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005_食事を作ろう

005_食事を作ろう


百香が列人の家に居候になることが決まり、その後すぐに晩ご飯となった。

この世界では働かざるもの食うべからずである。


当然百香も手伝わされる事になるのだが、ここの文明レベルは中世である。

炊飯器もガスコンロも電子レンジも存在しない。

22世紀の文明にどっぷり浸かった彼らが料理なんてできるのか?

そういう疑問を持つ者もいるだろう。

確かに22世紀の一般人は薪や釜での調理は普通できない。


しかし彼らはヒーローである。

むしろ道具がなくても火を起こし、刃物がなくても食材を捌かなくてはならない状況に陥る事だってある。

そのため、彼らのサバイバル能力は異常に高い。

道具がなければ、身体能力や術で代用するし、そのための訓練も受け、実践も行っている。


「アル、竈に火を入れてくれる。」


「ああ、母さん。今やるよ。」


列人は竈に術で種火を付ける。

エレメンタルレッドは炎の刀使いであり、列人は変身しなくても火の術を使う事ができる。


「百香、この薪少し生っぽいけど乾かせるか?」


「やってみる。」


食材をきざんでいた百香が薪を受け取る。

エレメンタルピンクは植物使いであり、霊力を使って薪から水分を抜く事だってできる。


ちなみに霊力とはヒーローが術を使う為に利用するエネルギーとでも思ってもらえばいい。

この世界には魔法があり魔力があるが、それとは別の原理のエネルギーである。

この世界の魔術師が列人の炎を見たら、魔力のない炎だと思うだろう。


ちなみに百香の転生先であるモニカも土系統の魔術師なのだが、修道院送りの件で魔封じのチョーカーを付けられており、外すことができない。


その為、術が使えるかどうか、百香はイマイチ自信がなかったのだが、やってみると特に問題なくできた。


「お、できたみたいだな。」


「問題ないみたいね。はいどうぞ。」


そう言って百香は薪を列人に渡す。

その際霊力で薪を4等分にして燃えやすくしておく。


「あら、モモカちゃんも魔法使いなのね。便利で羨ましいわ。」


「ええ、久しぶりなのでうまくできるか心配だったけど問題なかったみたいです。」


マリアの様な一般人には魔法と術の違いなどわからないし説明もできない。

そこで百香は魔法でやった事にしたのだが、この時マリアはまたいたずらっぽく微笑んでいた。


「ところでアル、モモカちゃんとは街道で初めて会ったのよね?」


「ああ、そうだけど・・・」


「じゃあ、なんでモモカちゃんが魔法を使える事知っているの?」


「・・・帰り道で本人に聞いた。」


「魔法を使うのが久しぶりってことも知ってたみたいだけど?」


「・・・・」


「そういうお年頃なのはわかるけど、内緒事をされるのはお母さん悲しいな。」


このお母さん鋭いなぁと百香は心の中で思わず呟き、列人は沈黙する事でやり過ごそうとしていた。

しかしマリアはそこに追い打ちをかける。


「だいたい、あなた達ね。お互いに迷惑かけても問題ない間柄なんでしょう。

初対面っていうのはさすがに無理があると思わない?」


「・・・・・」×2


確かに、マリアの言う通りだった。

急ごしらえとは言え、自分達の考えた設定のお粗末さにため息をつきたくなる。


「まあ、事情があるんでしょうし、深くは突っ込まないけど困っている事があるなら頼りなさい。私はあなたのお母さんなんだから。」


マリアは列人に向かって優しく語りかける。


「ありがとう。母さん。」


「うん、じゃあご飯にしましょう。お皿並べとくから炒め物仕上げといてね。」


そう言ってマリアはその場を離れた。


「いいお母さんね。」


「ああ、そうだな。」


百香の言葉に列人は僅かに笑みを浮かべているようだった。

その日の晩御飯はとても暖かかった。物理的な熱だけではなく、心の中まで温めてくれる、そんな食事だった。

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