024_赤色は過去を語る
過去編です。
今回は列人視点でお送りします。
フィオが見ていなかったモンスターとの戦いの補完です。
024_赤色は過去を語る
フィオの治療を終えた百香は、列人からも事情を聞く事にした。
場合によってはフィオの治療より厄介だからだ。
列人はドライバー無しの変身を間違いなく行っている。
身体に何かしらの悪影響が出ている可能性がある。
百香は列人と二人になれる様にフィオにお願いした。
「フィオちゃん、悪いんだけど列人と2人になりたいの。
この甲斐性なしにはお説教が必要だから。
こいつはさっさとフィオちゃんと結婚すべきだと思うの。」
「え!まさかモモカさんが本当に私の味方を・・・・
ありがとうございます。すごく心強いです。
アルくんってば照れ屋さんだから。」
「おい、その話いつまで続くんだ。てかマジか。」
「大マジよ。それでこいつを2、3発ぶん殴るかもしれないから
フィオちゃんには席を外して欲しいの。治療はするから。」
「できれば殴るのは無しにして欲しいけど。
わかりました。私はこれで失礼しますね。」
フィオが部屋を去った後、百香から話を始めた。
「本当にいい子ね。フィオちゃんって。」
「ああ、俺には勿体無いと思うがな。」
「結婚出来たらいいと思う?」
「考えた事もない。」
「・・・そう。」
列人は(自分が結婚できると考えた事がない)と言う意味で答えている。
フィオと結婚できるのならそれも悪くないとは思うのだが、それを自分の中で肯定する事ができないのである。
列人にも色々と複雑な事情があるのだ。
「さて、変身した時の話だな。フィオが気絶した所でいいか?」
「ええ、しっかり話しなさい。場合によってはあなたの方がやばいんだから。」
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フィオの採集が終わり、村へ帰ろうとした時にそれは現れた。
体長は30mを超え、強靭な身体を持った獣のモンスター。
あれはおそらく『ベヘモス』だろう。災害指定の化物がどうしてここに。
まずい、フィオを逃がして村に知らせないと。
「グォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「ち、いきなり何だあれは。フィオ下がれ。
いや、村へ逃げろ。」
「なに、あれ、アルくんはどうするの。」
「ここで食い止める。」
「無理だよ、ねぇ、一緒に逃げよう。」
「時間がない。バクラに知らせろ。
俺の言う事を聞く。わかったな。」
フィオ、頼むから言う事を聞いてくれ。
そうこうしている間にベヘモスが俺に向かって飛びかかってくる。
なんとか刀で防御したが、重い衝撃が俺を襲う。完全には防ぎきれなかったようだ。
逃がしきれなかった衝撃が後ろにいたフィオに伝わり、フィオが吹き飛ばされる。
頭の中が真っ白になった。
また失うのか。また守れないのか。また死ぬのか。
百香、総司、百合ちゃん、光太郎さん、また繰り返すのか。
(ドライバーについてなのですが、なくても変身できるのではないのでしょうか?)
(確かにドライバー無しでの変身は可能だが・・・)
そうだ、変身できればこの状況を打開できるかもしれない。
思い出すんだ、変身の感覚を。
『迦具土!力を貸せ!・・・・・変身!!』
その瞬間俺の周りに全てを焼き尽くす様な激しい炎が吹き荒れた。
全身に燃えるような感覚を覚えた。
体に力が漲り、しかし霊力がどんどんスリ減っていくのがわかった。
気づけば、赤いスーツを身に纏っていた。変身は成功した。
でもまずい、霊力の減り方を考えると長くは持たない。
それに全力を出すと間違いなくフィオを巻き込む。
焦りながらフィオの方を見るとフィオは目を覚ましていた。
『フィオ、早く逃げろ!村に行け!』
俺はフィオに向かって叫んだがフィオは動かない。
怯えているように辺りを見回している。
当たり前だ、30m以上の化物と正体不明の真っ赤な変人が壮絶な殺し合いをしているのだ。
俺はフィオからベヘモスを引き剥がすべく『火球』を打ち込む。
中距離用の牽制に便利な術だ。ベヘモスを軽く怯ませることができたが、奴の怒りに触れたのか、
爪を振り下ろして応戦してくる。それを『赤刀』炎を纏わせた刀で受け止め弾き飛ばす。
その衝撃でベヘモスは100mほど後方へ吹き飛ぶ。
『フィオ、早く逃げろ』
「アルくん、どこなの?」
あいつ、こんな時まで俺の心配か。
『いいから逃げろ。』
くそ、言葉が日本語になっているようだ。
こちらの言葉がうまく話せない。
「早く、バクラさんに知らせないと。」
そうフィオは呟いて、村へ走っていった。
よし、それでいい。後はこのデカ物を消し炭にするだけだ。
ベヘモスは100m先から勢いをつけて俺に飛びかかってきた。
『陽炎返し』
回避と攻撃を同時に行う迎撃技。
俺は奴が飛びかかってくる横をすり抜け、右腕を根元から切断する。
『グルルルルァァァ!!』
痛みで呻き声を上げながらそれでも闘志は失わず、俺に牙を突き立ててくる。
『火流双破斬』
その牙を俺の刀から放たれる豪炎を纏った連撃が叩き折る。
奴自身の血と炎で顔をぐしゃぐしゃにしながら後ろ足二本で立ち上がり押しつぶそうとする。
『日輪炎舞』
縦回転し刀を振りながら高さ20m以上にあるベヘモスの左腕に向かって飛び上がる。
そして回転の勢いに炎の推進力が加わりベヘモスの左腕を切断する。
ベヘモスはたまらず倒れ、のたうち回る。
あの巨体が転げ回るだけでも周りに相当被害が出る。
この場で片付けないと村にも影響を及ぼすだろう。
俺は居合の構えを取り、刀に霊力を限界まで溜め込む。
『炎獄桜花咲』
居合の構えから放たれる高速の斬撃とともに、限界まで溜まった霊力の炎を桜の花びらに変えて解き放つ。
いよいよ限界だ。意識が今にも吹き飛びそうだ。
最後の力を振り絞りベヘモスを確認する。
そこには30mの黒く焼け焦げた巨大な物体があった。
なんとか片付ける事が出来たようだ。
気が抜けたのか、この瞬間俺は炎に包まれた状態で意識を手放した。
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「次に目が覚めたのは、フィオが言っていた通り2日後だ。」
「倒れていた時にあなたを包んでいたのって『精霊結界』よね。」
「そうだろうな。」
「と言う事は『迦具土』はフィオちゃんを仲間と認めたってことね。」
「ああ、だからあの程度の火傷で済んだんだろうな。」
『精霊結界』
変身したヒーローが危機に瀕した時に、精霊がヒーローを守る為に張る結界の事。
ヒーローによって様々な形を取るが、列人の場合は炎の形を取り、悪意があるものが触れば焼き尽くし、仲間が触れば火が消える。
フィオの場合、炎に敵意があったが列人を助ける為だった事からわずかな火傷と言う結果になった。
「話してる間にあなたの霊力の流れも調べさせてもらったわ。
ひどいものね。2年も立っているのにまだ僅かに乱れている。
過剰すぎる霊力の使用が原因ね。」
「そうだろうな、まともに術を使える様になるまで、1年掛かったからな。
とは言ってもこっちに転生して以来、全力で戦う事は無かったから、すぐにどうこうと言う事はないだろう。」
「ええ、ただし治す手立てが見つかるまでは変身は禁止。
今の私じゃ治すことはできないわ。
それこそ変身でもしないと。」
「まさに本末転倒、ミイラ取りがミイラになる、だな。」
百香の診断結果が出た。
要約すれば普通にしている分には大丈夫だが変身や過度の霊力の使いすぎは禁止と言うものだ。
この世界において術なしでもトップクラスの実力者に入る列人にとってはさほど難しい事ではないだろう。
そう2人は考えていた。
しかしその思いは、しばらく時が経った後に裏切られる事となるのであった。
変身については本編でも必ずやりたいと思っていますが、かなり先になりそうです。
こいつらをピンチにする方法がなかなか浮かびません。
列人はフィオに対してかなり好意的なようです。
どうしてこうなったかは筆者にもわかりません。
こいつら本当に筆者の意思を無視してよく動きます。
でもそっちの方が面白いと思うのでこいつらには暴走してもらってます。
尚、少し調べてみたのですが初代ウル○ラマンは身長40mだそうです。
如何にベヘモスがヤバいかがわかると思います。




