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120_依頼人に会おう

今回は依頼内容の確認です。

120_依頼人に会おう


「レット様、是非ともお礼をさせてくださいませ。」


「いえ、そういうの結構ですので、割とマジで。」


これはイグニの街についた瞬間に行われたやりとりである。

先ほど助けた馬車の少女エリー=アンスバッハにお礼がしたいと迫られているのである。

エリーの頬は心なしか赤くなっており、列人に少なからず好意を持っているようだ。


「いえ、そんなわけには参りませんわ。助けてもらってお礼をしないとあっては貴族の面目が立ちませんわ。」


「いや、正直貴族の矜持とかどうでもいいです。お礼の押し売りとかやめてくれます。」


「「「「・・・・・」」」」


この発言は列人には良くなかった。

朴念仁の列人はこの発言を『お礼をするのは貴族の面子を保つため。』と、とってしまった。

この様子に他の4人は苦笑いを禁じえない。


「それじゃ、エリー様、俺はこれで。」


「そんな他人行儀に、わたくしのことはどうか『エリー』とお呼び下さい。」


「・・・じゃあ、『エリーさん』俺は領主の屋敷に用がありますので失礼します。」


「まぁ、あくまでも礼儀を重んじるわけですね。さすがはレット様。どこまでも紳士ですわ。」


「・・・・なぁ、エリーさん。どうしてこっちに来ているんだ。」


「わたくしも領主様に会いにこちらに来たのでございますわ。」


「・・・・馬車で行ったらいいと思いますが、」


「彼らも襲撃を受けたばかりなのです。休ませてあげなくては。」


「左様ですか。」


「「「「・・・・・・」」」」


列人のあまりの塩対応にもめげないエリーの図太さに亜美達4人はある意味感心しながら列人達に聞こえないようにこそこそと内緒話を始める。


「なあ、アミ。これはどういう状況なんだ。」


「えっとね。あのお嬢様、どうやら列人お兄さんに助けられた事で好意を持っちゃったみたいなの。」


「え!あのデリカシー0、女心の破壊者、恋愛スキル0どころかマイナスのあのレットに。」


「ミラ、君も何気に酷いね。言ってる事が事実なだけに否定できないけど。」


「しかしレットは既婚者だろう。これは浮気に当たるのではないか。」


「「「・・・・は!!」」」


ここでギルバートが頓珍漢な発言に一同ポカ~ンと口を開けながら疑問を口にする。


「えっと、ギル。どうして列人お兄さんの事、既婚者だと思ったの?」


「何を言っているんだ。ちゃんと奥方のフィオさんから挨拶があっただろう。」


「・・・・ギルはあれを信じちゃったのね。」


「・・・・全く、うちの国の王子様は、人を疑うことを知らないんだから。」


「この国大丈夫かな。この国の平民代表として不安になるよ。」


「どういう事だ。わかるように説明しろ。」


「「「・・・・」」」


状況が分かっていないギルバートに対して残りの3人が可哀想なものを見る目で説明をする。


「つまり、フィオさんはレットの嫁を自称しているだけで書類上ではそんな事実はないと。」


「うわぁ~、身も蓋もない言い方だね。ギルバートってそういう所容赦ないよね。」


「うん、ちょっと気をつけたほうがいいよ。

ギルの何でもまっすぐものを言う所は美徳でもあるけど、同時に欠点でもあるんだよ。」


「アミ、ここに来ても説教なの。でも確かにそうね。未来の王様がこれじゃ不安になるわ。」


「どうやら私に至らないところがあったようだな。

私はまだまだ未熟だ。アミがそうやって指摘してくれる事にいつも感謝している。」


「ギル、そういう所だよ。今の私じゃなかったら絶対勘違いしてるよ。」


「勘違いとはなんだ。」


「『異性として好意を持っている』って相手に思われるという事だよ。」


「うむ、確かにそれはマズイな。

人として好意はあってもそれが異性としてと言う事になればそれは違うとしか答えられないからな。」


「本当に気をつけてよ。ギルはただでさえイケメンで勘違いされやすいんだから。」


「お~い、お前ら。領主の屋敷に着いたぞ。」


天然ジゴロ(ギルバート)が説教少女(亜美)に怒られている中、列人が目的地に到着した事を告げる。


領主の屋敷の門の前で待っていた執事とメイドに応接室まで案内された。

部屋の内装は上質ではあるが華美ではない、落ち着いた雰囲気だ。

そこでソファーに腰をかけてしばらく待っていると20代後半のやや痩せ気味の冴えない男が入ってきた。

列人は素早くソファーから立ち他の者もそれに習う。


「久しぶりだな、レット。他の皆様は初めましてでいいのかな・・・・・

おい、レット、これはどういう事だ。」


「「「「?」」」」


男は挨拶を始めるや否やいきなり血相を変えて、列人の首根っこを掴んで部屋の隅っこに移動する。


「おい、どうしたんだ、クルツ。領主様がそんなに慌てたらまずくないか。」


「やかましい!なんでここにギルバート殿下がいるんだよ。

しかもウォルト伯爵子息にコースト伯爵令嬢、アンスバッハ伯爵令嬢、挙句な果ては『癒しの聖女の再来』アメリアまで。

お前本当に依頼受ける気あるのか?」


「えっと、あいつらってやっぱり有名人なのか?」


「こちとら貴族なんだよ。知ってて当たり前だ。

なんで俺みたいなしがない男爵の前にあんな将来の大物ばっかり連れてくるんだよ。

今から胃が痛いんだけど。依頼はお前一人でやるんだよな、そうだよな。」


「いや、俺は今回は主に監督で基本ギル達にやらせる。」


「テメー、それで殿下が怪我とかしたら俺の責任問題になるじゃねえか!!

マジでふざけんなよ!!」


「何言ってんだよ。父親の侯爵から領地を取り上げてイグニの街を国一番の食料生産地に仕立てた天才領主が、たかだか王子に何ビビってんだよ。」


「うるせえよ。父親の領地取り上げる云々はテメーのお膳立てだろうが!!」


この痩せ気味の男がこの街の領主にして今回の依頼人、クルツ=フォン=ギムレット男爵

今までの話でわかる通り、列人とこのクルツ男爵は昔からの知り合いである。

この二人の出会いはおよそ5年前。

当時領主であったクルツの父親のギムレット侯爵は住民に重税を課し、その為住民が疲弊しイグニの街は寂れ放題だった。

それをよく思わなかったクルツと列人が結託してクーデターを起こし、ギムレット侯爵を追い落としたのである。

ちなみに列人が何故クルツと結託したかと言うと、当時食糧不足だったコル村の食料を手に入れるためにイグニの街までモンスター素材を持っていったのだが、税金という名目でモンスター素材だけ奪われそうになり、そこにいた侯爵の私兵を全員ボコボコにしたのが始まりである。

当時列人は13歳の少年だったのでカモだと思われたのだろう。

まさか国からも恐れられるヤクザだとも知らずに絡んだ結果がこれである。

最終的にはギムレット侯爵の罪を全てアズイール国王陛下の元に匿名でリークし、御家お取り潰しにまで追い込み、クルツを新たな男爵として領主に据えたというのが事の顛末である。

先ほどクルツはこの件は列人の仕業だと言ったが、実はこの情報をリークするときにクルツの手腕が大いに役に立っている。

これは蛇足だが、アズイールの頭の中だけの話では、ジギスムントを始めとする腐った政治中枢を一掃した暁にはクルツを閣僚に入れたいと考えている。


「すまない。ギムレット男爵。今回はハンターとしてこちらに伺った。

今回我々はエレメンタルズの一員として扱って欲しい。

男爵にはご迷惑を掛けないように必ず取り計らう。」


ここで列人とクルツの様子に全てを察したギルバートが先回りしてクルツにお願いという名の命令をする。


「はい!殿下がそう仰るのでしたら、私に異存はございません。

なにが起こってもエレメンタルズの責任と言う事で何一つ問題ございません。」


「・・・・」


だがこのクルツもなかなかに強かだ。

ギルバートの言質を取り、自分の責任逃れができると思うや否やすぐにそれに乗っかるのである。

そのあまりの変わり身の早さに列人が冷たい視線を送るがクルツはどこ吹く風、この男も相当にいい性格をしている。


「ではエレメンタルズの皆様に仕事の説明をしたいのですが、アンスバッハ令嬢は別室で待機していただいた方がよろしいかと存じます。」


「そうですわね。名残惜しいですけど、レット様のお仕事を邪魔をしては行けませんわね。私は別室で控えさせて頂きます。

ギムレット男爵様、レット様とのお話が終わりましたら、私のお話もお願いできますかしら。」


「はい、レット達の話は30分ほどかかりますのでそれまでゆっくりとお寛ぎください。

何かございましたら、そちらの執事かメイド長にお申し付けください。」


「はい、お気遣い感謝いたしますわ。それでは私は一旦失礼させていただきますわ。」


そう告げるとエリーはその場を後にする。

それを見届けたクルツが話を切り出す。


「今回の依頼についてだ。概要は依頼書に書いているが、家畜の死亡事件が多発している。

死亡状況は大型のモンスターに食い殺されたような噛み跡と部位の欠損が見られる。

被害者のリストを後で渡すから状況を聞いてくれ。

あとこれは関係があるかどうかは分からないが、家畜が被害にあう時に森の近くにローブを着た見慣れない人物が目撃されている。

そちらについても一応留意しておいて欲しい。

それからこれは秘密にして欲しいのだが、被害は結界内部で起きている。

結界装置には異常は見られなかった。

おそらく今回の下手人は結界が効かないモンスターということになるだろう。」


「・・・結界が効かないモンスターだと!!」


「ありえないわ。」


「「・・・・」」


クルツの言葉にギルバートとミランダが驚きの声を上げ、亜美とジーニアスが黙り込み思案をする。

結界に引っかからないモンスターはまずいないからである。

そんな中、列人がクルツとの応対を行う。


「なるほどな、事情は理解した。取り敢えずは聞き込みかな。

それと被害現場をピックアップして犯人が居そうな所の特定かな。

被害状況の資料はあるか。現場の場所と時間と状況が分かるものが欲しい。」


「うむ、そちらについても準備をしよう。

準備には2時間程度かかるだろう。それまでは街でも見て廻るといい。」


「そうさせてもらう。なあ、クルツ。美味いメシ屋のリストとかあるか。」


「言うと思ったよ。ほら、これだ。俺が書いたレポートだからまず間違いないと思う。」


「おう、ありがとよ。流石食道楽だな。」


「やかましい!こちとらまだ仕事があるからさっさと出て行け。」


「「「「・・・・・」」」」


今はちょうど昼時である。調査の前にまずは腹ごしらえだ。

今回の相手は結界が効かないモンスターという大事であるにも関わらず、列人はいつも通りの能天気さである。

喜々として領主からグルメレポートをかすめ取る列人になんとも言えない気分の残りの4人である。

クルツに関して、ちょっとややこしいので補足です。

今回の依頼人クルツは現在男爵ですが、元々は侯爵の息子です。

前領主であるクルツの父親を領主から追い落とす際、一回侯爵家をまるごと潰しています。

その結果、クルツは一回ただの平民になっているのですが、クルツに領主をさせたいアズイールの手によって新しく男爵の爵位を与えられたと言う流れです。

このクルツですが、内政レベルMAXの天才でアズイールも認める逸材です。

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