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054_放浪の名医とエレメンタルズリーダー列人

本日2話投稿予定


長らく放置気味になっていたコルト病の話です。

054_放浪の名医とエレメンタルズリーダー列人


フィオが犯罪者であった事が発覚してから2日後、

ゲオルグ医師の発見の報告があった。情報の出処はフィオである。

フィオは懲りもせず検索と称して各地の情報を閲覧しており、バンの街の端末情報でそれを確認した。


フィオの情報によると、ゲオルグ医師はバンの街から10キロ程離れたチル集落という場所で、医療活動に従事しているそうだ。

早速列人、百香、亜美のエレメンタルズ実働部隊でチル集落まで行くことになった。


今回はグレートサイクロン号での出動である。理由は物資の輸送である。

ゲオルグ医師が活動していると言う事は当然病人がいるという事なので、衣食関係の物資や薬が不足している事が予想される為である。

また、今回の件がコルト病である可能性も高いと判断したからだ。


ありったけの食料と布製品、薬及びその材料を積んでグレートサイクロン号は出動する。

動力はもちろん列人である。


「ではこれより、エレメンタルズ出動する。総員位置につけ。」


「え!列人お兄さん。なに、このおっきくてやたら頑丈そうな大八車は!。」


「亜美ちゃん、これはグレートサイクロン号よ。コル村の主要交通機関で動力は列人。

ちなみにこのださい名前は列人の命名ね。」


「百香お姉さん、なんでそんなに冷静に説明できるの!

これは明らかにおかしい奴だよ。ツッコミ放棄しないでよ。」


「それじゃあ、出発するぞ。

今回は荷物を運ばないといけないから通常高速走行で行くぞ。」


「ちなみに通常高速走行は時速100キロね。ちゃんとシートベルトをつけてね。」


「ちょっとやめて、ファンタジーの世界観が壊れるからやめて。」


すっかり慣れてしまった百香とドン引きする亜美の姿が対照的だった。

ここでも常識度の差が見られるが、おそらくはコル村に滞在している期間に反比例して常識度は減るものと考えられる。

じきに亜美の方の常識も磨り減っていくのだろう事は火を見るより明らかである。


そして約30分後、久しぶりの時速100キロの乗り物にへばり気味の亜美ともうすっかり慣れた百香と走ったはずなのに一番元気な列人がチル集落にたどり着いた。

集落の様子はとても静かで閑散としており、集落の中央付近からおそらく炊き出しのためであろう

煙が見えたので、3人はそちらに向かうことにした。


そこはさながら野戦病院のようだった。

100~200人程が床に寝かされているが、看病する側が圧倒的に足りない。

寝かせている布は洗うのが間に合わず衛生的とは言えないし、食事の準備もままならないようだ。

それでも看病する側もされる側も必死に病魔と戦っている。

その野戦病院さながらの光景の奥のほうで今も薬の調合をしている初老の男がいた。

その男に列人が声を掛ける。


「すみません。お忙しい中失礼します。

私達はコル村のハンターチーム_エレメンタルズです。

病気が流行っていると聞き、コル村より物資のお届けに参りました。」


この余りにも丁寧な列人の対応に亜美が目を見開く。

実は列人はヒーローのリーダーとして公式の場に出る事も多かったので、割とTPOは弁えられる。

百香はチームメンバーだった為、特に不思議に思わなかったが、列人のプライベートな部分しか知らない亜美にはとても驚きの光景だったのである。

そんな亜美を無視しながら列人は言葉を続ける。


「それと、もし人員が不足しているようでしたら、これよりエレメンタルズもこの現場を支援させていただきます。」


列人に声を掛けられた男が一旦手を止めて、列人に返事をする。


「エレメンタルズ殿、大変ありがたい申し出ですが、この集落にはその支援に対して報いる術がない。

もし報酬が目的でしたらご期待には添えないと思います。

しかし物資も人員も不足しているのは事実です。

我々が支払える範囲の物資を分けて頂ければ幸いです。」


男は実に誠実な対応をしてきた。

自分は困っていても慈悲に縋るだけではいけない事がよくわかっている。

自分たちができる範囲での最善を考えての判断だったのだろう。

列人の表情が思わず綻ぶ。こういう道理を弁えた人間が好きだからである。

列人は明るい声で男に交渉を持ちかける。


「いえ、金銭での支払いは結構です。

もちろん土地などの財産を渡せとも言いません。

我々が欲しいのは知的財産です。ゲオルグ医師。」


「・・・・知っておいででしたか。私がゲオルグだと。」


男、ゲオルグはわずかに表情を曇らせた。

ゲオルグはただ患者を救いたいだけの根っからの医者なのだが、あまりに腕が良すぎる為、権力者に付け狙われる事がままあったからである。

ゲオルグはエレメンタルズがその権力者と繋がっている可能性について危惧していた。


「そうですね。あなたの名前を知って、接触してくる人間は碌でもない奴が多いですからね。

その辺の懸念も理解しているつもりです。

我々が欲しい知識、それはコルト病についてです。」


ゲオルグが驚きの表情を変えるが列人は構わず続ける。


「ここにいる百香は薬学を修めておりまして、この地方でコルト病が発生する兆候を見つけました。

その範囲にはコル村も含まれており、現在このチル集落で確認されている流行病もコルト病であると推測しております。

我々はコル村を危機に陥れる可能性を持つ病の治療法を求めています。

どうか交渉に応じて頂けないでしょうか。」


列人はゲオルグの誠実さに答えるべくありのままを語る。

ゲオルグが少し考え込み、決意の表情と共に列人に問いかける。


「お尋ねしますが、あなたはエレメンタルズのレット殿ですか。」


「はい、俺が赤坂列人です。」


「そうでしたか。噂とだいぶ違ったものですから偽物ではないかと疑ってしまいました。

あのレット殿なら私は喜んで協力いたします。」


「ありがとうございます。

この状況が落ち着いたらその噂とやらを教えていただいてもよろしいですか。

それと噂の出処も、そいつらあとで締めますので。」


「はは、やはり噂通りの御仁だったようですね。

では、まずは仰る通りこの状況をどうにかしましょう。」


ゲオルグは久しぶりの明るい話題に顔を綻ばせながら今ある窮状の改善に努めるのであった。

最後の方のゲオルグ医師と列人の会話で?ってなった人も多いと思います。

その疑問の答えは次話に書きます。

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