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060_過ぎたるは及ばざるが如し

2話投稿予定

1話目、戦闘回です。


前話に出てきたモンスターを列人が狩ります。

060_過ぎたるは及ばざるが如し


時間を少し遡って健康診断直後。

列人は今回1人で森の最奥までやってきていた。

運動不足解消の為にできるだけ強いモンスターを探していたからだ。

ただし、あまり乱獲すると生態系破壊に繋がる為、できるだけ影響が少ない獲物を選ぶ事にした。


列人がモンスター探索をしていると洞窟を発見、結構深くまで続いていそうだったので、確認することにした。

洞窟を進むと徐々に洞窟内の温度が上がっていくのを感じた。

火山でもないのに異常に温度が高い為、警戒を強める。

こういう異常はモンスターが引き起こしている可能性があるからだ。

警戒しながら少し進むと案の定モンスターの群れがいた。


フレイムリザードがおよそ100体、レッドドラゴンが2体、どうやら番だ。

このレッドドラゴンは産卵期の様だ。でも普通この辺にレッドドラゴンはいない。

こいつらは本来コルト大森林のさらに先のコルト山脈に生息するモンスターだ。

おそらくそちらから来たのだろう。

フレイムリザードはレッドドラゴンと共生関係にあるモンスターだ。

フレイムリザードが周囲の温度を上げ、レッドドラゴンがフレイムリザードを守る。

でもここは森の中だ。それをやられるとこちらはたまったものじゃない。

速やかに排除する必要がある。一応威嚇して追い出すだけというわけにはいかないだろうか。

列人がそう考え、弱めの殺気を飛ばしてみる。

するとモンスターの群れも一斉に殺気立った。

どうやら、威嚇ではなく敵対行動と取られてしまったらしい。

戦闘は避けられなさそうだ。列人は刀を構える。


「こうなったら仕方がない。運動不足解消と行きますか。」


100体のフレイムリザードが一斉に火の玉を吐き出して来る。

普通の人間が見れば逃げ場などないが、列人から見ればわずかに避ける隙間がある。

所詮は野生生物が作戦もなく無秩序の攻撃を放っているだけだ。

どうしても隙間はできる。ただ普通の人間には分からないだけの事。

列人は冷静にその隙間を見極め躱していく。


「あ、そうだ。せっかくだからこのまま回避の訓練をするか。

取り敢えず、1時間だな。それ以上は帰りが遅くなる。」


そう列人が呟いているとレッドドラゴンも攻撃に加わった。

レッドドラゴンの炎はフレイムリザードより格段に大きく、回避の難易度は大幅に上がったが、列人が避けられないレベルではない。


「おお、いいねぇ。これで少しは訓練になりそうだ。」


攻撃を躱す事約10分、攻撃をしていたモンスター側が疲れて来た様だ。

攻撃の手が明らかに鈍くなっている。

これ以上は訓練にならないと判断した列人は攻撃に転じる事にした。


「では、次はこちらからだ。くらえ!」


列人はレッドドラゴンの首に通常の斬撃で刀を振るう。

ここである異変に列人が気づいた。刀が折れたのである。

この洞窟の高温で刀の強度が落ちた上に、レッドドラゴンの鱗が硬すぎた為、刀が耐え切れなかったのだろう。

列人はもう少し訓練をしたかったが武器を失っては仕方がない。


列人は全力でモンスターの群れを殲滅する事にした。


列人は炎の刀を発現させる。刀は薄く、強く、熱量を圧縮する事を意識する。

このモンスターの群れは火耐性が高いため、それなりに熱量を持たせる必要がある。

今回の目標はモンスター全てを首への一撃で始末し、それでいて刀の接触面以外は焼かない事。

精密な動作と霊力制御の訓練である。方針を決めた列人が動き出す。


まず、群れの中心に飛び込みすれ違いざまに数匹にフレイムリザードの首を落とす。

攻撃後に隙ができると見越したモンスター達の攻撃が列人に向かって殺到する。


『赤刀連閃』

無数の斬撃を放ち、モンスターの攻撃を全て切り裂いていく。


その後更に移動し、数匹のモンスターを屠る。

飛び道具では埓があかないと判断したモンスターは爪や牙、体当たりで攻撃しようとする。


『陽炎返し』

モンスターの近接攻撃を全て見切った列人が攻撃を紙一重ですり抜け、すれ違いざまに首を落としていく。


半数が切られた地点で状況の不利を察したモンスターの群れは、フレイムリザード総員での突撃を敢行する。

さすがに物量が多く列人も空中に退避するしかない。

そこへ待ち構えていたとばかりレッドドラゴンのブレスが飛来する。


だが、そんな事は列人も織り込み済みである。

列人は霊力で足場を作り、横に飛ぶことで回避、所謂二段ジャンプである。

さすがにこれにはモンスター側も驚いた様だ。


「ふ、所詮は獣。人間様の技術と知恵には勝てまい。」


等と列人は勝ち誇っているが、普通人間は二段ジャンプはしないし、モンスターが驚くのは当たり前である。

この辺が非常識と言われる所以である。


『赤刀連閃』

着地した列人は再び無数の斬撃放ち近場のフレイムリザードを次々に切り裂いていく。

全て正確に確実に首だけを狙って。あっという間に100体いたフレイムリザードが姿を消す。

残るはレッドドラゴン2体のみ。


レッドドラゴンは2体同時に突撃してくる。

先ほどの攻防で飛び道具は無意味と判断したからだろう。

普通であれば大柄な体の突進を受けようものならば、避ける事もできず蹂躙されるか、避けたとしても大幅に移動しないと行けない為、反撃が間に合わずその内力尽きる。

だが、列人はあろう事か左右から迫ってくるレッドドラゴンの2体の中間地点まで前進する。

こうする事で同士打ちを恐れ、物量に任せた突進ができなくなる。

しかし接近すれば巨体から放たれる爪や牙、踏みつけが待っている。

右のレッドドラゴンが爪で襲いかかってきた所を列人はジャンプで躱し、そのまま腕づたいに首元まで近づく。


『赤刀一閃』

超高温に圧縮された炎の刀がレッドドラゴンの首へと滑り込みそれを落とす。


怒り狂ったもう1体のレッドドラゴンがその場でがむしゃらに暴れる。

だが、ただ闇雲に暴れている為、隙が多く足元がお留守だ。

それを見逃す列人ではない。素早く足元に入り込み最後の技を放つ。


『日輪炎舞』

列人の身体が縦回転しながら飛び上がり、レッドドラゴンの首元へと吸い込まれ、一瞬で切り落とす。

そしてこの場で息をしているのは列人だけになった。


モンスターを殲滅した列人はあることに気づいた。

多すぎて素材をもって帰れない。人手が必要だ。そうだ、百香を呼ぼう。

報酬を山分けすれば納得するだろう。早速『メッセージアイリス』を起動。


「こちら列人、百香か。すまないちょっと頼みたいことがある。」


「こちら百香、頼みたいことって何よ。どうせ碌でもないことでしょう。」


(碌でもないこととは失礼な。)


「実は運動がてらモンスター狩りをしてたんだが討伐した素材が多すぎて運べなくなったんだ。

悪いけどこっちに来てソリを作って欲しいんだ。場所は『メッセージアイリス』でわかるだろう。」


「・・・列人、本当は聞きたくないんだけど、何を狩ったの?」


「ああ、レッドドラゴン2匹とフレイムリザード100匹。

今回は炎耐性を貫通する熱量に挑戦してみた。」


(まあ、どちらかというと熱量の精密操作だがその辺は端折っても問題ないだろう。)


「モモカ、替われ。」


「・・・はい、どうぞ。」


(遠くで誰かの声がする。バクラだろうか?)


「おい!アル!テメーふざけんなよ!またギルド職員を過労死させる気か!

だいたい焼け焦げたレッドドラゴンとか売り捌く時にどう説明するんだ。」


(あ、バクラがなんかご立腹だ。

もしかしてさっきの説明でレッドドラゴンが黒焦げだと思ったか。

失敗したな。ちゃんと説明するか。)


「ああ、バクラか。大丈夫だ、炎で焼いたって言っても首の皮だけだ。

そこ以外は焼けてないから素材の状態は良好だぞ。」


(良し、これで大丈夫だろう。でも過労死ってなんだろう?)


「そういうことを言ってるんじゃねえ。どこにレッドドラゴンを焼ける炎使いがいるってんだよ。

少しは自分の非常識さを自覚しろ!」


「そう言われてもここにいるわけで。」


「知ってるんだよ!こんな馬鹿な事が出来るのはお前だけだってことくらい!

帰ったら説教だからな。覚悟しておけよ!」


バクラからの通信が切れる。


(ますますわからん。本当に何を怒っているんだ。

過労死って言っていたし、もしかして多すぎた。職員への負担を気にしている。

・・・・やばい、どうしよう。取り敢えず少しでも素材の処理をして負担を軽くしておこう。

そうしないとマジで死ぬほど説教される。)

列人は冷や汗を流しながら、百香達が来るまでいそいそと素材の処理を行うのであった。


列人の呼び出しを受けて目的地に到着した百香と亜美は愕然とした。

本当にフレイムリザード100体、レッドドラゴン2体が首だけを切られて全滅している。

列人のあまりの非常識な技量をまざまざと見せつけられたからだ。

加えてこれから自分達が行わなければいけない作業の大変さにも嫌気が差してきた。

最初に声を上げたのは百香である。


「ちょっと!列人!バクラさんじゃないけど、ふざけんじゃないわよ!

これ全部持って行く気なの!総重量何キロあると思ってんのよ!」


「ああ、フレイムリザードが1体100キロくらいだからだいたい10トンで、レッドドラゴンが2トンくらいだから4トン、合計14トンってとこだな。」


「・・・・14トンって、単位がキロじゃなくてトンだし。

列人お兄さん、やっぱり色々おかしいよ。」


「あ、亜美ちゃんも来てくれたのか、運んでくれるの手伝ってくれたら運んだ分だけ報酬山分けするけどどう?」


「やります。やった。家族への仕送りが増やせる。」


亜美は『学園』に通う傍らハンター稼業で家族に仕送りをするとても家族孝行な子だった。


「ああ、亜美ちゃんまじでいい子だな。

おじさん報酬サービスしちゃうよ。」


「え、本当。お兄さん。ありがとう。」


「亜美ちゃん、騙されちゃダメよ。14トンよ、14トン。

常識的に考えて無理でしょう。」


「いや、ソリさえあれば俺1人でもいけるぞ。」


「はあ!あなたマジでふざけてんの!」


「心配するなって。百香にもちゃんと山分けするから。」


「金の話してるんじゃないわよ。常識で考えなさい。」


「百香お姉さん。非常識な仕事だからきっと報酬は弾んでくれるよ。」


「亜美ちゃん、お願い。そっち側に行かないで。」


非常識な列人と目が¥マークになっている亜美に百香は疲れ果てながらソリを出し、帰り道の護衛を勤めるのである。(意地でも荷物は持たない)


ちなみに荷物配分は亜美がレッドドラゴン2体を担当し4トン、残りが列人で10トンである。

傍から見たら亜美も十分ゴリラである。


列人達は村に戻ってから即ギルドに直行した。

途中ドラゴン2体を引っ張る少女とオオトカゲ100体を引っ張る男に村人が唖然としていたが、通り過ぎると普段の作業に戻るあたり、村人も相当に飼い慣らされている。


ギルドに到着後、フィオが手配したギルド解体チームの精鋭達が待ち構えており、てきぱきと作業を始める。

既に血抜き等の下準備はしてあるため、作業自体はそれほど大変ではないがなにせ数が多い。

急いで処理しないと素材が傷んでしまう。

しばらく徹夜を覚悟する解体チームの面々である。

これは余談だがコル村解体チームの給料は他の村の10倍以上と言われている。


その後、列人はマスター室に連行され、バクラの説教を受ける事になる。

説教の内容は、一度に量が多すぎて解体チームが死ぬとか、

販路確保の為事務処理が殺人的に増えるとか、(ほぼフィオに丸投げする予定)

一度に乱獲すると生態系がぶっ壊れるとか、

炎耐性MAXのレッドドラゴンを焼き殺すと列人が強力な炎能力者だと疑われるとか、(既に手遅れだと思うが一応)

列人のハンターランクをBクラスに留めて置くのが難しくなるとか、

おおよそそんな内容である。


列人が未だにBランクなのはAランク昇格に必須の昇格試験を尽くぶっちぎっているからである。

しかしそうなると列人に試験を受けさせる様にとマスターであるバクラに圧力が掛かってくる。

いつものらりくらりと躱しているが、これがなかなかに重労働である。


一頻りバクラが説教した後、今回の報酬の話になった。


「まず今回は高額になりすぎる為、すぐには払えん。

素材を売りに出して売れたら順次報酬を支払う形になる。

希望があれば手付金は払うつもりだ。」


「誰か、手付金いる?」


「いえ、急ぐ必要はないわ。」


「私もこないだの5000万があるし、急がなくてもいいかな。」


「そうか、でも契約したってことで少額だけ振り込ませてもらう。

次にその時の報酬の分配比率をこの場できっちり決めて、契約書を作ってもらう。

今回は貢献度がレットと他2人では違いすぎる。

きっちり差をつけないとギルドとしても示しが付かないからな。

少なくともレットは半分以上、できれば8割もっていってほしい。」


バクラとしては当然の処置であるが、列人は少し不満の様だ。

自分は別に金に困ってないし、むしろ百香と亜美の方がお金が必要だ。

それに亜美には報酬を弾むと約束した。

できれば3等分したかったがバクラにそう言われては仕方がない。

ちなみに今は仕事中なので、バクラはレット呼びしている。


「そうか、じゃあ俺が勝手に決めるぞ。

まず俺が5割、亜美ちゃんが3割、百香が2割でどうだ。

あと、素材の一部をゲオルグ先生に渡したい。

今回の健康診断とコルト病対策の報酬、今後の健康診断の依頼料としてだ。」


「私は別にいいけど、亜美ちゃんはどう?」


「私そんなにもらっていいの。それになんで百香お姉さんと差をつけたの?」


「俺は別に金に困ってないからそんなにいらん。貯金だけあっても経済に悪影響だ。

それから亜美ちゃんには報酬を弾むって約束したし、百香の奴は頑なに荷物引っ張るの拒否したからな。その辺は完璧に気分だ。」


「おいレット、本当にいいのか。ゲオルグ先生への報酬を差し引いても総額で10億超えるぞ。」


「ああ、別に構わないぞ。」


「・・・・へ!10億・・・てことは私の取り分って3億・・・・」


「あ!ちょっと亜美ちゃんしっかりして。ゲオルグ先生、大変!亜美ちゃんが白目剥いてる。」


「落ち着けモモカ、ゲオルグ先生は今ここにはいない。取り敢えずアミは寝かせとけ。」


亜美があまりの金額に卒倒したことにより騒がしくなってしまったが、契約書を作りこの件は無事に話がついた。

余談だが、最後にサインをした亜美の文字だけ他に比べて異常に震えていたという。

やったね亜美ちゃん。億万長者だよ。

いきなり大きなお金を渡されても小市民には荷が重いと思うんですよね。

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