065_食べ物の恨みは怖いです
今回は『学園』からの刺客ジーニアスが列人と百香の正体に迫ります。
065_食べ物の恨みは怖いです
ジーニアスは考えていた。
アメリアが元気にしている事に安心する反面、確認しないといけない事も残っていた。
考えなくてはならないのは2点、
レットの為人、つまりナタル嬢の言う通り極悪人であるか否か。
次にフードの女性、モモカの正体。モモカ=モニカ嬢であるか否か。
レットが極悪人であった場合、近くにいるアメリアが危険だ。
フードをかぶった女性、モモカがモニカ嬢であれば同様に危険だ。
レットの正体については何が何でも確認する必要がある。
次にモモカ=モニカ嬢の可能性。正直これはよくわからない。
モモカとモニカ嬢の為人があまりにかけ離れている。
現状では同一人物とは考えにくい。しかしレットが極悪人の場合、何らかの理由でそういう演技を強要されている可能性も捨てきれない。
またナタル嬢の言い分を信じるならこのモモカも極悪人だが、この女性はモニカ嬢と同一人物ならモニカ嬢が極悪人ということになる。
可能性としては
・レットとモモカが両方極悪人でモモカとモニカ嬢は別人
・レットのみ極悪人
・レットとモモカは両方善良な市民だがモモカとモニカ嬢は別人
・レットとモモカは両方善良な市民でかつモモカとモニカ嬢が同一人物
・レットとモモカが極悪人でかつモモカとモニカ嬢が同一人物
が考えられるが、今持っている情報で結論を出すのはいささか早計だ。
現状の情報ではレット達が極悪人には見えないが確証が欲しい。
まずモモカの正体を確認し、そこからレットの為人を見定めるのが一番だろう。
そう結論付けジーニアスは行動を開始する。
「ところでレットさん、よろしいでしょうか。」
「はい、ジーニアス様、なんなりと。」
「すみません、レットさん。話しやすい様にしていただいて大丈夫ですよ。
見たところあなたの方が年上のようですし、アメリアに話す感じで。」
「ああ、そう。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。ジーニアス君」
「はい、結構です。では早速なのですが、先日この街で貴族の女性とあなたが口論になったと言う噂があったのですが本当ですか?」
「ちっ、あの乞食。どこでもかしこでも俺の悪口風潮しやがって。」
「こら、列人。その言い方だとあなたが100%悪人よ。
相手は事情を知らないんだから気をつけなさい。」
「おっと、すまない。百香。」
ジーニアスの質問に対して悪態をつく列人を百香が窘める。
ジーニアスは気にせず、質問を続ける。
「口論の詳細についてはわかりませんが、そこで気になる情報があって、もしよければお伺いしたかったのです。」
「気になる情報とは?」
「そちらのモモカさんが私達の知人にそっくりだという情報です。
もしよろしければそのローブの下を見せて頂けませんか。」
(さあ、ここでどう動くかで『エレメンタルズのレット』の為人がわかるはず。)
ジーニアスが仕掛けてくるのに対して、列人は自分達の失敗に気づいた。
あの三下令嬢が百香とモニカがそっくりであると風潮している可能性への警戒を怠っていた事である。
普通は自分の醜聞を人に広める様な真似はしないのだが、あの三下令嬢の事である。
亜美に話した様な嘘八百を『学園』に広げている可能性をもっと考えておくべきだった。
まだ正体を教えるには早すぎると考えていた列人にとってこの状況はいただけない。
列人がなんとかこの場を切り抜ける方法を考えていると、百香が動き出した。
「おい、百香!」
思わず列人が引き止める。
「こうなったらヤケよ。出たとこ勝負と行きましょう。
この2人は亜美ちゃんの友達でモニカの大事な人なんだからきっと大丈夫よ。」
そう言って百香は2人の前に進みローブのフードを外した。
2人が息を呑む音が響く。
「・・・モニカ=ローゼスベルク嬢、なんだね。」
「無事、だったんですね。」
「ええ、ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。」
見間違えるはずがない。フードの下の女性の姿は間違いなくモニカ嬢のものだ。
ジーニアスとミランダの目にはうっすら涙が浮かんでいた。
それは本当に知人の無事にホッとした喜びからだった。
「・・・事情を説明してくれるかな。モニカ嬢。」
「ええ、でもその前にここでは百香と呼んでください。」
「分かりましたわ、モモカさん。」
百香は2人に以下の説明をした。
まず修道院に行く途中暗殺者の襲撃を受け殺されかけた事、
そこを列人に助けてもらった事、
暗殺者から身を隠す為桃梨百香と名乗っている事、
今はハンターチーム_エレメンタルズに所属している事、
亜美は自分の事情を知って助けてくれている事、
暗殺者の大元はおそらく国の中枢にいるため騎士団や『学園』関係者の保護は受けられない事、
暗殺者に襲われた際、不思議な記憶と力を手に入れた事、(ヒーローとか前世とかは伏せて)
「なるほど、言い分はわかったよ。モモカさん。
疑うわけじゃないけどそれって証明できるかな。
できればその不思議な力ってのを知りたい。」
ジーニアスはこの時半信半疑だったが、モモカの言い分が本当なら不思議な力を使えるはずだ。
それを確認できればモモカが言った事は真実であり、レットが極悪人ではない証明にもつながる。
というのは建前で、実際は研究者肌の彼は不思議な力についての興味津々なだけである。
ジーニアスは目を輝かせながら百香に力の使用を促す。
すると百香はおもむろに列人のところまで歩いていき、
「ジーニアス様、魔力の流れをよく見ていてください。」
「ああ、わかったよ。」
「じゃあ、参ります。くたばれ!列人!」
「くはぁ!」
列人の顔面に百香のコークスクリューパンチがめり込み、列人が錐揉み状態で飛び床に沈む。
ジーニアスとミランダは百香のいきなりの奇行に口を開き唖然とするが、フィオと亜美はもう慣れたもので目の前のケーキに夢中である。
百香に殴られて頬に拳の形をつけた列人が百香に詰め寄る。
「テメー!百香、またやりやがったな。」
「うっさいわね、あなた昨日の唐揚げ、自分だけ2つ多く入れたでしょう。」
「うっ、なんでそれを知っている。」
「ちょっと百香お姉さん、もっと静かにやってよ。店の人に迷惑でしょう。」
「はい、ごめんなさい。」
「俺が殴られた事については誰も何も言ってくれないんだな。」
「アルくん、食べ物の恨みは怖いです。」
しょうもない理由で殴った百香と慣れすぎている他の面々にジーニアスとミランダは再び呆然とする。
「じゃあ、ここからが本番ね、『メディスンハーブ』」
百香の手から液体が溢れ出し、それが列人の頬に触れるとたちまち傷が治っていく。
ジーニアスはこの時百香に魔力が流れていない事に気づく。
「すごい、魔力なしで魔法を使うなんて。是非とも研究したい。
『学園』に休学届けを提出しないと。」
「落ち着きなさい。ジーニアス。目的を忘れるんじゃないわよ。」
「ちなみに、今殴る時も肉体強化の術を使ってます。」
「モモカさん、そこのところ詳しく。」
百香の術を見て研究者モードに突入し、当初の目的を忘れるジーニアスと目的の為なんとか話を軌道修正しようとするミランダ。
ミランダとジーニアスはこの時、モニカは別人、『トウリ=モモカ』になったのだな、と確信するのであった。
今回は結構難産でした。
ジーニアスの思考が結構複雑でうまく表現できずに書き直しを繰り返してます。
おかしな点がなければいいのだけど、そう戦々恐々としている筆者です。




