4/321

003_情報共有

百香視点です。

003_情報共有

「桃梨百香、だって？」

「エレメンタルズ？赤坂列人？なの？」

青年は呆然としながら聞き返す。

私もおそらく似た様な表情をしているだろう。

思わず聞き返した。

それはそうだろう。だって元々列人は黒髪、やや赤の入った黒目。

今目の前にいる青年より少しだけ背が高く、少しだけ筋肉質。

ようするに別人なのである。

しかしあの刀技とエレメンタルズと名乗った事、自分が転生している事から推測するとあれが列人の転生体であるのはほぼ間違いないだろう。

問題は自分の方である。

元々の百香の姿は、腰まで長さがある黒髪に、切れ長の黒目、スレンダーと言ってもいい健康的に引き締まった体格でやや長身だったのに対して、転生先であるモニカは金髪、大きな青目、華奢で巨乳とやはり別人である。

自分が『桃梨百香』である事を手っ取り早く証明する方法が思い浮かばない。

エレメンタルピンクである事や仲間の事を時間をかけて話せば納得するだろうが襲われた直後だからその時間が惜しい。

そんな事を考えていると

「君は百香？と言うことだが確認の為、少し質問をしてもいいか？

あとここは安全じゃないから歩きながらで構わないか？」

「ええ、いいわ。」

と言いながら列人が歩き始めたので、私も返事をしながらついていった。

「ひとまずだが、これから俺の住んでいる村まで行く。

では質問だが、百香、君の所属及びヒーロー名は？」

「日本ヒーロー連合_エレメンタルズ所属、エレメンタルピンク」

「俺、赤坂列人のヒーロー名は？」

「エレメンタルレッド」

「エレメンタルズの他の仲間の名前及びヒーロー名は？」

「エレメンタルブルー　青葉総司（あおばそうし）

エレメンタルイエロー　鉄光太郎（くろがねこうたろう）

エレメンタルホワイト　白井百合（しらいゆり）」

「よし、では最後の質問だ。俺達共通の敵は？」

「え？怪人の事？」

「いや、それはヒーローの敵だ。個人的な俺達の敵だ。」

私は一瞬なんのことかわからなかったが、列人の視線が私のある一点に向いた時ピンときた。

その瞬間、私は自分の表情が抜け落ちるのを感じた。

「・・・・巨乳・・・・」

そう、私とこの男の共通の敵。それは巨乳である。

尚、誤解がない様に言っておくが、別に巨乳の女性が嫌いなわけではない。

身体的特徴など本人が変えられるものでもないし、どうしようもない事だ。

ただ、女性の乳房というものは赤ん坊に授乳する為のものであり、必要以上に大きくある必要はないと思っているだけである。

にも関わらず、大きい事を尊び、小さいことを卑下する様な風潮が許せないのである。

実際デカくても邪魔なだけだと思う。(ちなみに元々の百香のサイズはBである)

列人についても同じ様な意見なのだが、そのことを男仲間と話した時に村八分的な目にあった事から、巨乳好きの男の事も敵だと思っている。

ヒーローは常に死と隣り合わせの過酷な仕事である為、割と戦闘以外ではふざけている事が多いのである。

蛇足ではあるが、ブルーこと総司は巨乳好きでホワイトこと百合はFである。

現在百香の転生先であるモニカのサイズはEからFといったところだろうか。

つまり、百香は自分が敵の仲間入りをした事に絶望しているのである。

「ああ、お前は間違えなく百香だ。」

いつの間にか百香を君ではなく、お前と呼んでいることから、列人が（モニカ＝百香）であると認識したと確信する百香であった。