022_幼馴染が語る赤色(前編)
今回はフィオ視点でお送りします。
前後編に分けています。
022_幼馴染が語る赤色(前編)
フィオの火傷には精霊『火之迦具土神』の霊力が篭っていた。
この事実に百香は焦りを感じる。
『火之迦具土神』は列人の精霊。それは即ち、列人が変身した。
それもドライバー無しの危険な変身を行った事に他ならないからである。
早急に対策を講じる必要があると判断した百香は意を決しフィオに尋ねる。
「ねえ、フィオちゃん。この火傷の原因について聞いてもいい?
特殊な傷みたいだから状況を知っておきたいの。」
「ええっと、もしかして大変な傷だったりしますか?」
「いえ、身体や命に影響があるものではないと思うけど、おかしな魔力が篭っていたから。
治す為に原因を知っておきたいの。」
この時百香は意図的に傷そのものは大したことがない事を強調していた。
『火之迦具土神』は神話では母親である『伊佐波』に火傷を負わせ、それが原因で伊佐波は死んだと言う逸話がある。
つまり『火之迦具土神』には女性殺しの能力があるのだ。
列人の悩みがあまりに深刻だったのはこれに起因するものである。
自分の炎が原因でフィオにもしもの事があったとなれば、列人はおそらく立ち直れないだろう。
「分かりました。
では少し長くなりそうですので場所を移しましょう。
ここからだとハンターギルドがいいですね。」
そう言ってフィオがギルドに向かったので、列人達も歩き出した。
この時列人は終始無言であった。
ギルドに到着したフィオは早速バクラに奥の部屋の使用許可をもらい、飲み物の準備をして列人達に席に着くように促す。
「じゃあ、話すけどアルくんいいよね?」
「・・・ああ、フィオがいいなら。」
列人は少し俯きながら答える。
心なしか声も沈んでるようだ。
「もう!アルくん!この腕の話するといっつも暗くなるんだから。
これは私の勲章なの。褒めてくれるならともかく落ち込まないでください。」
「フィオちゃん、勲章ってどういう・・・」
「これから話すのは私フィオとアルくんの愛と感動の物語なのです!
えっへん!」
「フィオちゃん・・・リアルにえっへんっていう子初めて見たよ。」
そう言ってフィオは小さい胸を張りながら語り始めた。
(フィオ視点)
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私が14歳、アルくんが16歳になったある日の話。
私がギルド職員見習いから正式にギルド職員になるための研修を受けている時の事です。
内容は実際にハンターの仕事を一つ請負、現場を知るというもの。
この時に護衛のハンターが雇われるのですが、それをアルくんが担当してくれました。
「アルくん、今日はよろしくね。
待ちに待ったアルくんとのデート。」
「デートじゃなくて研修だからな。
お前は薬草の採集、俺はお前の護衛。
いいか。俺の指示には従うんだぞ。」
「わかってるって、アルくん。
私アルくんの言う事ならどんなHな事でも受け入れるよ。」
「わかってねえよ。てか最初っからクライマックスすぎてついていけねえ。」
「でも初めてだから優しくしてね。」
「いきなり下ネタぶっ込んでくる研修生は初めてだわ。
まず最初の指示は無駄口を叩くな、だな。」
「もう、アルくんの意地悪。」
「あと、今は仕事中だからちゃんと呼び名で呼ぶ様に。」
「は〜い、分かりました。レットさん。」
「よろしい。じゃあ行くとするか。」
こうして本来であれば薬草を採集して帰るだけの簡単な仕事のはずだったが、ここである事件が発生するのです。
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「・・・ねえ、フィオちゃん。ちょっといいかしら。」
話始めてすぐだというのに、モモカさんが話を中断してきた。
何か変な事でもあったのかな?
「どうしました。モモカさん?」
「火傷の原因を聞いたんだけど、このくだりいるの?」
「はい、必要です。私とアルくんが如何に親密な関係であるかを知るとても重要な話です。」
「・・・ああ、うん、話の腰を折ってごめんなさい。
続けてくれる。できれば火傷したシーンに成る早で。」
「百香、こいつはこういう奴なんだ。気にしたら負けだぞ。」
モモカさんとアルくんは何か納得いかないと言った顔で私に話を促した。
おかしいな。大事な部分なのに。でもよかった。
アルくんさっきよりだいぶ柔らかい雰囲気になった。
「分かりました。では話を続けます。」
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その後、無事目的地まで到着しました。
と言っても途中でゴブリン30体、オーク10体と遭遇し、それをアルくんが瞬殺していたのを無事というかは分かりませんが、とにかく怪我する事なく無事に到着しました。
「薬草ありましたよ。それにしてもレットさんすごいですね。
私が採集している間のモンスターを近づけない様にしてくれていましたよね。
それも私が採集に集中できる様に視界に入らない位置で物音を立てずにです。」
本当は仕事するアルくんのかっこいい姿を見れて狂気乱舞したいのだけど、先ほどアルくんに叱られたのでギルド職員としての仮面を被って控えめにアルくんを褒めることにした。
するとアルくんが驚いた顔をして、
「フィオ、お前って普通の職員っぽく喋れたんだな。」
「もう、レットさん。いくらなんでも失礼ですよ。
普段から見習いとは言え、ギルドでしっかり働いているんですから。」
「いや、俺が見る普段が普段だからな。」
私だってアルくんにしっかりしたところ見せたいのに、ちょっと大人の言動をするとアルくんはこれだ。
全く失礼しちゃう。私が怒って抗議をするとアルくんが謝ってきた。
「ああ、悪い、悪い。今度町にいった時何か甘い物でも買ってくるから勘弁してくれ。」
「むぅ、約束ですよ。」
「じゃあ、薬草も必要量手に入ったようだし、今日は帰るぞ。」
「はい、分かりました。」
私達が採集を終え、村へ帰ろうとした時に事件が起きました。
森の先の山脈の方から巨大な獣のモンスターが現れたのです。
『グォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』
「ち、いきなり何だあれは。フィオ下がれ。いや、村へ逃げろ。」
「なに、あれ、アルくんはどうするの。」
「ここで食い止める。」
「無理だよ、ねぇ、一緒に逃げよう。」
「時間がない。バクラに知らせろ。
俺の言う事を聞く。わかったな。」
無理に決まっている。
だってあのモンスター軽く30m以上あって、牙が2mはあるし、爪だって1mはある。
それに筋肉質で凄く硬そうで、アルくんの刀なんて縫い針より小さく見える。
逃げなきゃ私達は殺されると思いました。
次の瞬間、モンスターはアルくんに飛び込んできました。
アルくんが私を庇ってくれましたがその衝撃で私は気絶しました。
フィオちゃんって元々チョイ役の予定だったんですが、なんだかヒロインやってます。




