんどを使って気絶、
ジーニアスは『ミストルティン』をまともに受けたのである。
列人の流れ弾の最大の被害者はジーニアスである。
「しかしレット、なんで君はそんなに平然としてるの。」
「ああ、もう治ったからな。」
「信じられないわ。あなたが一番動いているはずなのに。」
「相変わらずの体力バカね。」
そう、この中で一番平気そうと言うか平気なのは列人である。
「・・・・・」
「どうした?バクラ、さっきから黙りこくって。」
先ほどから黙っているバクラに列人が思わず話しかける。
しばらく沈黙を続けた後にバクラが質問を投げかける。
「・・・なあ、アル。この訓練の後って本来疲れてないといけないんだよな?」
「はぁ、言ってる意味がよく分からないんだが。」
質問の意図が理解できない列人にバクラが言葉を続ける。
「あれから1時間休憩はしたが、あの運動量だ。普通はその程度で回復するわけがないんだよ。
でも俺は今、体調が万全な状態らしいんだ。おかしくないかこれ。」
「ああ、霊力による体力回復は初経験だったな。
霊力持ちは大抵の疲れはすぐに回復する。亜美ちゃんみたいに霊力を完全に0にすれば話は別だが。」
「つまり俺はお前らと同じデタラメ人間の仲間入りをしたわけだ。」
「なんかえらい言い様だが、端的に言えばその通りだ。」
この言葉を聞いたバクラは項垂れて、この世の終わりとばかりに落ち込むのであった。
なんと勝者はミランダでした。
次回はミランダのお願いを列人が聞きます。




