004_ようこそコル村へ
ここからは第三者視点です。
004_ようこそコル村へ
列人と百香がお互いの確認がてら馬鹿話をしている間、一人の少女が現状に絶望した事を除けば特に問題なく目的地である列人の住まう村まで到着した。
「ようこそ、百香。ここが俺の今住んでいるコル村だ。」
「・・・随分のどかな村ね。」
「まあ、田舎だな。22世紀の地球の文明から見たら尚更だな。」
文明レベルは中世といったところだろうか。
その農村なのでぶっちゃけ22世紀の日本と比較したらど田舎もいいところだ。
このコル村についても田舎だけあって、産業は主に農業と畜産である。
後は店舗が数件とハンターギルドが1件といったところか。
この規模の村としては比較的活気があり、住みやすそうな村であると百香は感じた。
これは百香個人の感想であると同時に転生先であるモニカの知識から判断したものである。
百香は馬鹿話をしていた道中にモニカの知識を整理しており、この世界の常識が全くないわけではない。
ただし公爵令嬢の知識である為、百香自身はあまり宛にしていない。
畑には青々とした野菜が実り、牛や羊が放牧されている風景は、都会の喧騒と戦いで疲れたヒーローには一種の憧れを感じさせるものだった。
そんな事を百香が考えていると、一つの家の前で列人が足を止めた。
なんの変哲もない木造の平屋である。
「ついたぞ、百香。ここが俺の家だ。入ってくれ。」
「お邪魔します。」
そう言って家の中に入ると一人の女性はいた。
歳は30代後半といったところか。
優しそうでどことなく今の列人に似ている。
「お帰りなさい、アル。見ない子ね、お友達?」
「ただいま。母さん。その話は後で、今はこいつを休ませてあげたい。」
「あ!ごめんなさい。気が利かなくって。そこに座って、今飲み物を持ってくるから。」
百香は女性に勧められた椅子に座り、小声で列人に話かける。
「ねえ、列人。あの女性は?それからアルってなに?」
「ああ、言ってなかったな。彼女はこの世界での俺の母親でマリア。
アルっていうのはこの世界での俺の名前。正式にはアルフレットだ。
だから、アルでもレットでも俺だとわかる。
呼び方については今まで通り列人でいい。」
「ふぅん、そういうことね。わかったわ。」
「あらあら、アル。その子の事、私にも紹介してくれるかしら。」
百香と列人が話しているとマリアがお茶をもって戻ってきたので、列人がマリアに百香と出会った経緯について話した。
勿論、前世がヒーローだったことや身体が公爵令嬢のものである事は伏せて。
百香は街道を馬車で進んでいた所盗賊に襲われて、たまたまそこに居合わせた列人に助けられたと言うことにした。
名前も桃梨百香で通す事にした。
「そうだったの、大変だったのね。行く宛がないならしばらくうちにいなさい。」
「え!そこまで面倒をかけるわけには」
「母さん、話が早くて助かるよ。そういうわけだから百香、しばらくうちにいろ。」
「ちょっと列人!急に言われてもお母さんが迷惑でしょう!」
「その母さんからOKが出ているんだが・・・母さんその辺はどうなの?」
「この子の事、アルは信頼しているのでしょう。なら問題ないんじゃないかしら。それに・・・・」
百香が遠慮していると、マリアはわずかにいたずらっぽく微笑み、
「私には迷惑かけられないのに、アルには迷惑かけてもいいみたいじゃない?」
「う!」
「そういえばそうだな。百香、お前もう少し俺に遠慮しろよ。」
「うっさいわね!」
こうして百香は列人の家(マリアの家)に世話になることになった。