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032_閑話_騎士団長は出会ってしまった

本日4話目です。


列人とヴィルヘルムの出会いです。

032_閑話_騎士団長は出会ってしまった


今から9年前、ヴィルヘルムが30歳になるかならないかの時だ。


彼は当時、とある貴族の子弟と揉めていた。

彼の部下であるその貴族が民間人に暴行を加えたのだが、軽い罰金の刑で済まされた事に異議を唱えたからだ。


結果、小隊長であった彼の隊は、辺境への調査任務を命じられた。

所謂左遷である。赴任先はコル村。

そこで出会ってしまった。アカサカ=レットに。


ヴィルヘルムは志の高い騎士だ。

コル村への異動自体には不満はない。

当時モンスターだらけの魔境だった村に騎士団が不在であった事に心を痛めていた。

だが騎士の全てが彼と同じ志を持っているわけではない。

異動するにあたり、隊の中から志願者を募ったのだが、ついてきたのは当時新兵だったジルのみであった。


調査の内容はある時を境にモンスターの被害が減り、モンスターの素材が少しずつ売りに出される事になった原因の究明である。

別にいい方向に事が進んでいるからいいのではないか?

そう思うものもいるかもしれない。しかしコル村は犯罪集団の巣窟でもあった。

どこぞの犯罪者が資金稼ぎの為にモンスター狩りをしていれば一大事だ。

良い事でも悪い事でも原因究明が必要なのは世の常である。


彼はコル村に向かうにあたり商人の馬車に同乗する事になった。

騎士団は彼らに移動手段すら用意してくれなかったようだ。


「よかったのか?ジル。これから行くのは辺境の危険地帯。

命の保証もない上、出世も無理だぞ。」


「何を言っているんですか?民を守るのが騎士でしょう。

そんな場所にいる民に手を差し伸べなくて何が騎士ですか。」


「おお、騎士のお嬢さん、カッコイイねぇ。

それでこそ騎士の鏡だ。」


「商人さん、茶化さないでください。」


「商人さん、今回は乗せてくれてありがとう。

騎士団のお偉方が経費を渋って途方に暮れていたんだ。」


「かぁ、騎士さんも大変だねぇ。

まあ、私としても護衛ができて助かったがね。」


「商人さんはどうしてわざわざコル村まで?」


「今あそこではモンスターの素材が大量に売りに出されていて、

代わりに食料が不足しているんだよ。

食料を持っていき、素材と交換出来れば儲けも大きい。

危険に見合う価値は十分にあるってわけよ。」


「なるほどですね。ちなみに後ろの大量の麦はそういうわけなんですね。」


「ああ、日持ちする穀物を特に必要としているようで、

今回は麦だが珍しいことに米も欲しいと住民が要望しているんだ。

騎士さんは米の入手方法とか知っているかい。」


「米でしたら、港町で安値で売っていたはずです。」


といった雑談をしながらコル村に向かっていたわけだが、


ヒヒ~ン!!!

うわ~!!!


馬の嘶きと御者の悲鳴が聞こえる。

どうやらモンスターに襲われたようだ。


外に出てみるとオークが5体とハイオークが1体。

ヴィルヘルムはすぐに馬車を降り、臨戦態勢を取る。


「ジル、お前は馬車を守りつつ隙を見て商人さん達を逃がせ。」


「隊長、私も戦います。」


「目的を間違えるな。我々の使命は民を守る事だ。

今お前が優先すべき事はオークの殲滅ではない。」


「く、了解。」


ヴィルヘルムは死を覚悟していた。

当時のヴィルヘルムは普通の騎士である。

1人で相手取れるオークの数はせいぜい3体、しかも今回はハイオークまでいる。

それでも商人達とジルを逃がす事くらいは出来るだろう。

心残りは新兵のジルに自分の跡を託さなくてはいけないことだ。

あまり重荷に感じなければいいが、良くも悪くも責任感が強い新人だ。


オークが一斉にヴィルヘルムに襲いかかってくる。

ヴィルヘルムは剣で牽制しつつ、時間を稼ぐと共に相手を自分に引き付ける。

目的は馬車を逃がすこと、そしてあわよくば自分も逃げること。

しかし多勢に無勢、少しずつヴィルヘルムの体力が奪われていく。

幾ばくか時間は稼いだがまだ馬車は安全圏には到達していない。

ヴィルヘルムは最後の力を振り絞りオークに攻撃。

2体は倒したがそこまでだった。

もうダメかと思ったその時、


「大丈夫かい?騎士さん。もう安心だ。

ハンターチーム『エレメンタルズ』_赤坂列人が助けに来た。」


いつの間にか彼のそばに10歳にもならない様な少年が立っていた。

まずい、少年を逃がさないと。ヴィルヘルムは声を張り上げる。


「少年、逃げろ!ここは危険だ!」


「こんな時でも子供の心配、あなたは本当に騎士なんですね。」


少年は僅かに広角を上げてゆっくり落ち着いた様子でオーク達と対峙する。


少年はオークに瞬く間に接近し、首筋にナイフを突き立てる。

そしてナイフから手を放し、両手をそれぞれ別のオークにかざす。


『火球』

『火球』


少年の手から連続で火の玉が飛び出し、オークを2体を火だるまに変える。

そこに怒り狂ったハイオークが少年に向かって襲いかかる。


『炎槍』


少年の手から巨大な炎の槍が現れ、ハイオークを焼き尽くした。

ものの1分も経たない内にオーク3体とハイオークが全滅した。

これがヴィルヘルムと列人の出会いである。

この頃はまだヴィルヘルムの前ではそれほど無茶はしていませんでした。

(あくまでも列人基準でですが)

この後、付き合いが長くなり段々と打ち解けてからは遠慮なく無茶をしていく様になります。

そしていつしかヴィルヘルムは不憫枠に

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