043_幼馴染は胸の内を語る
本日7話投稿予定
1話目です。
以前書いてみたいと言っていたフィオの列人への思いの原因となるエピソードです。
043_幼馴染は胸の内を語る
宿に戻り、フィオへの説教を一頻り終えたあと、
宿で夕食を済ませその日は休むことにした。
ちなみに部屋割りは列人が一人部屋、百香とフィオが二人部屋である。
百香とフィオは部屋に戻ると早速とばかりに話を始めた。
所謂ガールズトークである。
「ねえ、フィオちゃんって列人のどこが好きなの?」
「え!モモカさん、いきなりですね。恥ずかしいですよ。」
「いや、だって気になるでしょう。あのデリカシー0の列人よ。
そりゃ真面目だし、財力もあるし、基本優しくはあるけど、
問題はすぐ起こすし、常識が人と大分違うし、力こそパワーで物事解決する脳筋よ。
プラスマイナスで言えば、どっこいどっこいじゃない。」
「・・・モモカさん、随分と辛口ですね。
私、モモカさんじゃなかったら怒ってますよ。」
「そうね、フィオちゃんにこんな事言ったら怒るわよね。
でもちゃんと聞いておきたいの。
あいつといるって事はあいつが起こすトラブルに巻き込まれるってことだから。」
ここで百香はガールズトークの雰囲気にそぐわない至極真剣な顔でフィオに問いかける。
それに対してフィオもなにか決心した様な表情で返事をする。
「・・・知ってますか。モモカさん。
私、昔はアルくんの事、大っ嫌いだったんですよ。」
「え!笑えないわね。冗談ってわけじゃなさそうだけど。」
「そうですよね。今の私が昔の自分に会ったらひっぱたいてますよ。
あの頃の私はアルくんに随分と酷い事を言いました。」
「・・・・」
百香は想像がつかなかった。
今のフィオが列人の事をどれほど深く大切に思っているかを知っているからだ。
フィオが列人に酷い事を言うなど有り得ない。
呆然とする百香にフィオが話しかける。
「昔のコル村って酷い状態だったんです。
村の周りはモンスターだらけで、ある時モンスターの群れがやって来て村を襲ったんです。
その時に村を守っていた男の人達を何人も殺されました。
その中にアルくんのお父さんもいました。」
「・・・・・」
「それからしばらく経って、村を守る人がいないのをいいことに悪い人達がたくさん村に入ってきて、普通の村人は外をまともに歩けない状況でした。」
フィオは少し辛そうに話しを続ける。
百香は息を呑んで押し黙る事しかできない。
「でも、それも長くは続かなくって、ある時ぱったりと悪い人達がいなくなって、モンスターも少しずつ減り始めたんです。
原因アルくんでした。多分悪い人達はアルくんが皆殺しにしたんだと思います。
モンスターもアルくんが夥しい数を狩っているのを見ました。」
フィオの表情が見る見る変わり、今にも泣き出しそうになる。
「そんな風に村の為に戦っているアルくんを慕う人が少しずつ増えていったんですけど、私はそんなアルくんが嫌いでした。
当時の私は鈍臭くって、なんの取り柄もないといじけてました。
みんなの輪には入らず1人で本を読んでいる様な子供でした。
そんな私を見かねたアルくんがある日私に声をかけたんです。」
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『どうした?みんなとは遊ばないのか?』
『余計なお世話です。アルフレットさん。ほっといてください。』
『いやな、別に邪魔する気はなかったんだが、本を読むにしてもあんまり楽しそうじゃなかったからな。少し気になってな。』
『あなたは楽しそうでなによりです。
みんなに頼られてさぞ気分がいいでしょうね。
鈍臭くて何もできない私の事なんてほっといてください。』
『いや、厄介事ばかりで楽しいとは思わないが、まあ、やるしかないしな~。それよりお前、本と顔近くないか?』
『なに言ってるんですか?近づけないと見えないでしょう。』
『・・・・フィオ、少し本を貸してくれ。ああ、ありがとう。フィオ、これ読めるか?』
アルくんは私から本を遠ざけて質問しました。
『そんなの読めるわけないじゃないですか。馬鹿にしてるんですか。』
アルくんは少し近づけて同じ質問をした。
『だから見えないって言ってるでしょう。もう本返してください。』
アルくんから本をひったくり、本の続きに目をやる。
するとアルくんが再び質問してくる。
『その距離でしか読めないのか?』
『小さい字を読んでるんですから当たり前じゃないですか。』
『・・・わかった。時間とって悪かったな。じゃあまたな。』
『ふんだ。もう来なくていいですよ。』
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「酷いですよね。
ついこの間に父親を亡くして、それでも村を守る為に必死だったアルくんに『楽しそう、いい気分ですね』ですよ。
本当に最低です。今でも自分が許せません。」
「・・・・」
押し黙る百香を見ずにフィオは話を続ける。
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『フィオ、ちょっといいか。』
『なんですか。もう来なくていいって言ったじゃないですか。』
『まあそう言うな、ちょっと街で見つけた物があってな。
それを試して欲しい。』
『なんですか?これは。』
『眼鏡って言ってな。こうやって付けるんだ。』
『こうですか。・・・・え!どういう事ですか。これは・・・』
『やっぱりな、お前は先天性の近眼だったんだな。
だからうまく物が見えずに他の人と同じ事ができなかったんだ。
しかも生まれつきだから自分でも異常に気づいていない。
完全に見えないわけじゃないから周りもただ鈍臭いで済ませる。』
『・・・・』
『あと訂正、お前は自分の事を何もできないとか言っていたがそうでもないぞ。
その本もこの間読んでた本も恐ろしく難しい本だ。相当頭が良くないと読めない。
それに今の俺の話も理解しているようだし、かなり頭が良いと思う。
そのまま長所を伸ばせば、将来きっと偉くなれるぞ。』
『・・・・』
『それじゃあ、邪魔したな。』
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「アルくん、私が鈍臭いって言われていた理由を解決した上に私を励ましてくれたんです。
あんなに酷い事を言った私にですよ。」
「なんていうか。列人らしいわね。」
「しかもその後、覚悟を決めて酷いことを言った事を謝りにいったらなんて言ったと思います。」
「「え!そんな事言われたっけ?」」
この時百香とフィオの言葉がハモった。
「忘れてるんですよ。あれだけの事を言われてもなんとも思ってないんですよ。
その時思ったんです。この人は自分に向けられる好意にも悪意にも恐ろしく鈍感なんだと。
だから自分だけはこの人に100%の好意を向け続けようと決心したんです。
決心した瞬間に私はアルくんにプロポーズしました。
『アルくんのお嫁さんにしてください。』ってそしたらアルくんも『ああ、うん。』
みたいな感じでOKしてくれたんです。
もちろん、アルくんの優しいところは好きですし、見た目もかっこいいですし・・・・」
重い話から一転フィオはノロケ話を始めた。
この後百香は深夜2時すぎまでフィオのノロケを聞かされるハメになった。
おかげで次の日2人は寝不足だった。
ちなみにこの時列人はフィオの憎まれ口も子供故の悪意の無い物として処理していました。
プロポーズも同様です。
フィオの言う通り、列人は自分への好意についても悪意についても鈍感ですが、敵意や害意については恐ろしく敏感です。




