072_騒がしい赤色と桃色の変調
今回は短めです。
列人達とジーニアス達との距離が少し縮まります。
072_騒がしい赤色と桃色の変調
ジーニアスはコル村に行き、ミランダは王都に戻る事が決まったが列人達はひとまずはコル村に戻る事にした。
バンの街で買った物資を村に届けないといけないし、2人を休ませる必要もある。
なんだかんだで野営は貴族2人には堪えたようだ。
帰るときはグレートサイクロン号の通常低速走行(時速50キロ)である。
予想通りというべきか、グレートサイクロン号に乗ったジーニアスがその速さと乗り心地にはしゃぎ、ミランダは終始無言だった。
「すごい、これだけ速いのに馬車よりかなり乗り心地がいい。
構造が頑丈で安定している事と、そのサスペンションのおかげかな。
実に興味深い。レットさん、今度じっくり観察させてもらってもいいかな。」
「ああ、いいよ。村に戻ったら好きに観察してくれ。
暇だったら解説もするよ。」
「おお、それは有難いね。是非お願いするよ。」
「・・・・・・」
「ちょっとジーニアス様、静かにしてくれます。
ミランダ様が気分が優れないのに、耳元でそんな大声出したら余計悪くなるでしょう。」
調子の悪いミランダを介抱していた百香がジーニアスに注意する。
するとジーニアスは怪訝な顔をする。
「ねぇ、モモカさん。そのジーニアス様っていい加減やめにしない。
モニカ嬢にもジーニアスって呼び捨てにして貰ってたし、友人にそういう呼び方をされるのは好きじゃないんだ。」
「・・・そうね。他人行儀は嫌だわ。
この際だからここにいるメンバーはそういうのは無しで行きましょう。」
ジーニアスの言葉に対して、気分が悪いはずのミランダが力を振り絞り同意する。
「じゃあ、ハンターの呼び名みたいにあだ名をつけたらどうだ。」
「おお、いいね。レットさん、わかってる。」
ここで列人が余計な提案をし、ジーニアスがそれに乗っかる。
「でも、なんって付けよう?」
「例えば俺だったら、アルとかレットとかだな。
単純に名前を短くしただけだが。」
「なるほど、じゃあ僕は『ジーニー』とかかな。」
「いいね。そんな感じ。」
「それじゃ、ミランダ嬢は『ミラ』でモモカさんは『モカ』かな。
アメリアが『アミ』なのもそういう理由なのかな。」
「百香が『モカ』とか可愛すぎだろう。ぷぷぅ〜。
ごめん、別にジーニーのセンスの問題じゃないんだよ。
ゴリラにモカはちょっとないと思っただけで。」
「列人、村についたらぶち殺すから覚悟しておきなさい。」
「私だけ仲間はずれです。」
「ああ、そうか。フィオさんってこれ以上縮められないもんね。」
「じゃあ逆に伸ばしてみよう。『オフィーリア』とか。」
「なんかすごいゴージャスな感じの名前になりました。」
「・・・列人お兄さん、それって呼びづらいよね。」
「『ミラ』か、悪くないわね。」
列人のちょっとした提案に皆盛り上がっている中、亜美は列人の行動にどことなく違和感を感じていた。
しかしその正体がわからずに喉の奥に小骨が刺さったようなモヤモヤを感じていた。
そして数分後、一行はコル村にたどり着いた。
着いた直後、弾かれた様に百香が列人に向かって飛びかかる。
移動中に列人に殺害予告をしている百香の事だ。
列人に対してメガトンパンチでも叩き込むのだと皆思った。
コツッ、
そこに皆が想像していた破壊音と列人が吹き飛ぶ姿はなかった。
代わりに百香が手の甲で列人のデコを軽く小突いていた。
「余計な気を使うんじゃないわよ。」
「もういいのか。」
「ええ、心配かけたわね。」
「イイってことよ。」
その光景を他の面々は訳も分からず眺めていた。
百香はそんな皆に振り向く事もなく村へとスタスタ歩いていく。
ボーッとしている面々に列人が声を掛け行動を促す。
「さあ、フィオ。ジーニーとミラさんをバクラのところに案内してくれ。
亜美ちゃんは百香と一緒に村へ帰りを知らせてくれ。
俺は先に広場に行って準備しておくから。」
「わかりました、アルくん。さあ、ジーニーさん、ミラさん、ついてきてください。」
「ああ、すまない。フィオさん、案内頼むよ。」
「よろしくね、フィオさん。」
「オフィーリアって呼んでも良いですよ。」
「「いや、遠慮しておく(わ)。」」
「じゃあ、私も行ってくるね。フィオさん、ジーニーとミラをよろしくね。」
列人の一言でフィオとジーニアスとミランダはギルドに向かい、亜美は百香を走って追いかける。
亜美は百香にすぐに追いつくと気になっていた事を質問する。
「あの、百香お姉さん。聞いていいかな?」
「なにかしら、亜美ちゃんって、大体何を聞きたいのかわかってるけど。」
「そう、じゃあ聞くね。さっきのやり取りなんだったの。
それに列人お兄さんの様子も少し変だったし。」
「やっぱりわかった。あいつあれで色々気を使う奴だから。」
「なんで、百香お姉さんが気を使われていたの?」
亜美の質問に少し考え込みながら百香は返事をする。
「うん、ちょっとね。昨日私1人暗殺者と戦って情報を吐かせたじゃない。
その時ちょっと人には言えないような事をしてね。それで気が立っていたの。
あいつそれに気づいていてワザと騒いで気を紛らわせようとしてたのよ。」
これを聞いた亜美は悔しそうに俯いた。
百香の変化に全く気づいていなかった自分が仲間として不甲斐なく思えたからだ。
それを見て百香は困った様に亜美に声を掛ける。
「亜美ちゃん、そんな顔しないで。これでも私、演技はうまい方だから気づかなくて当然よ。
多分気付けるのは列人くらいよ。心配してくれてありがとうね。」
「私、大人になって百香お姉さんや列人お兄さんの役に立てると思っていたけど、まだまだ、こんなんじゃダメだね。」
自分は大人になって戦える様になった。
もう守られてばかりじゃなく一緒に戦えるようになった。
そう思っていたのに実際は甘えてばかりでちっとも頼りにならない。
そんな思いで身体が震えるのを感じていると頭に温かいものが優しく乗っかる。
大好きなお姉さんの手だ。
「亜美ちゃん。私達はあなたに助けられているわ。
これからも私達をよろしくね。」
その声に亜美の震えはさらに大きくなる。
このお姉さんはどこまで私に優しいんだろう。
私はこの人達の背中を追ってヒーローになったんだ。
「ありがとう、百香お姉さん。私もっと強くなるよ。
お姉さんとお兄さんに頼ってもらえるくらい。」
「今でも十分強いわよ。でもありがとう。
頼りにしてるわ。」
百香の言葉に亜美は強く頷き、村へと共に歩いていく。
強くなる為の日常に向かって。
筆者は登場人物同士の距離感って、呼び方でだいぶ変わってくると思います。
今回みたいに呼び方が変わった事で今までの関係がグッと変わっている感じが出ればと思います。




