017_コル村のとある日常風景
今回はコル村の日常風景が中心です。
017_コル村のとある日常風景
次の日の朝、
朝食を食べながら、列人達はその日の予定について話していた。
「百香、今日は自警団の出勤日だから一緒に来てくれ。」
「ええ、いいけど何をしに行くの?」
「まずは挨拶、それから昨日の件の協力を取り付ける。
後、できれば百香にも自警団に参加して欲しい。」
「自警団って向こうで言う青年団みたいなものでしょう?
それは構わないけど、具体的には何をするの?」
「まず詰所に行って、投書箱の確認。
それから村の見回りが主な仕事かな。
俺は団長と言っても名誉職みたいなもので、通常業務は専属の団員がやっている。
百香は俺の出勤日に補佐みたいな事をして欲しい。」
「OK、把握したわ。それなら問題なさそうね。」
「アル、お弁当の準備できたわよ。団員の皆さんによろしくね。」
そう言ってマリアが列人に大量(10個くらい)のお弁当を渡してきた。
「え、これがお弁当?
ちょっと多くない。私たちが食べるわけじゃないわよね。」
「当たり前だろう。これは団員たちの分、母さんは仕事でお弁当売りしてるんだ。」
列人の家には列人が獲ってきた肉食材やお隣さんと交換した野菜等、割と豊富に食材がある。
マリアはそれを利用して、現金を得る為にお弁当販売をしているのである。
このお弁当は人気が高く、この小さな村で一日50食ほど売れる。
客層は自警団の他に、農作業をする農家の人達、狩りに出かけるハンターが主である。
ちなみに今日のメニューはボア(猪のモンスター)の肉のサンドイッチと野菜のサンドイッチ、卵のサンドイッチに果物が添えられている。
人気の秘密はボリュームの割に値段がお得な事である。
「じゃあ、母さん行ってくるよ。」
「マリアさん、行ってきます。」
「行ってらっしゃい、2人共。」
マリアに出かけの挨拶をして、2人は自警団の詰所に向かう。
その間村の様子を見回るが、今日も平和なものである。
雑談を交えながら歩いているとすぐに自警団の詰所にたどり着いた。
中に入ると3人の男女がテーブルを囲みながら出迎えた。
「おはようございます。団長。」
「ああ、おはよう。」
「おはようございます、皆さん。」
「団長、その子誰?もしかして噂のモモカちゃん?」
「え、まじで、やだぁ、可愛い~、私レベッカ、よろしくね。」
「今から紹介する。どんな噂かは知らんがこいつが百香だ。
百香、こいつらはヨーゼフ、ロバート、レベッカだ。
百香については俺の補佐役をしてもらう予定だ。
後、弁当はいつものところに置いておくぞ。」
弁当を置きに行く為に、列人は一旦その場を離れる。
すると団員が百香を質問責めにする。
転校生が来た学校の様なノリである。
「モモカちゃん、俺ヨーゼフ。
団長とは隣同士で幼馴染だ。
ところで団長の彼女って本当?」
「こら、ヨーゼフ失礼ですよ。
モモカさん、失礼しました。
この馬鹿が言っていることは聞き流してください。
私はロバートです。これからよろしくお願いします。」
「モモカちゃん、肌とかスベスベ、お目目がクリッとしてて可愛い。
どうやったらそうなるの~。」
「百香です。よろしくお願いします。
どうやったらそうなると聞かれてもちょっと困るかな。
ところで村にそんな噂が流れているんですか?
事実無根ですからね。噂を広めたら訴えますよ。」
騒がしく4人で駄弁っていると弁当を置いてきた列人が戻ってきた。
「早速仲良くなったみたいで何よりだ。
ロバート、投書箱の中身はどんな具合だ?」
「ひとつだけあります。
2日前に狩りに行ったハンターからのものですが、街道の北側で大きな何かが破壊される様なすごい音がしたとの事です。
調査されますか?」
「その件について、お前らに話したい事がある。
悪いが他人には聞かれたくない。人払いを頼む。」
「は~い。使用中の札掛けてきま~す。」
レベッカが使用中の札を出す為に席を立ち、その間にロバートがお茶を人数分用意する。
「では、話と言うのはこの百香についてだが・・・」
列人は馬車の事件を説明し、昨日マリアに頼んだ事を団員にも頼んだ。
またこの件に関してはここにいるメンバーとバクラ、マリア、フィオ以外には口外してはいけない事も言い含めた。
それぞれの反応はというと。
「おい、アル。それって盗賊のフリしているけど、多分暗殺者だよな。
それを10人首チョンパとか、物騒すぎんだろう。」
「だんちょーこわ~い。そんなことだから女の子にモテないんですよ~。
せっかく顔の作りはいいのに勿体ないですよ~。」
「おい、馬鹿2人、ふざけない。
団長、馬車の事故現場付近の見回りも追加した方がいいと思うのですが、ハンターの投書がありますのでそれを理由にできます。
国の連中への対応は私の仕事でしょうね。こいつらは役に立たないですから。」
「ああ、気苦労掛けるな。ロバート。
こいつらが役人の対応をしたら絶対にボロがでるからな。
それからヨーゼフ、ここでは団長だ。」
「だんちょー。私の事は無視ですか~。」
「じゃあ、なんで俺達に相談したんだよ、団長。」
「ロバート1人にこの件を任せたら誰がロバートの通常業務フォローするんだよ。
俺もなるべく手伝うつもりだが、いつでもってわけには行かないからな。
それにお前は副長なんだからその辺知らないとまずいだろう。」
「わかってるよ、言ってみただけだ。団長。」
「ううっ・・・皆私のこと無視するよ。モモカちゃん慰めて~」
「はいはい、よしよし、いい子だから黙ろうね。」
よく言えば賑やか、悪く言えば騒がしい自警団の面々に早くも慣れて溶け込んでいる百香であった。
自警団のメンバーとの相談も無事終わり、列人達は村の見回りをしている。
世間話等をしたり、時々村人の仕事を手伝ったりしながら、村の様子を確認するのが自警団の仕事である。
村は至って平和そのもので、暗殺されそうになっている人間と暗殺者を虐殺した人間が近くにいるとはとても思えない。
世間話の中にお年寄りの腰痛等の話がよく出てくるので、百香が霊力で薬草を生やし、それを使った湿布を作る。
効き目は通常の薬草より高く、即効性もあるので村人に大変喜ばれた。
その時に「アルくん、いい嫁さん見つけたね~。」等と言われ、それを否定するのもセットで行われた。
2人が恋人であると言う噂を消す事が今の2人の課題である。
その後はハンターギルドに寄り、フィオにも協力を依頼する事にした。
その時のやりとりはこんな感じだ。
「こんにちは、レットさん。本日はどのようなご要件ですか?」
「こんにちは、フィオ。実はお前に頼みたい事があってきたんだが、ここでは話しづらいから奥の部屋を使いたい。」
「レットさんが内緒話なんて珍しいですね。
今は奥の部屋空いてるから使えますけど。
は!まさか2人きりになって愛の告白。
アルくん、ついに私の気持ちに答えてくれる気になったんですね。」
「違う。大体2人きりってなんだよ。
後ろに百香もいるだろう。
今回頼みたいってのもこいつに関する事。」
「まさか、私を捨ててモモカさんに乗り換えるってことなんですか?
あの時の約束は嘘だったんですか?
それともアルくんのハーレムにモモカさんも加えたいって話ですか?
私は別にそれでも構いませんけど、その場合は平等に愛してくれないとモモカさんが可哀想ですよ。」
「そんなものは作る気はさらさらない。なんだよ、ハーレムって。
それから前も言ったが百香と俺はそんな関係じゃない。」
「そうですよ。こいつと私は全然、全く、これっぽちもそんな関係じゃありませんので、
是非ともこいつと結婚して末永く幸せな家庭を築いてください。」
「モモカさん!」
「おい、勝手なことを言うなよ。」
「大体、列人。この子のどこが不満なのよ。
可愛くて、一途でお嫁さんに持って来いじゃない。」
「モモカさ~ん!!」
「強いて上げれば、この異常に圧が強いところかな。」
「アルく~ん!!」
「さあ、そろそろ話を進めたいので部屋に案内してくれ。」
そうして列人は若干の疲れを感じながらも、フィオに協力を依頼する事ができた。
その時フィオはと言うと、
「やっぱり、お嫁さんである私だけが頼りというわけですね。
アルくん、ドーンと任せてください。」
等と意味不明な供述をしていたと言う。
そうやってその日は一日ヒーロー時代では考えられないほど平和に過ごすことができたのであった。
フィオちゃんが勝手に動きます。
この子の動きは筆者も予測不能です。




