069_『百花』の戦い(前編)
百香の戦闘回です。
今更ですが、この物語の戦闘回って人の首が飛んだり、頭部が弾けたりと結構グロイです。
そういうのが苦手な方はご注意ください。
今まで注意書き出来てなくてすみません。
069_『百花』の戦い(前編)
百香はテントからわずかに離れ、敵が襲撃しやすい位置に敢えて移動。
敵の配置については植物の目を使って全て把握済み。
「そこに誰か隠れているの?姿を見せなさい。」
さも今気づいた様にわざと怯えた感じで声を掛ける。
列人が聞けば、『おまえ演技下手くそだな』と言うだろう。
だが襲撃者側はそれに気づいていないらしい。
木の影から黒づくめの男が2人姿を現す。
「よく気づいたな。お嬢さんにしては勘がいいようだ。」
「お前に恨みはないが依頼なのでな。この場で消えてもらうぞ。」
そう言うと百香の後ろからも男が3人、前からは更に5人現れ、百香を取り囲む。
「かかれ!」
襲撃者達は合図と共に百香に殺到する。
それに対して百香は思わずほくそ笑む。
襲撃者達が百香にあと数メートルの位置に近づいた時に異変が起きる。
彼らの足元の地面が突如なくなり、高さ5mほどの穴に落とされた。
そう、落とし穴である。しかも落とし穴の下には鋭いトゲを持つ荊が敷き詰められていた。
『ソーントラップ』
瞬時に荊で罠を作る術、この程度の落とし穴なら5秒で作成可能。
さすがに襲撃者も全く穴を掘る素振りを見せず罠を設置しているとは思わない。
「くっ、いつの間に罠を、だが大した高さではないし、全方向に穴を掘っては逃げられまい。
すぐに取り囲め。確実に始末しろ。」
だが穴に落ちたものの中で動き出す者はいなかった。
「うっ、体が動かん。痺れているのか。おのれ小癪な。」
『ソーントラップ』の荊にはしびれ薬のような効果が含まれていた。
襲撃者は恨み節を呟きながら意識を失っていく。
当初の予定通りある程度の生け捕りには成功したが残念なことに指揮官クラスがいない。
できればこの襲撃者の中で一番偉い者も生け捕りにしたい。
百香が次の行動を思案している中、襲撃者が動く。
周囲を落とし穴で囲まれた百香に対してナイフや毒矢と言った飛び道具による攻撃が無数に飛来する。
『エボニーシールド』
黒檀の盾を周囲に展開し、それらの飛び道具を全て弾き飛ばす。
『アイビーバインド』
無数の蔦植物が百香の足元から襲撃者に向かって殺到し彼らを縛り上げていく。
どうやら、こちらには指揮官はいなさそうだ。
「はぁ、仕方ない。あんまりたくさん捕まえても仕方ないし、始末するか。
『オークバレット』」
樫の木の礫が蔦で捕らえられた襲撃者の頭を打ち抜き、命を刈り取っていく。
この時1人だけ残すのを忘れない。
百香は落とし穴を飛び越え捕らえた男に近づく。
男にとって百香の足音は死神の声に聞こえただろう。
「ではあなたに質問、あなたの指揮官はどこかしら。」
「誰が言うか!」
「あ、そう。」
そう言うと蔦の拘束が力を増し、男を締め上げていく。
「はやく言わないと挽肉になっちゃうわよ。」
この時、男は目の前にいる少女に恐怖していた。
事前に入っていた情報とあまりに違う。
魔封じをされていたのではないか?無気力なお嬢様ではないのか?
こんな死神がターゲットなど聞いていない。
笑顔で自分へ死刑宣告をしてくる少女にただただ震えていた。
「言えば助かるかもよ。」
「言う、言うから拘束を解いてくれ。これではしゃべれない。」
なんとか交渉しなくては、自分は確実に殺される。
命乞いをする男に対して少女は笑みを深める。
「わかったわ。力を緩めるからそのまま話して。」
「隊長はテントに向かった。
見張りのあんたを俺達が始末し、隊長達はテントの奴らを始末する手筈だ。」
百香は植物の目で周囲の敵の動きを確認。
概ね男が言ったとおりの行動をしている。
百香は男に対して微笑みながら答える。
「正直に話してくれてありがとう。
辛かったでしょう。今楽にしてあげる。『オークバレット』」
百香は男の頭を打ち抜き確実に始末する。
「暗殺者なんて仕事していて助かると思ったのかしら。
自分は命乞いするターゲットを殺してきたくせに。」
百香は吐き捨てる様に小さく呟きながらテントに急ぎ戻っていった。
一方、百香の戦いを見て、ジーニアスとミランダは震えていた。
「あれがモモカさんの力、すごい。やっぱりモニカ嬢とは別物なんだ。」
「ええ、そうね。あんなに人が簡単に殺せちゃうのね。」
だが震えの内容が違ったようだ。
ジーニアスは百香の力の凄さに驚き、関心しているのに対して、ミランダは百香の行為に恐ろしさを感じていた。
そこに百香が戻ってきたので列人が声を掛ける。
「お疲れ、百香。首尾は上々ってところだな。」
「ええ、何人か生け捕りにできたわ。それから指揮官がこっちに向かっているわ。
あと数分で到着しそう。私が迎え撃つから寝たふりしてて。」
「了解、亜美ちゃん。テントに入るよ。」
「うん、わかった。」
「おい、百香。あまり無茶をするなよ。」
「ええ、わかってるわ。
あ、ジーニアス様、ミランダ様、ちょっと話をしてもいいかしら。」
「うん、いいよ。」
「・・・」
軽く声を掛け合った後、列人と亜美はテントに戻っていき、外には百香、ジーニアス、ミランダだけとなった。
「2人とも、私の戦いを見てどうだった?」
「凄かったよ。見たこともない強力な魔法が敵をどんどん倒していって、しかも全て魔力が全く流れていない。どういう理屈であれを使っているのかな?」
「・・・・」
興奮するジーニアスと黙り込むミランダ。
そんな2人に百香は優しく微笑みながら語り掛ける。
先ほど襲撃者に見せた死神の笑みではなく、本当に優しく慈愛に満ちた笑みだ。
「ねえ、ミランダ様。怒らないから正直に答えて。私の事が怖い?」
百香の問いにミランダが震えながら答える。
「・・・はい、怖いです。・・・とても。
私達を守る為にやっている事なのに。
あんなに簡単に人を殺して行くのがとても怖いです。
私が知っているモニカ様はそんな事ができる人じゃなかった。
アメリアへの殺人未遂疑惑だって絶対に間違いだと思ってます。
でもモモカさんはモニカ様の姿で簡単に人を殺す。
・・・それがとても恐ろしいです。」
その今にも泣き出しそうなミランダの頭を撫でながら百香は優しく声を掛ける。
「ごめんね、怖い思いをさせて。そうよね。
自分の知っている人がある日突然別人になってその人がやらないような恐ろしい行為を行ったら、誰だって怖いよね。」
「違うんです、私は。」
「ううん、いいの。あなたが思っている事は自然な事なんだから。
でも私は桃梨百香なの。あなたの知っているモニカ=ローゼスベルクとは別人なの。」
「嫌です。私はモニカ様もモモカさんも無くしたくありません。
そんな事言わないでください。」
百香の突き放すような言葉にミランダは駄々っ子の様に反論する。
それに対して百香は困った様な顔で返事をする。
「う~ん、私はどうしたらいいかしら。」
「私はあの方に笑っていて欲しかったんです。
無気力に見えて実はただのさみしがり屋で、それをうまく表現できなくてどんどん一人になっていく不器用なあの方に。
なんでいなくなってから、モモカさんがレットさん達と笑っているのを見てからそんな事に気づいたんだろう。
なんであの方がそばにいる時にそれができなかったんだろう。
そうしたらモニカ様の姿で人を殺すモモカさんを見ずに済んだかも知れないのに。」
「そうね、今の言葉をモニカに伝えられていれば、必死になって修道院送りに抵抗したかもね。」
「うぅうぅ、私、」
「ありがとう。ミランダ様。モニカは一人じゃなかったわ。」
泣き出すミランダを百香は優しく宥めながら更に2人に声を掛ける。
「もう少し話がしたかったけど、お客さんが来たみたいだから行くわね。
それから、ジーニアス様。」
「なんだい?」
「モニカからの伝言です。
『学園』では楽しい事は少なかったけど、あなたとの魔法研究は数少ない『学園』での楽しみの一つだった。
との事です。」
それを聞いた途端、ジーニアスの瞳から光る物が流れて嗚咽混じりに一言呟く。
「・・・そんなの・・・・僕もだよ。」
振り返って2人を一目見た後、百香は再び前を見て告げる。
「さあ、2人ともテントに戻って。ここからはさっき以上の地獄が待っているから。」
百香は2人をテントに誘導する。
これからモニカの姿で地獄を生み出す自分を2人に見せない為に。
後半へ続きます。
百香の戦闘時の性格は結構ダーク寄りなので描写がキツくなる事があると思います。
前書きの内容が本当に今更すぎて申し訳ありません。
今後は戦闘回でそういう描写があるときは毎回注意書きをしていこうと思います。
ただ今作が初投稿故、加減がイマイチわかっていません。
これはきつすぎるとかR18Gだろうとか思ったら遠慮なく仰ってください。
取り敢えずの基準は『北○の拳』でしょうか。




