028_ヒーロー登場(悲報)
サブタイ通り、列人登場です。
028_ヒーロー登場(悲報)
「マスター、貴様どういうつもりだ?」
バクラはいきなりのトーマスの一言に困惑した。
「どういうつもり、とは何かあったのでしょうか?」
(ち!この馬鹿貴族、いきなりなんのつもりだ。)
バクラは心の中で舌打ちをする。
そんなバクラの心境を知ってか知らずかトーマスは凄い剣幕でバクラに詰め寄る。
「とぼけるな。貴様は先ほど食料はないと言ったな。
村はずれの林の中に大量の食料が隠されていたとの報告を受けた。
食料を隠して我々の任務を妨害するつもりか!」
「滅相もない。私はそのような報告は受けておりません。
確認させていただいても構いませんか?」
(そういえばアルの奴、今日は狩りに行くって言っていたな。
さて、どうやって誤魔化したものか?)
バクラは胃が痛くなる思いをしながら、ひとまず時間を稼ぐ事にした。
「ふん、よかろう。ついてくるがいい。」
そう言って肩を怒らせながら歩いていくトーマスにバクラはついていく。
件の林にむかってしばらく歩くと途中でフィオと会った。
「マスター、報告があります。今よろしいでしょうか?」
「フィオ、今は騎士隊長殿の対応をしている最中だ。
悪いがついてきてくれ。報告は歩きながらで。」
「マスター、その女性は?」
「ギルド職員のフィオです。
フィオ、こちら騎士団隊長のトーマス殿だ。」
「フィオです。騎士隊長様、お仕事お疲れ様です。」
「ああ。」
「フィオ、報告を頼む。」
「はい、マスター。レットさんから伝言です。
しばらく森に狩りに行くから何かあったら私を通じて連絡するようにとのことです。
あと林に今日の収穫をおいているので好きに使って構わないそうです。」
「そうか、わかった。報告ご苦労だったな。
もう大丈夫だから下がって構わないぞ。」
「いえ、私はレットさんの専属担当です。
報酬の報告もしないといけませんので、一緒に行きます。」
「そうか、わかったフィオ、同行を許可する。
隊長殿、どうやら林の食料は我がギルドのハンターの成果だったようです。
食料を隠し立てしたわけではない事が分かっていただけたでしょうか。
私は確認をしなくてはいけないので、このまま向かいますが、隊長殿は任務がございましょう。
ここからは別行動の方がよろしいかと存じます。」
(面倒くせぇ、さっさと消え失せろ。馬鹿ボンボンが。)
「ふん、わかったものか。私もこのまま向かう。
村の者の中に反意があるとするならば、任務に支障をきたす恐れがあるからな。」
(ち、こちとら最初っから反意しかないんだよ。マジでうぜぇ。)
苛立つバクラにフィオが小声で話しかける。
「あの、マスター今どういう状況なんですか?」
「隊長殿は村の者が食料を隠したとお疑いなのだ。
俺は現在それに付き合わされている。」
「えっと、もしかして原因は林にあるオークキングですか?」
「ぶふぅ、あの野郎。なんてもの狩って来やがるんだ。」
「それも2体です。」
「・・・・そりゃ疑いたくもなるわな。1人で狩れる代物じゃない。」
「この事、レットさんに伝えておきますか?」
「そうだな、後で頼む。」
現場に到着してすぐにフィオはバクラに一言断りを入れ席を外した。
周りの者達から見えない位置で『メッセージアイリス』を起動する。
「こちら列人、フィオ何かあったのか?」
「あ、アルくん、大変だよ。アルくんが置いていったオークキングの事で、騎士隊長さんとちょっと揉めてるの。」
フィオが詳細を列人に説明する。
「よし、わかった。今からそっちに行く。」
ブチ、『メッセージアイリス』が停止する。
「待って!アルくん。マスターと私で何とかするから来ないで~~。」
もうだめだ。おしまいだ。絶対問題になる。
列人は実力はずば抜けて高いし、危機的状況での判断力も優れている。
しかし、貴族や騎士団といった権力者への対応についてだけは壊滅的だ。
早くこの事をバクラに知らせて対応をしなくては。
足早に現場に戻るフィオであった。
一方、件の林ではトーマスがバクラをまくし立てており、それをバクラが宥めていた。
「見てみろ!これが動かぬ証拠だ。このように巨大なオークキングを1人で仕留められるものか。
よしんば仕留められても運ぶことができまい。
大方村の者全員で仕留めたものを隠していたのだろう。」
確かにトーマスの言うとおりだ。こんなデカ物を1人や2人で運ぶのは普通無理だ。
しかしここで弁明しないわけにはいかない。
「隊長殿、よくご覧下さい。複数人で仕留めたならば無数の傷が付きます。
しかしこのオークは剣により首を切られており、他に傷はございません。
凄腕の者が1人でやったと言ったほうが説明が付きます。
それに移動にはソリを使っておりますので、身体強化の魔法があれば引きずるのも不可能ではございません。
それに今日仕留めたのであれば、報告できないのも無理からぬことです。」
(これで納得してくれ。じゃないとやばいんだよ。お前達が。)
「ふん、ならばそれができると言う者を連れて参れ。
先ほど話していた、そちらのギルドのハンターとやらをな。
これ以上、非協力的な態度を取れば、公務執行妨害が適応されるぞ。」
トーマスがバクラに詰め寄ろうとした時、ちょうどフィオが戻ってきた。
フィオはトーマスに礼をした後、バクラに耳打ちする。
「大変です、マスター。レットさんがこちらに向かってます。」
「なんだと!」
「む、どうしたマスター。問題か?」
「ええ、少々問題が発生しておりまして、出来れば共にここを離れてもらいたいのですが。」
「誤魔化すつもりか!まだこちらの話は終わっていないぞ。」
そうこう言い争っているうちに、バクラと騎士団にとって最悪の事態が訪れた。
「お初にお目に掛かります。騎士隊長殿、そのオークを仕留めた者です。」
バクラは列人の登場を見て、無意識に腹部に手をやる。
「貴様がこれをやったというのか。名はなんという。」
「列人です。騎士隊長殿、私は名乗りました。
あなたも名乗っては如何ですか。礼儀を重んじる騎士様がそんな事もわからないと。」
列人に挑発する意図はこれっぽっちもない。
だがトーマスの怒りの火に油を注ぐには十分だった。
尚、バクラは思考を放棄しており、フィオは後で列人にお説教する事を決意していた。
「ふん、貴様の様な無礼な平民風情に名乗る名などない。」
「ち!ヴィルヘルムの奴、教育がなってないな。
後で締めてやらないと。」
まさかのここにいない騎士団長への飛び火である。
騎士団長_ヴィルヘルムはコル村で問題が起こるといつもこんな感じでとばっちりを受ける。
いつも列人に振り回されているバクラが同情するレベルである。
「貴様、話を聞いているのか。」
「ああ、聞いてるよ。それよりその『平民風情』っていうのやめてくれない。
あなた方騎士はその平民風情が収めた税金で飯食ってんだからさ。
騎士は平民を守り、平民は騎士を敬う、それが正しい在り方でしょうに。」
いつの間にか列人は敬語で話すのをやめていた。
こいつに敬意を払う必要はないと思ったからだ。
その態度がトーマスの怒りに油どころかガソリンを突っ込んだ。
だがトーマスも一応は隊長に任命された男だ。
本来の目的を忘れてはいない。
「貴様はこのオークキングを仕留めてここまで運んだんだな。
ならばこれを運んで見せろ。」
トーマスは列人がオークキングを運べないと考えている。
運べなければ騎士を謀った罪で捕らえるつもりでいた。
しかしそれは誤算だった。
「これね、はいよっと。」
ズズズズズ~~~
列人がソリを引くとオークキングを乗せたそれはスイスイと動き出す。
当然である。本当に列人が一人で仕留めて、一人で運んだのだから。
その横でバクラとフィオがコソコソと内緒話をする。
(フィオ、今までアルの奴が持ってきた物で一番重かったのってなんだったか覚えてるか?)
(私の覚えている限りではボア50体とグレートボア10体、総重量約7トンを引きずってきた時です。
あの時はさすがの私も引きました。そして解体担当の皆さんは泣きました。)
列人は霊力で体を強化すれば10トントラック並の出力が出るのだ。
もはや人間ではないがヒーローでは平均よりやや強いくらいである。
ちなみに百香も強化すれば4トントラック以上の出力は出る。
ソリが引かれるのを見て、唖然としているトーマスに列人が言い放つ。
「これで俺が1人でやったってわかって頂けたかな?騎士隊長殿。」
「・・・・」
「そうだ、確認もせずに初めからマスターを疑った事はきちんと謝罪してくださいね。」
ここで平民からのまさかの謝罪要求。
これに門閥主義者のトーマスは完全に切れた。
尚、しつこいようだが別に列人は煽っているわけではない。
普通にやるべき事を勧めているだけである。
「平民が調子乗るなよ!貴様に決闘を要求する!」
これまた、まさかの騎士隊長からの決闘要求。
どうしてこうなった。
本当にどうしてこうなったんでしょうか?
最後の一行は筆者の心の叫びです。




