076_教えて亜美先生、強くなった理由
修行回その3です。
今回はジーニアスとミランダの修行風景です。
076_教えて亜美先生、強くなった理由
少し時を戻して、ここは村の広場
列人達が来るよりも少し早くジーニアスとミランダが到着し、話しをしていた。
内容は昨日の訓練後に見せられた元ヒーロー3人の模擬戦についてだ。
「いや、しかし昨日のレット達の模擬戦凄かったね。」
「そうね、モカのあの棒術とか、同じ棒術使いとして素直に賞賛を送りたいわね。」
「アミのあの弓矢の攻撃も凄まじかったし、それを全部躱すレットも凄いよね。」
「でもアミの攻撃って隙間なんてなかったわよね。どうやって躱しているのかしら?」
「レット曰く、矢を少し弾けば人間が入るくらいの隙間ができるらしいよ。」
「私はその見極めが全然できないんだけど。」
「はは、同感だね。」
などと話しているとエレメンタルズのメンバーがやって来た。
全員で軽く挨拶を済ませると列人とバクラは少し離れた場所で話し始めた。
どうやら列人とバクラでペアを組んで訓練をするらしい。
ジーニアスとミランダの担当は百香と亜美らしい。
早速2人が訓練内容の説明をする。
「取り敢えずこれ担いで貰ってもいいかしら。」
百香が取り出したのは背負子に乗せられた丸太である。
重量にして50キロ、百香は片手で軽々と2つ持っている。
それをジーニアスとミランダに渡す。
「あの、モカ。これを背負えばいいのかな、って重い。」
「普通に持つとかなり重いから肉体強化魔法ちゃんと使ってね。」
「ああ、なるほど。それなら行けるかな。よっこらしょっと。」
「ジーニー、あんたおっさん臭いわよ。」
「ミラ、さすがに少し失礼だと思うよ。」
「じゃあ、ジーニーの担当は私だからよろしくね。」
「ああ、よろしく頼むよ。アミ。」
「ミラの担当は私ね。じゃあ、ミラもそれ背負っちゃって。」
「わかったわ、モカ。それでこれからどうするの。」
「まずは列人達を追いましょう。」
百香とミランダ、亜美とジーニアスのペアで列人を追うことになった。
道中はさすがに列人達が使った様なショートカットは使わず、普通に山道を使用する。
現在時速15キロほどで移動しているので、何事もなければ1時間ほどで目的地の到着するだろう。
しかしそうは問屋が卸さない。眼前にゴブリンの群れを確認した。数は10体。
百香は少し悩んだ。こいつら程度ではジーニアスとミランダの訓練相手にならない。
でも倒さないと訓練の邪魔だ。少し思案していると亜美が速度を上げてゴブリンに向かって駆けていく。
「そこ、邪魔。『疾風』」
亜美が手から純白の弓矢を出現させ一度に10発の矢をゴブリン達に向けて放つ。
その全てがゴブリンの頭に吸い込まれ、一瞬でゴブリン達を駆逐する。
「さあ、行きましょう。」
こうして休むことなく、登山が再開された。
途中何回かモンスターに遭遇したが訓練にもならない相手だったので全てすれ違いざまに亜美が撃破した。
ジーニアスとミランダはなんとかついてきているが、2人とももうへとへとだ。
無理もない。彼らは霊力での肉体強化を行えないのだから。
魔法である程度カバーしているが、やはり限界がある。
本来は登ったらすぐ下山だが、今回は休憩を挟むことにしよう。
百香が今後のプランを考えていると頂上付近に差し掛かった所でまたしてもモンスター。
ウルフが5体、せっかくだから休憩前に戦ってもらうか。百香は全員に声を掛ける。
「ウルフ5体だけど今回はジーニーとミラが戦ってくれる。
亜美ちゃんは手を出さないでね。あと重りはとっちゃダメだからね。」
「はぁはぁ、了解。」
「はぁ、了解したわ。」
ジーニアスとミランダは戦闘態勢に入る。
ミランダは全力で戦うため、肉体強化魔法を最大にする。
そうしないと重りが重すぎてまともに戦えない。
ジーニアスの方は移動をやめ、動かずに遠距離魔法で闘うようだ。
ジーニアスの方が体力的に危うい。
ジーニアスは元々遠距離専門の魔法師だから致し方ない。
「・・ミラ、まずは僕が魔法で先制するから、
撃ち漏らしの足止め、できれば撃破を頼むよ。」
「・・了解、いつでもいいわよ。」
2人は軽い打ち合わせの後戦闘を開始
ミランダは武器である棒を構え、ジーニアスが魔法の詠唱を始める。
「切り裂け、『ウィンドカッター』」
ジーニアスが詠唱を終えると風の刃が発生しウルフに飛来、
胴を真っ二つにする。
「え!」
ジーニアスの動きが止まる。確かにダメージを与えるつもりだったけど、まさか胴体を切断できるとは思っていなかった。
自分の魔法の威力に驚いているとウルフ達がジーニアスの方へ向かってくる。
「させない、『パワーブースト』」
ミランダが肉体強化をしつつ、ウルフの頭に棒を振るう。
ドスッ!!
ウルフの頭蓋骨は陥没しそのまま血を噴き出しながら絶命する。
「は!」
やった本人であるミランダが一番驚いている。
だがウルフも同様で動きが一瞬止まった。
そこにショックから最初に回復したジーニアスが魔法を放つ。
「貫け、『ロックランス』」
ウルフ三体それぞれが立っていた地面から岩の槍が生み出され、ウルフを串刺しにしていく。
串刺しにされたウルフは僅かに痙攣した後に動かなくなった。
「「・・・・」」
「ほら、呆けていないの。頂上まで走るわよ。」
自分達がやった所業に唖然とする2人をよそに、百香が平然と訓練に戻る様に促す。
言われるがまま2人が走り出し、頂上にたどり着こうとしたその時、
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!!!!!!!
頂上付近から激しい爆発音が響いてきた。
「え!なに今の!」
「モカ!アミ!凄い音がしたよ!警戒して!」
「ああ、あれは列人の『炎槍』ね。」
「列人お兄さん、一体何に使ったかな?」
「多分バクラさんに撃ったんじゃないかしら。」
「は!『炎槍』ってこの間ウルフをまとめて10匹焼き殺していたやつだよね。」
「ちょっと!なに落ち着いているのよ。バクラさん死んじゃうじゃない!!」
「爆発の回数から言って10回だね。バクラさん、大丈夫かな?」
「多分平気でしょう。昨日の感じだと刀を使われなければ問題ないわよ。」
「「そんなわけないだろう(でしょう)!!!」
ジーニアスとミランダは列人を止めるべく、自分達がヘトヘトにも関わらず、猛スピードで山頂を目指すのであった。
しかしそこにあったのは怒りの形相で列人の頭に拳骨を落とすバクラと拳骨を喰らって頭を押さえる列人の姿だった。
隣で百香が『ほら、大丈夫だったでしょう。』と言いたげな顔をしている事に釈然としない2人であった。
「それじゃ、ちょっと休憩ね。もう重りは下ろしていいわよ。」
「ふぅ、助かったわ。」
「・・・・」
バクラの無事も確認したところで、全員で休憩をとる事にした。
ミランダとジーニアスが疲れた様子で重りとなっていた丸太を背負子ごと地面に下ろす。
ジーニアスは喋る余裕もないのか、無言である。
それから5分ほど経過し一息付いた所でジーニアスが疑問を口にする。
「あの、みんな。質問してもいいかな。」
「なんだジーニー。構わないけど、訓練はまだ途中だからあんまり時間取れないぞ。」
「構わないよ。そんなに時間を取らせる気はないし。」
「じゃあ、どうぞ。」
列人の許可を得て、ジーニアスが質問を口にする。
「なんで僕達たったの1日でこんなに強くなったんだろう?
『学園』のカリキュラムをこなしただけではこんなに強くなるのに半年は掛かるよ。」
「その質問には亜美ちゃんに答えてもらおう。よろしく、亜美先生。」
「はい、分かりました。列人君。」
亜美がすかさず先生モードになる。彼女も満更ではないようだ。
口調も心なしか丁寧な大人口調になる。
「まず、ジーニーとミラに聞きたいのですが、『学園』のカリキュラムで昨日教えた霊力、魔力の操作方法は習いましたか?
私が在籍中には授業ではなかったと思いますが。」
「確かに授業ではそんな事教えていなかったね。」
「そうね。大体魔法の反復練習ばかりだったと思うわ。」
「つまり、魔法を使用する際の正しい手順を知らなかったわけですね。
正しい手順を知っているのと知っていないのでは効果に差が出るのは当然です。
例えるなら『地図を持たずに目的地も教えてもらわずにただ目的地を迎えと言う指示だけがあった』というのが今までの状態です。
昨日の説明は言うならばその『地図と目的地』だったわけです。
ただ一つ誤解して欲しくないのは、『学園』での反復練習も『目的地』に向かう為の言うならば『体力』を付ける訓練にはなってます。
つまり今日の訓練の成果は『地図』と『目的地』と『体力』が揃った結果と言えます。
ジーニーとミラに比べてバクラさんが異常に強くなっているのはこの『体力』の部分の差と霊力という『乗り物』があるからでしょうか。」
亜美の説明にジーニアスが頷き、自分なりの解釈をする。
「ああ、なるほどね。昨日の話に当てはめるなら『感知』が地図で『放出』が目的地
『移動』『増減』『変化』が移動手段と言った所かな。」
「はい、その理解で問題ありません。」
ジーニアスがしっかり理解できている事に対して、亜美は満足そうに返事をする。
「あとは事前に列人お兄さんや百香お姉さんの動きを見ていた事も大きいですね。
これはイメージの部分、つまり『変化』で大きく役に立ちます。
あのこちらの人にとっては非常識な動きを見れば今までの固定観念は崩れ去ります。
つまりイメージの幅が大きくなるわけです。」
この固定観念の破壊に実は亜美も加担しているのだが、それについては亜美はナチュラルに棚上げしていた。
おそらく常識がほどよく破壊されたコル村の住民が魔法を覚えたら、すぐにこの世界における大魔法使いになるだろう。
「なるほど、魔法っていうのは魔力を用いて超常、つまり常識を超えた現象を起こす事だからね。
常識はむしろ魔法においては枷になるわけだ。さっきの『ロックランス』もレットの『炎槍』を見て
魔法で複数のモンスターを倒せるのが当たり前みたいに思ったからかな。」
「そういう意味ではジーニーは魔法の才能があると言っていいわね。
私はあんまりなさそうだけど。」
「そんなことはないと思うよ。あのウルフを棒で倒したのってモカの動きをイメージしたでしょう。」
「え!そうなの!」
「ええ、私が知る限りで最も強い棒術の使い手はモカだもの。」
「へぇ、そうなんだ。」
ミランダの言葉に百香は素っ気ない態度を取るものの、皆には照れているのが丸わかりだった。
百香の頬が若干赤みを帯びている。
「さあ、説明はこの辺でいいでしょうか。
では休憩はこの辺にしましょう。皆さん、訓練再開しますよ。」
亜美先生が休憩の終わりを告げ、各々準備に移る。
悪夢が再開する合図である。ぐったりしながら覚悟を決めるジーニアスとミランダであった。
百香は褒められ慣れていませんので、褒めると面白い反応をします。
流石にデリカシー0の列人もこれを揶揄ったりはしません。




