025_モニカってどんなやつ?
説明回です。
今回はモニカの事情を書いていこうと思います。
025_モニカってどんなやつ?
ある日の事、列人が唐突にこんな質問を百香にした。
「なあ、百香。お前の体の持ち主、モニカってどんな奴だ?
悪役令嬢って言うからにはやっぱやばい奴なのか?」
これに対して百香は少し顔をしかめる。
「列人、あんまり先入観を持って人の判断をしない事ね。
モニカは別に悪い子じゃないわよ。この世界はゲームと似ているけど別物なんだから。」
「ああ、悪い。今のは俺の失言だったな。それで具体的にはどんな子だったんだ。」
百香の言葉に列人は少しバツが悪そうに謝ると百香はそれに満足し話を進める。
「そうね。この子のあだ名は『無気力令嬢』だったわね。
とにかく感情の起伏が乏しくて喜んだり、怒ったりと言った事をあまり表に出さない子だったの。
それは第一王子_ギルバートと婚約者になった時も同じでそれで周りからはお高く止まっていると思われていたわ。」
「ほう、それが悪役令嬢に仕立て上げられた原因ってわけか。」
「まあ、そうなるんでしょうね。
周りの娘からすれば憧れの王子様と結ばれるのになんとも思ってないって顔されたら面白くないでしょう。
そのせいで一定数の敵を作っていたわ。この子本当に王子については興味なかったみたいだしね。
もっとも王子の方も義務的な付き合いだったみたいだけど。」
「へぇ、まさに王侯貴族の政略結婚の闇って感じだな。
こんな誰も幸せにならない結婚しようなんてどうかしてるよ。」
この列人の発言に百香も思わず頷く。
「そうね。私もそう思うけどやっぱり親の事情なんじゃないかしら。
権力者って結局今ある権力を守ることが大事でしょう。子供にはいい迷惑だけど。」
「そうだな。お前の結婚相手はしっかり自分が納得する人にしろよ。」
「あなたに言われたくないわよ。さっさとフィオちゃんと結婚しなさい。」
こうして言い争うことしばし、お互いに不毛である事を悟り話を戻す。
「いけない、脱線したわね。話を戻すわね。
でも実際のモニカはただ愛情に飢えていただけなのよね。
自分がどれだけ頑張っても褒められるのは見た目と地位についてばかり。
自分が頑張った成果については何も言ってもらえないし、家族も自分に無関心。
しかも表情筋が死んでると言ってもいいほど感情表現が下手だったからなんでも涼しい顔でこなしているように見える。
自分は頑張っているつもりなのに周りは勝手に鼻持ちならない奴扱いしてくる。
正直モニカ自身うんざりしてたんじゃないかしら。」
「なんかそれ聞くと不憫に感じるな。
なんか楽しい事とか友達とか好きな事とかなかったのか?」
「そうね。友達と言っていいかはわからないけど、3人いるわね。モニカが好感を持っている人物が。」
「どんな奴?」
「ジーニアス=ウォルト伯爵子息、ミランダ=コースト伯爵令嬢、アメリアの3人ね。
ちなみにジーニアスとミランダは攻略対象でアメリアはヒロインよ。」
「ちょっと待て、俺の耳がおかしくなったのかな。ミランダは女だろう?なんで攻略対象なんだ?」
「ああ、このゲーム百合ルートつまり女同士が結ばれるルートがあるのよ。
それどころか男同士もくっつけられるわ。」
列人の質問に百香が引き攣った顔で答える。
「百合ちゃんが薦めたゲームだけに百合ルート完備か、ってやかましいわ!
あの子一体何したいんだよ。メンバーにえらいゲーム薦めて!」
「うん、私もそう思う。
このゲーム全ルート攻略に付き合わされてから百合ちゃんの性格更生が私の使命だと思うようになったわ。
志半ばで倒れたのがなんとも無念だけど。」
「俺はお前の口からそんな無念聞きたくなかったよ。」
列人と百香、両名とも息を荒くしてお互いの憤りを叫ぶ。
「いけない、また脱線ね。まずジーニアスからだけどこの子とは一緒に魔法研究をする仲だったの。
それで一緒に同じ課題を悩んだり、成功を喜びあったり、失敗して意見をぶつけ合ったりして、それがとても楽しかったみたいなの。
ジーニアスは研究者肌でモニカの地位とか見た目とかには全く興味がなくて、一緒に研究ができる同志として見てくれていたみたいよ。」
「同じ目的を持った仲間といったところか。この子が欲しかったもののひとつだな。そりゃ好意的にもなるな。」
「次にミランダ。この子は一言で言うと姉御ね。
モニカがうまく感情表現できないで白い目で見られているところを助けてくれたり、問題が起こりそうな時はそっと手を差し伸べてくれたりしてたわ。
モニカはこの子にうまく感謝を伝えられなかった事を後悔しているみたい。」
「なるほど、頼れるお姉さんのような感じだったんだな。この子にとっては数少ない味方だったんだろうな。」
「最後にアメリア。この子は説教好きの可愛い妹ね。
このアメリアは平民なんだけどいろんな事を知っていていろんな人の世話を焼きながらモニカの面倒も見てくれていたみたい。
少し小言も多いけど言っている事は正論だし、言われても嫌な感情は沸かなかったみたいなの。
それどころか自分の為に言ってくれている事がわかったからそれがちょっと嬉しかったみたいね。」
「主人公補正かね。普通このくらいの年の子って自分に説教する人間って嫌いになるものだけど。
いや、公爵令嬢で人付き合いが下手なモニカにとっては自分の為に何か言ってくれる子はむしろプラスなのかな。
まあ、聞いた感じ悪い子じゃなさそうだけど、なんで修道院送りになったの?」
列人のこの質問に百香は少し表情を曇らせ、ポツポツと説明を始める。
「この子が修道院送りになった事件ね。まず発端は『学園』の訓練場にモンスターが入り込んだことなの。
そこでモニカは土属性の大規模攻撃魔法『アースブレイカー』を使って撃退するんだけど近くにアメリアがいたの。
それを見ていたモニカをよく思っていない生徒が『モニカはモンスターもろともアメリアを殺そうとした』って証言したの。
勿論モニカはちゃんと魔法を制御してアメリアに被害が及ばないようにしていたわ。でも裁判では有罪になったの。
『アースブレイカー』って制御がとても難しい魔法なのよ。モニカくらいの能力がなければ普通は人の近くでは使わないわ。」
「それでまんまと濡れ衣を着せられたと、反論はしなかったのか?」
「まずモニカだけど『どうせ誰も信じないだろう』って黙秘ね。面倒くさかったんでしょう。」
「おい、それって罪を認めているようなものだろう。せめて反論しないと裁判じゃ心象悪いだろう。」
「ええ、そんな彼女を見かねたのかジーニアス、ミランダ、アメリアも裁判で証言しようとしたんだけど、
ジーニアス、ミランダはモニカと親しかったと言う理由で証言を却下されたわ。
アメリアは貴族じゃないからそもそも証言する権利がなかったわ。
結果、モニカは有罪。修道院送りが決まったわけ。もっともモニカは『まあいっか』って思ってたみたいだけど。」
百香が話す内容に対して列人は眉間に皺を寄せ、怪訝な表情で質問する。
「なあ、百香。この話少しきな臭くないか?
どう考えてもモニカの有罪ありきで話が進んでいる。
大体おかしいだろう。親しかったから証言できないって。
公平な裁判にしたいのなら親しいものとそうじゃないものの双方から証言を聞くものだ。」
列人の言葉に百香はハッとした表情で答える。
「言われてみればそうね。この裁判、どこかおかしいわ。
そもそも平民とは言え被害者のアメリアが裁判に参加できないのはおかしい。
しかもモニカの敵の証言ばかり採用されていて、物的証拠はなし。
その上で魔封じまでしての修道院送り。この程度では普通魔封じまでしないわ。
いくら記憶が混乱していたとはいえ、なんでこんなことに気付かなかったんだろう。」
「確実に上級貴族か王族が絡んでるな。
あまり疑いたくはないが馬鹿王子も容疑者か?
この情報はバクラと共有すべきだな。
魔封じをする様に仕向けた人間がおそらく今モニカを暗殺しようとしている黒幕だ。」
「でもそうなるとこちらからの調査はかなり危険よ。
情報共有は大切だけど、深入りしないように言っておかないと。」
「そうだな、今のところ暗殺者は大した事ないし、当面は現状維持だな。」
「ええ、確証を得るまではね。でもその時が来たら一気に潰すわよ。」
「そういう事だな。早速バクラの報告だな。」
列人達はこの後すぐにバクラとの情報共有を行った。
今はまだ動けないがいずれ来る反撃の時の為に牙を研ぐ2人であった。
久しぶりの『アナスト』設定です。
ちなみにゲームの方のモニカはガチの悪役です。
これはゲームによく似た異世界と言う事でご理解ください。




