012_初仕事はゴブリン狩り
戦闘回です。
012_初仕事はゴブリン狩り
「フィオ、そういえば最近ゴブリンが村の近くで目撃されているんだったっけ?」
「はい、そうなんですよ。ギルドからも討伐依頼を出すかどうか検討中なんです。」
「そうか、じゃあ、ちょっと見てきて片付けてくる。
試験にもちょうど良いし、常駐依頼扱いで構わないから。」
「そうですか。予算も限られてますし、そうしてもらえると有難いですけど、そうすると報酬が減りますよ。
せめて通常依頼になってからの方が実入りはいいですよ。」
「いや、別に金には困ってないし、早めに片付けないと村に被害が出るかもしれない。
あの緑のゴキブリども、増えるとすぐ村に来ようとするからな。」
登録は14時ぐらいに終わり、まだ日が沈むまで時間があるので、列人達は依頼を受ける事にしたのだが、その時列人がゴブリンの事を思い出したのである。
ちなみにハンターの依頼には「常設依頼」「通常依頼」「緊急依頼」の3つがあり、
通常依頼の中には「指名依頼」というものがある。
常駐依頼とは特に手続きする事なく受ける事ができる依頼で、薬草の採取や肉の狩猟、モンスター等の害獣の駆除と言ったものが挙げられる。
通常依頼とは個別の依頼人から仕事を受けることで、掲示板に張り出された依頼書を見て受付で手続きする事で受けられる。
現代風に言えば、ハローワークで求人票を見て仕事を斡旋してもらう様な感じだ。
間にハンターギルドが入っているから人材派遣の方が近いかもしれない。
緊急依頼はモンスターの大量発生や災害時の救援等、文字通り緊急の場合に出される依頼である。
この依頼が発生するとハンターは他の仕事を一旦停止して、ランクに応じた仕事に従事しなくてはいけなくなる。
とは言っても滅多に出る事はないのだが。
先ほどフィオが言っていたのは、常設依頼だと素材の分しか報酬がないのに対して、通常依頼になれば素材の報酬にプラスで依頼料も入る事になるため、そちらの方が実入りがいいという話である。
列人としてはお金は生活に必要な分だけあれば十分だし、過度の貯蓄は経済を回す意味で良くないとすら考えている。
従って10年間ハンターをやってきて、人並みより遥かに貯金を持っている列人にとって報酬は大して問題ではない。
むしろ早く退治する事で村の安全を確保したいと思っている。
10年間、コル村で生活しているうちに列人にとってこの村はかけがえのないものになっていた。
今回はお互いの戦闘能力の確認と言う目的もあるので、ゴブリンの群れというのは都合がよかったのもある。
ゴブリン退治の現場は村から少し離れた森の中。
ここは村人が狩りや採集によく使う場所なので、こまめにモンスターを駆除する必要がある。
「では早速行くとするか。
まずは俺一人でやる。その次は百香一人で、最後に二人で連携してと言う流れで行こうと思う。
今日のところはお互いの能力把握が目的だ。
もし、ゴブリンの巣があればついでに潰しておきたいとは思っている。
何か意見、質問はあるか?」
「いえ、問題ないわ。それで行きましょう。」
話していると早速ゴブリンが現れた。数は5体いる。
ゴブリンは小柄な人型のモンスターで集団戦を得意とし、拾ったものを武器として戦う。
1体の力は12歳の子供くらいだが、5人の子供が本気で殺しにかかってくれば大人でもひとたまりもない。
一般人には十分驚異と言えるだろう。今回は全員木の棒を装備している。
列人はわざと音を立ててゴブリンにこちらの存在を教えた。
当然、ゴブリン達は列人に向かって襲いかかる。
ゴブリンは雑食で人でも食べるし、人が持っているものを奪って使う知能もある。
しかし、ゴブリンにとって今回の相手は悪すぎた。
列人は間合いに飛び込んで来たゴブリン達を、手持ちの刀を使い流れる様な動作で首を跳ねていく。その動作は淀みなく美しくすらあった。
瞬く間にゴブリン5体を始末し、死体の心臓から魔石を抜いていく。
魔石とはモンスターを倒した証明であり、魔道具のエネルギーとして使われる。
モンスターとは害獣であると同時に資源でもある。
百香は列人の動きを見て、ヒーローの時ほどの力や速さはないものの、技のキレは磨きがかかっていると感じた。
子供の身体で戦う必要があった為、より技を磨いたのだろう。
使っている技は霊力による身体強化だけで炎の術は一切使っていない。
この程度の相手には使う必要もないのだろう。
と百香が分析しているとまたゴブリンが現れた。
今度は7体、装備は棒が5体、ナイフが1体、投石が1体である。今度は百香の番だ。
『リグナムバイタロッド』
百香は霊力で戦闘用の木製の棒を作る。ちなみにリグナムバイタはとても硬く重い木材である。
百香はヒーロー時代植物で作成した武器で戦うのを得意としており、近距離、遠距離の両方に対応可能。(ただし遠距離の方が得意)
今回は自分の身体能力を確かめるべく、近距離用の棒を選んだ。
百香は気配を殺しながら、ゴブリンの群れの後ろ側に回り込む。
そこから投石のゴブリンに背後から一撃を加える。ゴブリンの頭部からドスッと鈍い音が響く。
後頭部を殴られたゴブリンは頭蓋骨が陥没しその場で絶命。
当然他のゴブリンはそれに気づき、戦闘態勢を整えようとする。
ゴブリン達が態勢を整えきるまでの僅かな隙に、百香は棒を持った2体のゴブリンを殴り絶命させる。
殴られたゴブリンの首が変な方向に曲がっており、その威力を物語っている。
霊力による身体強化は行われているようだが、やはりヒーローの時の様にはいかないと百香は思った。
ヒーローに変身すればこの程度の相手なら棒のひと振りで全滅させられたのだが、今は1体ずつが精一杯だ。
そんな事を考えていた刹那、残りのゴブリンが態勢を整え、百香の四方から襲いかかってくる。
百香はまず棒持ちのゴブリンの攻撃をいなしながら、1体づつ処理していく。
2体倒したところで、ナイフ持ちのゴブリンが懐に向かって突進してきたので棒でナイフを受け止める。
この『リグナムバイタロッド』は霊力で作られており、そこらの金属の剣等より遥かに強度が高い。
この時、今の百香の霊力でも十分に武器として使える事が証明された。
確認を終えた百香は手早く、淡々と残りのゴブリンを処理し、無事無傷で勝利した。
「百香、戦った感想はどうだ?」
「やっぱり、ダメね。身体能力、霊力共に落ちているわ。
転生して体が変わったせいでしょうけど、慣れるのに時間が掛かりそう。
何より基礎体力が無さ過ぎるわ。」
「そうだな。こればかりは俺も現在進行形で通っている道だし、まあ気長に鍛え直すしかないよな・・・」
「先が思いやられるわね・・・」
ちなみにこの世界の基準で言えば、ゴブリンを複数体無傷でしかもこの速さで倒せるのは、熟練ハンター以上の能力である。
しかし元が規格外の強さであり、そのレベルで戦い続けていた為、現状に不満を憶える列人と百香である。
「ところで列人、最後は2人で戦うんでしょう?
今くらいの相手だと却ってやりづらくならない。」
百香はこう列人に切り出す。ゴブリンの10体程度ではすぐにケリがついてしまい協力する暇もないのである。
それどころか獲物の取り合いになってお互いの動きを阻害してしまう。
「それについては考えがある。さっきギルドでも話したがゴブリンの巣があるかもしれないからそれを探そう。
あくまでも予想だが規模はおそらく100~200くらいだろう。」
「なるほどね、それくらいなら術を使う為の試運転にはちょうどいいかしら。」
「そういう事。ただし油断はするなよ。今の身体は恐ろしく弱いからな。
ゴブリン相手でも集団で叩かれたら、無事では済まないかもしれない。」
「わかってる。戦闘で油断なんてありえないわ。」
「なら問題ないな。では行こうか。」
二人は今後の打ち合わせをしながらゴブリンの巣に向かった。
巣に到着すると百香は術による索敵を開始する。
百香は植物がある場所ならば、それを目として周囲を探る事が可能である。
森は百香にとってホームなのである。
「巣に使っている洞窟におよそ100、周辺の見張りが30といったところね。」
「まずは周辺からだな。どうする?」
「私が術で拘束と猿轡をしていくから、なるべく音を出さずに処理して。」
「了解、頼む百香。」
「行くわよ。『アイビーバインド』」
蔓植物を使って敵を拘束する百香の得意技、無数の蔦が百香の足元からゴブリンに忍び寄る。
静かに忍び寄った蔓は列人の近くのゴブリンから順番に拘束していく。
『赤刀一閃』
刀に炎を纏わせ、敵を素早く切り裂く技。
列人の使う技の中で最も初速が早い為、こういった奇襲には持って来いの技である。
百香が拘束したゴブリンを列人が次々に切り裂いていく。
瞬く間に見張りのゴブリンが数を減らし、ものの数分で見張りの30体は全滅した。
当然洞窟のゴブリンはそれに気づき様子を見に来るのだが、そこを同様の方法で各個撃破していく。
洞窟のゴブリンを10体倒したところでゴブリン達も緊急事態と感じたのか、残りの90体が一斉に洞窟から飛び出してくる。
各個撃破は困難と判断した百香は遠距離からの範囲攻撃に切り替え少しでも数を減らす。
『オークバレット』
樫の木を散弾銃の様に大量に高速で飛ばし、面で敵を攻撃する技。
敵が弱く数が多い時や牽制に百香がよく使っていた技。
オークバレットによりゴブリンの20体ほどが絶命。
もう20体ほど行動不能、負傷したものが30体ほど、無傷のものは20体ほどしかいない。
しかもオークバレットから逃れたゴブリンも列人の間合いに入った瞬間に切られる始末。
ほとんど抵抗出来ずに全滅寸前まで追い込まれた時、巣穴から一際大きなゴブリンが出てくる。
大剣を持ち、鎧で武装した体長2メートル以上のゴブリン、ゴブリンキングである。
『オークバレット』
とっさに百香がオークバレットを打ち込むが、鎧と硬い皮膚が思いの他防御力が高く、表面を傷つけるに留まった。
ゴブリンキングは動きを止めることなく列人を自分の間合いに入れる。
ここまで近づくともう『オークバレット』は打てない。列人に同士打ちしては元も子もない。
両者の体格差、獲物のリーチの差から当然ゴブリンキングの間合いの方が広い。
間合いに入った瞬間、ゴブリンキングが剣を振り下ろす。
しかし列人に言わせてみれば、余りにも遅い。
列人はゴブリンキングの剣を紙一重で横にかわし、懐に飛び込む。
『赤刀一閃』
列人が刀を振るった瞬間にゴブリンキングの首がなんの抵抗もなく宙に舞う。
生き残ったゴブリン達も百香によって全て討伐された。
こうしてハンターチーム『エレメンタルズ』の仕事は無事終了した。
百香の術の名前とアイデアはグーグル先生便りです。
筆者は植物に関してはほぼ無知です。何か間違いがあればご指摘頂ければ幸いです。




