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073_そんな事は服の上からでもわかる

今回はコル村にやって来た貴族2人の様子です。

073_そんな事は服の上からでもわかる


フィオに連れられて、ジーニアスとミランダは村の様子を見学しながらギルドに向かっていた。

コル村の景色は表面上はとても長閑で列人達の行動に振り回されたジーニアスと特にミランダにとっては癒しだった。


「ジーニー、とても穏やかな風景ね。これなら安心して色々見て回れそうね。」


「・・・・」


ミランダのコル村に対する好印象の反応にジーニアスが難しい顔をする。


「どうしたの、ジーニー。なんか気になることでも。」


「ああ、ミラ。この村ってド辺境の田舎だろう。

なのに防護柵が異常に少ないんだ。」


「え、どういう事。」


ジーニアスの言っている意味が分からず、ミランダが疑問を投げかける。


「端的に言うとここには結界が張られている。

規模は中規模で性能は高品質。300人規模の村に置くようなものじゃない。」


「確か魔力の流れが普通とは違うと思ったけど、もしかしてレットさんの仕業。」


「ああ、間違いなくレットの仕業だよ。」


『学園』でも優れた魔法師である2人は魔力の流れに敏感である為、魔力の変化にはすぐに気がついた。

しかしジーニアスの方が知識量が豊富である為、その正体が結界である事にいち早く思い至った。

ジーニアスは強力な魔術師であるのに加え、『学園』一の多才 (マルチタレント)として知られている。

その為、コル村の色々とおかしなところにすぐに気付けるのである。

そしてジーニアスが獰猛に笑う。研究者の目である。


「やっぱりここに来て正解だった。

ここは研究材料の宝庫だ。早速色々見て回りたい。」


「ちょっと待って下さいね。まずはマスターのところに案内しますので。

村の見学は後からでもできますから。」


「そうよ、フィオさんに迷惑がかかるでしょう。

あんたは本当に研究になると見境ないんだから。」


「すまない、それじゃ手早く済ませよう。」


早く村の観察をしたいジーニアスに促されて一路ギルドに急ぐ面々。

ギルドに到着後すぐにフィオが報告すると3人はマスター室に通された。

そこにはバクラとネスがいた。


「マスター、先ほど報告いたしましたお客様を連れて参りました。」


「おう、ご苦労。今マスター業務をネスに引き継ぎ中でな。

ネスも同室するがお二人は構わないかな。」


「はい、大丈夫です。『鉄壁』のバクラさん。」


「ほう、俺を知っているか、ジーニアス=ウォルト伯爵子息とミランダ=コースト伯爵令嬢。」


「え!どうして、まだ名乗ってないですけど。」


「アミが絡んだ段階で『学園』の内情については粗方調べさせてもらった。」


「さすがですね。世間では鉄壁の防御力ばかりが注目されますが、あなたの真骨頂はその冷静さと準備を怠らない用意周到さ、そして情報収集能力だと僕は思ってます。」


「ジーニアス、お前さんも随分と詳しいじゃないか。俺は所詮Aランクハンターだぞ。」


「僕もめぼしいAランク以上のハンターのデータは頭に叩き込んでますので。」


「「・・・・」」


「すみません。立ち話もなんですから椅子に掛けませんか。

フィオさん、申し訳ありませんが全員分の飲み物をお願いします。」


「はい、わかりました。ネスさん。」


「私はお茶請けでも探しますかね。確か戸棚にクッキーがあったはずです。」


バクラとジーニアスが舌戦を繰り広げる中、絶句するフィオとミランダをよそにネスがもてなしの準備をする。

誰が相手だろうと礼儀正しいネスらしい。

すっかり毒気を抜かれたバクラとジーニアスは今後について話し合う。

ジーニアスが列人に会ってから今までの経緯を説明する。


「・・・つまり、お前さん達とうちのモモカが魔王軍とやらに狙われていると。

しかも国王と第一王子と王族、公爵家も狙われていて、ジギスムント公爵家が関わっている。」


この時バクラは難しい顔をしていた。

勿論百香の心配もしているだろうが、それ以外に何かしらの懸念があるような顔だった。

だが、それに気づいた者はこの部屋にはおらず、ジーニアスが話を進めていく。


「はい、そして彼らが言うには取り敢えず『学園』とコル村は安全だと。」


「そこで私は『学園』に戻り、ジーニーはコル村に滞在したいと考えています。」


「その際必要になってくるのがコル村での拠点と『学園』に帰る際の護衛です。」


「話はわかったが、どうしてコル村が安全なんだ?」


「マスター、アルくんのせいだそうです。」


「ああ、大方あいつが潰した犯罪組織に魔族が関わっていたとかだろう。」


「・・・・・」


列人のせいというだけで全てを察せる辺り、バクラが相当に慣らされている事を思い知らされる。


「取り敢えず、拠点については一時的にギルドの寮の客間を貸すが、使用人なんかは当然いないしあくまでも仮宿だ。その辺は問題ないか。」


「それについては問題ないですが、ここら辺で魔術ギルドの口座を扱っているところありますか?」


「ん、ないがそれがどうした。」


「余分なお金は全て魔術ギルドに預けているから、一旦お金を下ろさないと生活資金がないんです。」


「じゃあ、ミランダ嬢を王都に送る時にお前さんも付いてくるといい、それまでの資金はツケにしといてやる。」


「助かります。それから国王への注意喚起と護衛の強化も行いたいのですが、なにかいい案はありますか。」


「なんだ、そんな事か。アルの奴何も言って無かったのか?」


「本人が言うには田舎のハンターの証言では厳しいと。」


ジーニアスの返事に対してバクラはため息をつく。


「はぁ、あの馬鹿はもっと周りを頼る事を知るべきだな。

ジーニアス。ヴィルヘルム騎士団長に伝手があるからそちらに連絡しておこう。

王都に行った時にでも相談しよう。」


「なんと、ヴィルヘルム団長と伝手があったんですか?

・・・なるほど、トーマスが撤退したのはそういうわけか。」


「え!どういう事なの。」


トーマスの撤退の理由を語るジーニアスにミランダが驚いた表情で聞き返す。

それに対してジーニアスが説明をする。


「ここにはモカ、つまりモニカ嬢が匿われているんだ。

だからトーマス達騎士団はあまりいて欲しくないんだ。

そこでヴィルヘルム団長の出番というわけだ。」


「ほう、なるほど。察しがいいな。

最もヴィルヘルムに関しては自分から来たんだけどな。

村に定期的に補佐官を送っているからな。」


バクラが村とヴィルヘルムの関係を説明しつつ、話を進める。


「それから、今回のミランダ嬢の護衛は俺とアルが勤める。

ヴィルヘルムと話すなら俺とアルがいた方がいい。

モモカとアミはお留守番だな。

行方不明のモニカと『学園』を退学したばかりのアミが王都に行くのはあまりよろしくない。

それに俺のマスター業務は今日で終わりだからな。」


「え!マスターそんなに早く引き継ぎできるんですか?」


「元々、ネスに引き継ぐつもりだったからな。

後は最終調整と情報の引き継ぎをやるだけだったし、辞めると言っても俺は村に居る。

問題ないだろう。」


「そういう事ですよ。フィオさん。」


驚くフィオにバクラとネスが答える。


「そういうわけだから、今後ギルドに用事があるときはネスを頼るように。

出発にはおそらく1週間ほどかかるだろう。その間はゆっくりするといい。

そうだ、今から広場に行くといい。面白いものが見られるぞ。」


「はあ、面白いものですか?」


「ミラ、取り敢えず行ってみるとしよう。それでは失礼します。」


「あ、マスター私もついていっても?」


「ああ、お前は出張明けだ、もう上がっていい。」


今後の予定の目処が立った事もあり、3人はバクラの奨めに従い広場へ行くことにした。


フィオ、ジーニアス、ミランダが村の広場へ行くと列人達が街で買い出しして来た物資を村人に配っていた。

その活気に当てられてジーニアスとミランダは少し呆けた様子でそれを眺めていた。


「アルト君、靴のサイズが合わなくなったんですってね。

取り敢えず1つ上のサイズの靴2つ買ってきたから持って帰ってね。」


「ありがとう、モモカねーちゃん。」


「レベッカさん、パブロさんの新しい弓ね。

この間の狩りでだいぶ傷んでたから。

あと手入れの道具もね。」


「ありがとう~。やっぱりアミちゃんはかわいいね。

お礼にハグしてあげる~。」


「レベッカさん、自分がしたいだけだよね。」


どさくさに紛れて可愛いもの好きのレベッカがアミに抱きつく。

ちなみにパブロとはレベッカの父で狩人である。


「マーヤ、お友達と仲良くしていたか。

これ新しいおもちゃな、みんなで仲良く遊ぶんだぞ。」


「ありがとう、アルおにーちゃん。」


「アル君、いつもありがとう。妹がお世話になって。」


「気にすんな。勝手にやってる事だ。アーヤにはこれな。」


「これってソーイングセット。なんで私が欲しがってるのがわかったの?」


「マーヤが頼んできたよ。お針子になりたいんだってな。応援してるよ。」


「アル君!!あ!ありがとう。私頑張るね。」


「「・・・・・」」


列人が満面の笑みでアーヤに答えると、アーヤは顔が赤くなり言葉がつっかえながらそれでもなんとか返事をする。

ここに新たなフラグが立ったがやはり列人は気づいていない。

その様子を百香と亜美が何とも言えない目で見ていた。


「お、ジーニー、ミラさん。話は終わったのか。」


「ええ、先ほどね。それよりレットさん、どうして私はさん付けなの?」


「いや、なんか常識のある人には礼儀正しくしないといけない気がして。

もうこれは細胞レベルで刻まれているな。」


「つまりレットにとって僕は常識がない人間なんだね。」


「ジーニー、今更気づいたか。」


「レット、君ね~。」


そう言ってジーニアスが列人にヘッドロックを掛ける。

その様子を遠くの方から見ていた村の女子2人が悶絶していた。

どうやらコル村も一部腐海に飲まれているようだ。

ちなみに列人達は自分達が腐った妄想の餌食になっている事を知らない。


「アル×ジニ、ありです。」


「いや、ジニ×アルでしょ。」


「「ああ、やんのかこらー!!」」


等と自分達で掛け算をされた挙句、戦争が勃発していると知ったら彼らはこの場から逃げて、その女子には二度と近づかなくなっていただろう。


じゃれあっている列人とジーニアスを百香が引き剥がす。

これ以上は危険と判断した。


「列人、じゃれつくのはいいけど仕事しなさい。

ジーニー、あなたも邪魔をしないの。」


「ああ、すまん。トリシャ、頼まれていた本ね。

言われた通り中身は見てないけどこれで良かったかな。」


「はう!これです。ありがとうございます。これで私はまた明日を生きられる。」


「アイーダはこっちの本ね。

タイトルだけ見て買ったから合ってるか不安なんだけど。」


「ありがとうございます!腐腐腐。これで我が軍の勝利はまた一歩近づいた。」


この二人が村で腐海に落ちている少女トリシャ(アル×ジニ派)12歳とアイーダ(ジニ×アル派)12歳。(コル村で腐海に沈んでいるのはこの2人だけ)

列人が買ってきたものはBL本で趣味は真逆なのだが、村で人気の列人に買ってもらうことでその背徳感を楽しんでいる辺り、2人は同類である。

この実態を村で知っているのは本人達と百香だけである。


そんな発酵少女達は置いといて村人に物資を配っていく。

村の娯楽はほぼこの買い出しが頼りなのである。

この時、ジーニアスとミランダが的確に必要なものを探り当てる列人の特技に絶句した。

百香と亜美ですら未だにこれには慣れていない事から、2人の衝撃は計り知れない。

村人の使用している道具の損耗具合、服のサイズとその傷み具合、家具の傷み具合、健康状態とそれにあった食料や薬、等下手したら衣食住全てを把握しているのではないかと疑うレベルである。

百香が未だに盗聴疑惑を持っているのも頷ける。

これに常識人ミランダがすかさずツッコミを入れる。


「レットさん、どこでこんな情報を仕入れてくるのかしら。」


「ミラさん、村の皆の様子を観察したり、世間話をしていれば大体わかるよ。

なんせたった300人の小さな村だからね。」


「出来るわけないでしょう!どこまで非常識なんですか!

大体なんで女性の下着のサイズが全部わかるんですか!

あなた覗きとかしてないですよね!」


「失礼な、そんなの服の上からでも十分わかるだろう。

ちなみに君のスリーサイズだって言おうと思えば言えるけど。」


「ちょっと!やめなさい!本当に訴えるわよ!」


「なあ、レット、その情報だけど後で教えてくれないか。言い値で買うよ。」


「ジーニー、馬鹿な事言ってるんじゃないわよ!

レットさん売ったら社会的に死ぬことになりますからね。」


「いや、俺だってそのくらいの分別はあるから。」


非常識な列人に対して、常識の塊であるミランダが声の限り叫んだ。

それはもうこの17年の人生全部を合わせた所で今日一日で叫んだ量の方が多いくらい。

その事に心地の良い疲労感を感じている自分に不思議な気分のミランダだった。

ちなみに列人相手には偽乳特戦隊も通用しません。

本物とのわずかな違いを服の上からでも確認できます。

ある意味、世の男にとっては涎が出るほど欲しい能力なのですが、列人はその価値に全く気づいておりません。

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