表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/321

014_みんながうまくいく方法

014_みんながうまくいく方法


コンコン

列人がマスター室の扉をノックする。


「列人です、マスター。

呼び出しとの事ですが、入室してもよろしいですか?」


「ああ、レットか。入ってくれ。」


ギルドマスターの返事を受け、列人達は部屋の中に入る。

そこには色黒、筋骨隆々、大柄で強面の見た目はマフィアのボスのような男が座っていた。


「こんばんは、マスター。今日はどういった御用ですか?」


「おい、レット。どうしてそんなに畏まっているんだ。いつもの調子で構わんぞ。」


「ちょっとフィオに怒られてな。じゃあいつもの調子に戻すぞ、バクラ。」


「ああ、どうせまた呼び名の事フィオに言ったんだろう。

それで、そちらのお嬢さんが初めてのチームメンバーか?」


「初めての・・・ですか?」


どうやらエレメンタルズは今までソロ活動だったらしい。

おそらく誰も列人についていけなかったのだろう。


「ああ、自己紹介が遅れてすまない。

このハンターギルドのマスターを務めているバクラと言う者だ。

よろしく頼む。モモカ=トウリさん。」


「初めまして、百香です。

これからお世話になります。

何卒よろしくお願いします。」


「ほう、礼儀正しい子だな。お前とは大違いだな、アル。」


「俺の事はいいだろう。それとここでは列人だ。

登録書の呼び名にそう書いただろう。」


ハンター登録の用紙には呼び名という項目がある。

ニックネームの様なものだが、本名とは別にハンターの正式な名前として扱われる。

素性を隠してハンターを行いたい者は一定数存在する。

ちなみに百香の呼び名はそのままモモカとしているが、身体が貴族のモニカ=ローゼスベルクの為、偽名を使っている様なものと言えなくもない。

ハンターカードにはこの呼び名とランクが表記される。


「お前、何故かそれに拘るよな。

まあいい、レット。単刀直入に聞く。

そのお嬢さんは何者だ?」


そう言いながら、バクラは列人と百香を睨む。


「どういう意味だ。バクラ。

こいつは百香だ、としか答えられないが。」


「とぼけるなよ、レット。わかっているだろう。

ハンターカードには魔力記録の機能が付いている事を。

もっとも権限がないと確認はできないがな。

その子は魔封じをされている。その理由を聞きたい。」


ちなみに百香は現在、魔封じのチョーカーをはめられているが、それが見えない様に首を隠せる服をマリアに借りている為、外見では魔封じを行われているかはわからない。

しかし、ギルドマスター権限でハンターカードの魔力を確認すれば、魔封じをされている事くらいすぐにわかる。

魔封じは主に犯罪者等にされるものの為、これだけでよっぽど訳ありである事がわかる。

その事は列人も予測していたのでそこまで焦らなかった。

適当に奴隷商人に捕まっている所を助けたとでも言うつもりだった。

そんな列人を見ながらバクラは言葉を続ける。


「そういえば、この近くで貴族の馬車が襲われたそうだ。

襲われた馬車の搭乗者は公爵家令嬢のモニカ=ローゼスベルクとその護衛騎士2名と御者。

騎士2名と御者は死体が発見されたが、モニカの方は発見されていない。

またモニカには魔封じがされていたそうだ。」


この言葉にはさすがの列人も少し焦りを感じた。

いずれは知られるとは思っていたが早すぎる。

もし、バクラが国に報告するようであれば、逃亡も視野に入れなくてはならない。

バクラにはハンターギルドのマスターとして、国に報告する義務があり、列人はそれを止める事はできない。

協力を仰げばバクラや村のみんなが犯罪者認定される可能性がある。


「そのお嬢さん、モニカ=ローゼスベルクって事で間違いないな。

お前が護衛達を殺したとは思っていないが事情を話してもらえるな。」


なんとかこの場を切り抜ける方法はないか、必死で考えている列人に対して小声で百香が声を掛ける。


「列人、ここは私に任せてくれるかしら?」


「・・・なにか考えがあるんだな。」


「ええ、任せて。」


百香はそのままバクラに向き直り話を始めた。


「マスターバクラ。確かにあなたのおっしゃる通り、私はモニカ=ローゼスベルクと呼ばれていた者です。

とある事情に私は魔封じをされ、修道院に送られる途中でしたが悪漢に馬車を襲われ、その際にこちらのアルフレット様に救って頂きました。

襲撃者から身を隠すために名を隠しておりましたが、マスターの立場上、国へ報告する必要がございましょう。

その際には私も同行いたしますので、何卒アルフレット様には類が及ばぬ様・・・」


「・・・百香・・・」


百香は途中で言葉を止める。自分の隣、つまり列人の方から冷たい空気が流れてきたからだ。

眉間に皺を寄せ、怒りを無理やり抑えているような表情だ。

この表情の列人はまずい。今の発言は完全に列人の逆鱗に触れたようだ。


「お前の言う考えっていうのはそれか?自分が居なくなれば丸く収まるとでも思っているのか?

俺はお前の仲間だと思ってたんだけどな。その俺に仲間を切り捨てる選択をしろと。

それに自分だけが犠牲になれば済むと、本気で思っているのか。

全員がうまくいく方法を常に探し、諦めないのがヒーローだろうが!」


この言葉に百香もカチンときた。


「誰が諦めてるですって、ふざけてんのはあなたの方でしょう!

どうせあなたの事だから、村から離れて騎士団を返り討ちにしながら、他国に亡命するとか考えていたんでしょう!

そしたらマリアさんやスコットさんにアンナさんにフィオさん達はどうなるの!あの人達はあなたにとってどうでもいいの?

取り敢えず私が国に見つかってもすぐにどうにかなるわけじゃないけど、私が後から見つかって村で隠してたってことになったら、それこそアウトよ。

下手したら村のみんなが罪に問われるわ。」


「おい、テメーら、少し黙れ。」


2人が口論をしていると、二人の横からドスの効いた声が静かに響く。

2人がそちらを確認すると眉間に皺を寄せ、腕を組んでこちらを睨むバクラがいた。


「なあ、アル。人を勝手に悪役にしてくれてんじゃねえぞ。

その子がモニカなのかモモカなのかは正直どうでもいいんだよ。

国に報告だぁ?正直クソ喰らえだ。それよりもお前らはどうしたい?

大事なのはそこだろ。」


「・・・取り敢えず、国に報告は無しの方向で。」


「列人が村を出るって言うのも無しで。」


マフィアのボス(バクラ)のあまりに鋭い眼光に列人と百香は思わず素直に自分達の要望を話す。


「よし分かった。今後の対策考えるから、持っている情報全部吐き出せ。

なあに、心配するな。ちゃんと村に累が及ばない方法を考える。

それに恩人のお前を見捨てると言う選択肢はこの村にはないからな。」


「「・・・・はい。」」


呆気に取られながら、2人はポツポツと状況を説明する。

列人達の説明を受けたバクラが状況を確認する。


「つまりだ、アル、モモカ。

その賊は魔法陣の罠を使って、街道で馬車を襲った。

その音を聞いて駆けつけたアルに助けられて、現在アルがモモカを保護している。

モモカの植物の力については襲われたショックで覚醒。

その時、モニカとは違う記憶も同時に思い出す。

それがモモカと言うことでいいか?」


「ああ、概ねその理解でいい。」


「そういう事なら、国には知られない方がいいな。

魔法陣の罠なんぞ普通の盗賊は使わん。

十中八九、高位の貴族が絡んでいるだろうな。」


「ああ、俺もそう思う。」


バクラの見解に列人が同意する。

列人の同意に満足した後、今度は少し難しい顔をしてバクラは2人に質問する。


「ひとつ気になったんだが聞いていいか?

これはあくまでも俺の推測だがアル、お前も別の記憶持ちじゃないか?」


バクラの質問に列人は冷や汗が流れるのを感じた。

この漢は昔から鋭すぎる。


「何故そう思う?」


「お前らが余りにお互いを知りすぎている。

昔からの繋がりというかな、初対面の人間ではまずいないだろうというくらい。

それに傍から見てお前らは互いに信用し、信頼している。

しかしアルはこの村の住人以外とはそこまで深い付き合いはなかったはずだ。

結論として、アルとモモカは別の記憶で知り合い、いや仲間だったという推測ができるわけだ。」


バクラの推測にモモカは思わず賞賛の声をあげる。


「すごいですね。少ない情報でよくそこまで推測できますね。

それに常識に囚われない柔軟な思考もお持ちのようです。」


その百香の言葉をバクラは聞き流し更に言葉を続ける。


「更に推測だが、別の記憶でのアルの呼び名はレットもしくはそれに近い感じだったんじゃないか?

こいつはレットって呼び名に拘りがありすぎる。」


「正解です。別の記憶でのこいつの本名は赤坂列人です。」


「それじゃ、これからはレットって呼んだ方がいいか?

俺としては昔からの愛称のアルで呼びたいのだが。」


「好きに呼べばいいさ。ただし仕事の時はレットの方がいいかな。

咄嗟の時にはレットって呼ばれた方が反応しやすい。」


「ああ、そうさせてもらう。」


そう言った後、バクラはマリアに列人と百香の帰りが遅くなる旨を伝える為、一旦席を立つ。

職員の1人を使いに出すようだ。


「何かすごい人だね。バクラさんって。」


「ああ、元Aランクの凄腕ハンター、

コル村最後の砦、村長のいないこの村の実質的村長のみたいな存在だ。

エレメンタルズで言えば、光太郎さんみたいな人かな。」


「そうなのね。」


バクラの事をどこか誇らしげに語る列人を見て、百香が嬉しそうに微笑む。


「おう、待たせたな。それじゃ今後の対策についてだが。」


戻ってきたバクラは、そう切出してから対策について語り始めた。

決まった事は以下の通りである。

・モニカの馬車の事故については、知らぬ存ぜぬを通す。

・百香については、今まで通り列人の知り合いとして過ごす。

・ギルドで仕事をする時は必ずフィオが担当する。

 これは情報を少しでも漏らさない様にする為の措置である。

 フィオはあれで列人、バクラ双方から信頼が厚い。

・魔封じのチョーカーの解除方法について調査をする。

 ただし、国には見つからない様に慎重に行う事。

・何か拍子で国の関係者が村にきた時は、列人と百香以外が対応する。

 その為にマリアとフィオ、信頼できる自警団員数名に今回の事情を説明し協力を仰ぐ。


「いいか、アル。協力者については慎重に選べ。

それからマリアさんとフィオについてはお前から必ず協力を取り付けろ。

これは必須だからな。」


「わかっているよ。世話を掛ける。」


「いいって事よ。俺の方でも魔封じの外し方について調べておく。」


「バクラ、頼りにしてる。」


「・・・ああ、それからすまんがモモカ、少し時間をくれるか。

アル、先に帰っていてくれ。モモカは俺がお前んちに送るから。」


「私はいいですけど、列人いいかしら?」


「ああ、構わないぞ。」


百香はバクラに引き止められ、列人は先に家に帰る事となった。

バクラの列人に対する呼び方が変わるのはプライベートと仕事で分けているからです。

プライベートはアル、仕事ではレットです。



初感想ありがとうございます。

嬉しくなって早めに投稿してしまいました。

貴重なご意見、参考にさせて頂きます。

感想は必ず読ませて頂きますので、お気づきの点ございましたら、御遠慮なくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ