029_閑話_騎士団長の憂鬱
本日、6話投稿予定
全て短めです。
今日で騎士団の話は一段落させる予定です。
まずは度々名前が出てくる騎士団長_ヴィルヘルムの話です。
029_閑話_騎士団長の憂鬱
時は少し遡って、列人とトーマスが対峙する2日前。
場所は王都の騎士団長執務室。
金の短髪、緑の目で筋肉質な男が難しい顔をして書類を眺めていた。
「ジル補佐官、なんだこの計画書は。」
金髪の男、騎士団長_ヴィルヘルムは一つの出兵計画書を見て頭を抱える。
「・・・こちらは軍務大臣より出された計画書ですね。
モニカ=ローゼスベルク探索の計画書。人数は50名。
場所は・・・・・コル村。これはまずいですね」
薄い紫の混じった長い黒髪、紫の瞳の女性、補佐官のジルも計画書を見て顔色を青くする。
「ああ、非常にまずい。その計画書では食料は現地調達になっている。
300人規模の村に50人の人間が行けば、途端に食料が枯渇するだろう。
しかも隊長は門閥主義者のゼクス侯爵家の坊ちゃんだ。
狩りをしての調達や現地での調理は考えていないだろう。
そうなれば100%奴が出てくる。」
「Bランクハンターとは名ばかりの危険人物。
別名_辺境最強、一般人の皮をかぶった何か、炎の殲滅者、コル村の守護神
ハンターチーム_『エレメンタルズ』のレットことアルフレット。」
国内の裏事情に精通する者にとって、列人は逸話が余りにも多すぎて、二つ名が付けられない状態なのである。
やれ、コル村一帯の犯罪組織とモンスターを壊滅させた。
やれ、コル村の隣町で調子に乗っていた騎士100名をまとめて締めた。
やれ、王都で村へ持ち帰る為のお土産をスられそうになった事に腹を立てて王都内の盗賊組織を片っ端から壊滅させた。
(この時のお土産の中にフィオに持って帰るお菓子があったという。)
数えだしたらキリがない。それを8歳の時から10年間続けている。
普通に正気を疑うレベルの情報だが、これが全て事実だからタチが悪い。
「ジル補佐官、今から1週間私の予定は全てキャンセルだ。
これからコル村に向かう。」
「しかし、よろしいのですか、閣下。
本日は子爵家の招待を受けておりましたが。」
「構わん。国の危機だ。それにああいう手合いはどうにも気に食わん。」
実はこの日、ヴィルヘルムはとある子爵家からお見合いを迫られていた。
ヴィルヘルムは平民から騎士団長に実績だけで上り詰めた叩き上げである。
実力は超一流なのだが、爵位を持たないので貴族からは軽んじられる事が多い。
今回の縁談もヴィルヘルムと娘を結婚させて、騎士団長の影響力を子爵家に取り込もうという思惑によるものである。
40歳手前の男に20歳になったばかりの娘を宛てがおうとするのはどう考えてもおかしい。
その為、ヴィルヘルムも権力者はすこぶる嫌いである。
列人との違いはうまく付き合えるかどうかくらいだろう。
「わかりました、閣下。
スケジュールの調整はこちらでやっておきます。
急ぎ向かってください。」
「いつも世話を掛ける。ジル補佐官。」
「いえ、これが私の仕事です。閣下。」
こうして早馬に乗り、騎士団長は駆けるのだった。
国の平和を守る為、そして必ず降りかかるであろう自分への火の粉を少しでも減らす為に。
ヴィルヘルムは不憫枠です。
今まで散々列人に振り回されているし、これからも振り回されます。




