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078_神風

訓練開始です。

今回の亜美ちゃんは超本気です。

078_神風


「じゃあ、皆配置についたな。では始め。」

作戦会議後、それぞれ配置につき訓練開始である。

列人が開始の合図を出すと皆構え、バクラはすぐさま術を展開。


『アイアンウォール』


先ほど『炎槍』を防いだ鉄壁の術を自身の前方に展開し列人の行く手を阻む。

そこに列人がお構いなく切りつけてくる。


「まずは手始めだ。くらえ!!」


列人が木刀をバクラの『アイアンウォール』に叩きつけると凄まじい衝撃と共に『アイアンウォール』が砕け、バクラは後ろに仰け反る。

どうやら、霊力で木刀を強化しているようだ。威力は『炎槍』の比ではない。


「ほら、もっと霊気の密度を上げろ。ドンドン畳み掛けるぞ。」


『疾風』


さらに切りつけようとしたところに亜美の風の矢が列人に向かって無数に飛来する。

列人はそれをお見通しとばかりに難なく避ける。


『パワーブースト』


『アイビーバインド』


避けた所へミランダが肉体強化をして放ったナイフと百香の蔦の縄が襲うがそれを事もなく木刀で切り払う。


『ロックランス×10』


ジーニアスが魔法で列人の立っている円の範囲全てを覆い尽くす様に岩の槍が出現させ、列人を襲撃する。

当然地上には列人の逃げ場はないので空中に回避する。

動きの自由が利きづらい空中に避難したのをチャンスとみるや全員が一斉に攻撃に移る。


『クイックショット』


『ウインドカッター×10』


『烈風』


ミランダがナイフを同時に5本投げ、ジーニアスが風の刃を10発同時に放ち、

亜美は直径5mはあろうかという巨大な風の矢を放出する。

だが列人は空中でその全てを木刀で弾き飛ばし、無傷でやり過ごす。


『ミストルティン』

百香最大の攻撃技のひとつ。神殺しの伝承を模したヤドリギの槍が列人に向けて放たれる。

列人は空中にいる上、先ほどの攻撃を弾いたばかりで体勢を整えきれていない。

普通ならこれで終わりだが相手は列人である。

列人は空中2段ジャンプで体勢を立て直しすかさず迎撃する。

その時百香には列人が『待ってました』とばかりに薄く笑っている様に見えた。


「くたばれ、ジーニー!!!」


列人が『ミストルティン』に思いっきり木刀を叩きつけ軌道を変更する。

そう、ジーニアスの方へ。

この時木刀は砕けるが『ミストルティン』の勢いは加速され、猛スピードでジーニアスを襲う。


「え!嘘でしょ!『ロックウォール×20』」


ジーニアスは慌てて魔法で岩の壁を20枚生成するが、『ミストルティン』の勢いはわずかに弱くなるに留まり、依然猛スピードでジーニアスに向かってくる。


「うわー!ダメだ!退避ーーーー!!!」


ジーニアスは回避行動に移る。

もう勝負とかはどうでもよく、ただ生き残る為に必死で円の外に飛び退く。

この判断は正しかった。ジーニアスが飛び退いた直後、さっきまで立っていた場所に直径5m程のクレーターができており、その爆風でジーニアスは遥か遠くへと吹き飛ばされる。

その後落下したジーニアスは当然気を失っており、そのままリタイアとなった。


「こらーーーー!!ジーニー!だから被弾に気をつけろって言ったでしょうが!!」


「・・・百香お姉さん、もしかしてこれ予想してた。」


「当たり前でしょう。相手は列人よ!列人!

あと亜美ちゃんもミラもなに温い攻撃しているのよ。ちゃんと殺す気でやりなさい!」


「「・・・・」」


2人はかなり強めに攻撃したつもりなのだが、百香から言わせると温かったらしい。

列人の常軌を逸した動きと百香の殺意の高さからようやく他の者はこの訓練のやばさに気づかされた。


「ほら、しゃべっている暇はないぞ!」


「くっ」


『オークランス』


「おっと、危ないよっと。」


砕けた木刀を捨てて、スペアに持ち替えた列人がすかさずバクラを切りつける。

バクラは術で防ぐがすぐに術の壁は破壊される。

百香は列人の気を引くために『オークランス』で攻撃するがまたしても弾かれる。

今度はミランダの方へ、


「ミラ、避けて。」


「嘘!なんでこんなに正確なのよ!この!」


百香の声にミランダが自前のロッドで『オークランス』を叩き落とす。


『春雷』

亜美が今まで他の者に見せたことのない術の矢を放つ。

列人はこれを叩き落とさずに避ける。これに亜美は思わず舌打ちをする。

今放ったのは風の摩擦により電気を帯びた矢であり、その事を初見で列人に見破られたからだ。


「弾き落とせない矢か、やるね亜美ちゃん。」


「初見で見切っておいて。」


「バクラ、そろそろ沈んでもらうぞっと!」


「ちっ!舐めるな!」


列人は『春雷』を軽々と避けながらバクラへの攻撃の手を緩めない。

しかし何回も攻撃されていて、バクラも黙っていない。

『アイアンウォール』を拳の周りに集中させて列人の木刀を殴りつける。

これによろめいたのは列人の方である。


「へぇ、そう来なくっちゃな。」


「ぬかせ!」


『ラピッドファイヤ』


「おっと、危ない。」


列人がわずかよろめいた隙を見てミランダがナイフをまとめて10本投げつけるが、列人はそれを難なく回避する。


百香はこの状況を見てまずいと思った。

確かに亜美は反撃されない矢を使ったりと工夫しているし、バクラも少しずつ列人の攻撃に対応できる様になっている。

ミランダも列人が少しでも隙があると思えばすかさず攻撃に移っている。

だが、列人はまだまだ余裕だ。

その証拠に普段戦いではしない様なおしゃべりをし、攻撃も一気に畳み掛けるのではなく、こちらの動作を待ってから行動をしている。

消耗を考えれば長期戦はこちらに不利。

短期決戦で一気に決めるしかない。意を決して百香は全員に指示を出す。


「このままじゃ埒があかない。短期決戦で決めるわよ。

亜美ちゃんは一旦攻撃をストップ、最強の技の準備をして。

バクラさんはとにかく耐えて、私はこれから全力で攻撃して列人の隙を作る。

反撃も全部私が止める。ミラは残りのナイフ全部使ってひたすら列人を攻撃。

投げ終わったら、そちらへの反撃はスルーするから全力で回避行動。」


これより最後の攻防が始まる。


『アイビーバインド』『オークランス』


「・・・・それ!」


百香が生み出した蔦の縄、樫の木の槍が列人を襲うがそれを難なく弾き返す。

樫の木の槍はミランダに向けて打ち返す事を忘れない。


『エボニーシールド』『エボニープリズン』


「どりゃー!」


『アイアンウッドプレス』


百香は列人の流れ弾を黒檀の盾で防ぐと同時に黒檀の牢獄で列人の動きを封じる。

列人はすぐさま黒檀の牢獄を木刀で破壊する。

そこに鉄木(アイアンウッド)でできた直径3mはあろうかという巨大なハンマーが列人に向けて振り下ろされる。

列人が立つ円を全て覆っており、上から振り下ろされる為、空中への回避も不可能。


「うりゃー!」


列人は縦回転しながら空中に飛び、ハンマーを迎撃。

ハンマーは激しい衝撃音と共に爆散。この時列人の木刀も粉砕される。


神風(かみかぜ)

亜美の最強の技のひとつ、亜美の弓から放たれた超圧縮された風の球体が列人の上空に停滞する。

次の瞬間、


ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!


球体から無数の矢が放出され、列人へと襲いかかる。

列人は空中多段ジャンプを用いてそれを回避する。

数は多いし、スピードも多少は速いが列人が対応できない速度ではない。

しかし球体から矢は無尽蔵に生み出されていき、次々と列人に襲いかかる。

差詰め絨毯爆撃と言ったところか、圧倒的物量が列人を追い詰めていく。


「くっ・・・・・」


木刀を持ち替えながら回避を続ける列人の表情に苦いものが浮かぶ。

しかし『神風』はこれだけでは終わらない。

『神風』の発動から数秒後列人は地面の方から異変を感じる。


先ほど躱した矢が再び列人に向かって襲いかかってきたのである。

回避が間に合わず、木刀を矢に叩きつけて弾こうとした瞬間、


バキッ!


木刀が弾け飛び、列人は空中で後方へ吹き飛ばされる。

そのおかげでなんとか直撃は免れたが一本一本に木刀を破壊する威力がある。

列人はすぐに木刀を持ち替え、懸命に回避行動をとり続ける。

その時列人はあることに気づく。

『神風』の発動後、亜美が弓を一射もしていない。

列人は回避を続けながら亜美の方をわずかに確認すると亜美が目をつぶり大量の汗を流している。

これを見た列人はあるひとつの可能性に気づく。


亜美はこの夥しい数の矢を全て『手動』で操作している。


列人は『神風』が『自動』であれば、何らかの方法で追尾手段を誤魔化す事で回避できると考えていたが、『手動』の場合、術者である亜美を倒す以外不可能である。

現状、亜美への攻撃手段がない。勿論列人からの攻撃禁止のルールもある。

だがそれとは関係なく、攻撃があまりに激しく回避に手一杯なのだ。


「・・・勝つんだ。」


亜美が呟く声が列人に聞こえた気がする。


「お兄さんに勝つんだ。」


今度ははっきり聞こえた。亜美の決意に満ちた声が。

それと同時に百香の叫び声も聞こえる。


「亜美ちゃんストップ!もう限界よ!そこまで!」


だが亜美は百香の制止を無視する。


「私はもう戦える。お兄さんとお姉さんと一緒に戦える。」


『神風』の矢の勢いがドンドン増していく。


「私はもう守られるだけの子供じゃない。」


亜美の矢を弾く列人の木刀が次々に砕けていく。


「勝って、列人お兄さんと百香お姉さんの隣に立つんだ!!!」


亜美は前世で80まで生きたが、その人生の中で守れなかった経験を多くしていた。

子供の頃、列人と百香が死に、ヒーローの候補生をしている時は『先代エレメンタルズ』の3人が戦っているのを見ていることしかできず、『2代目エレメンタルホワイト』になった時も、自分を庇って夫である『エレメンタルブラック』が殉職した。

故に亜美は自分の無力を嫌う。常に守る力を欲する。

今だってそうだ。先日百香が情報を聞き出す為に戦った時自分はなんの力にもなれなかった。

ここで勝たないとお兄さんとお姉さんの隣に立つ資格はない。

そう自分に喝を入れ、持てる全力で列人に挑む。


「押し潰せーーーーーーーー!!!!!」


『神風』で今まで放たれた矢の全てが列人を取り囲み殺到する。

激しい爆発音が列人の立っていた場所に響き渡ると同時に亜美は崩れ落ちる。


「・・・届かなかった。」


列人は持てる全霊力を使い一方向だけに攻撃を集中させ、『神風』を突破したのである。

その代償として手持ちの木刀のほとんどを失った。


「悔しいよ・・・」


亜美はただ一言呟き意識を手放した。

実はこのルールですが、列人にばかり不利に働いているわけではありません。

10mから距離を詰められないので列人に飛び道具を命中させるのは相当に困難です。


故に亜美の神風も『追い詰めるまでも届かず』といった結果に終わってしまいました。

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