118_閑話_反撃のアズさん
今回は王都での話です。
国王_アズイールことアズさんも黙っていません。
118_閑話_反撃のアズさん
王城にあるアズイールの屋敷の執務室
ここに3人の男達が集まっていた。
一人目はここの主、アズイール=フラム=オランジュ
それから騎士団長のヴィルヘルムと軍務大臣のゼクス侯爵である。
2人の到着を確認したアズイールが早速話を切り出す。
「よく来てくれたね。ヴィルヘルム騎士団長にゼクス軍務大臣。」
「いえ、陛下。お呼びとあればいつでも。」
「陛下、ゼクス大臣もいると言う事は例の件でしょうか。」
「ああ、人払いは済ませているから楽にしていいよ。」
「ではお言葉に甘えて。
アズイール、言われた通りツァウの行方を捜査したが確認できない。
おそらくあの老害はこの世にいないだろう。全く愉快だ。」
アズイールの言葉を受けてゼクスの態度が一転、気安い口調で主であるアズイールを呼び捨てにしながら報告を行う。
ちなみにツァウとはこの国の軍部の相談役であり、百香が倒した魔族四天王_軍師ツァオガウのことである。
「それは何よりだ。いつもすまないね、ゼクス。
君には嫌な役ばかり押し付けてしまって。」
「気にするな。俺は偉い奴の味方だ。
つまりこの国で一番偉いお前の言う事を聞くのは当然というわけだ。
もっともジギスムント派と思われているのは気に食わないがな。」
「相変わらずのコウモリっぷりだな。
お前のそういう所はいつ見ても感心する。」
「ふん、世渡り上手と言ってくれ。
そのおかげでお前達にもジギスムントの情報が渡せるのだからな。」
このゼクス侯爵、世間では門閥主義者、権力の犬として知られている為、今貴族における最大勢力であるジギスムント派と思われているが本当はガチガチのアズイール派なのである。
ゼクス自身、ジギスムント派と思われている事を快く思っていないが、それを利用してちゃっかり情報を抜いてきているあたり、大変強かな人物と言える。
アズイールの政治の安定は表のヴィルヘルム騎士団長と裏のゼクス軍務大臣のおかげで成り立っていると言っても過言ではない。
「ああ、いつも感謝しているよ。
でも、息子のケアはきちんとした方がいいよ。
君がジギスムント派と思われているせいでトーマスへの風当たりも強いんだから。」
「あいつにはきちんと誰に仕えるべきか教えている。
将来、国で一番偉くなる人間に仕えろとな。
これでジギスムントに与するようなら俺は息子を切り捨てる。」
「君のそういう所、ホントに凄いと思うよ。」
ゼクスの態度に感心半分、呆れ半分のアズイールをよそにヴィルヘルムが話を切り替える。
「だがこれで騎士団の綱紀粛正に乗り出せる。
あの目の上のタンコブが消えたおかげでようやくまともに騎士団の運営ができる。」
「全くだ。なんの因果で軍務大臣と騎士団長が不仲な振りをしないといけないんだ。
程よくあのじじいの策略がうまく行っている振りをしないと強硬策に出る可能性もあったしな。
計画書の兵站をいじってコル村に嫌がらせをする程度、見逃してやらないと何をするか分からないからな。」
「ゼクス、やはりあれはわざと見逃していたのか。
トーマスも食料が無くて泡を食っただろう。」
「ふん、それで本当に計画書通りに村から食料を接収しようとするからいけないんだ。
狩りでもして適当に時間を潰せばいいものを、あの危険人物と揉めおって。」
どうやら、トーマスが起こした揉め事の発端はツァウ相談役こと魔族四天王_ツァオガウの仕業だったらしい。
この事に関してはゼクスも頭を抱えている。
アズイールはそんなゼクスを見ながら、列人の件に関しての現状確認を行う為、話を切り出す。
「全くだよ。レット君と揉めるとか命知らずもいいところだよ。
レット君に関する報告書は呼んでもらったよね。」
「ああ、全く常軌を逸している。あのフレイムジャイアントを一瞬で消し炭にするなど。」
「だが事実だ。俺とおっさんが一緒に見ていた。
お前に改めて忠告するが、しっかりトーマスのケアをしてやれ。
あいつレットに嫌われているから下手したらお前に飛び火するぞ。
レットなら『子の責任は親の責任だ』とか言いかねない。」
「くっ、これだから野蛮人は。
だいたい平民が侯爵家の人間に楯突くなど。」
「ゼクス、それアウトだよ~。
レット君には権力は全く通用しないどころか下手したら市民の敵扱いされて消されるよ。」
「分かっている、アカサカ=レットだろう。
おかげで仕事はだいぶやり易くなったが、段取りを無視するからいつもてんてこ舞いにさせられる。
アルフレット担当大臣はもっとしっかりしてくれ。」
「そんな役職になったつもりはない。なんならこの役職もお前にやろうか。」
「ふん、俺には不向きだ。お前かアズイールじゃないと務まらん。」
そんな役目は御免だとばかりにゼクスは頭を振り話を変える。
「ひとまずは騎士団内に配置されたジギスムントの手のものの粛清からだな。
お前を暗殺しようとしていた者を全て排除する。
証拠は適当にでっち上げて置くから書類だけ揃えてくれ。
あとはこっちでやっておく。」
「おお、怖い怖い。僕は恐怖政治をするつもりはないんだけどな。」
「ふん、お前が死んでは元も子もないだろう。こういう汚れ仕事は任せろ。
ギルバート殿下の前ではやりたくないだろう。」
「そうだね。ギルにはこんな事をしないでいい状態で国を渡したいからね。」
「俺はおっさんの護衛の強化だな。ギルバート殿下にはレットが付いているから問題ないだろう。」
「そのレットは信用できるのか?」
「ああ、この国の誰よりもな。」
「ほう、俺よりもか。」
「ああ、お前とレットのどちらにつくかと聞かれたら俺は迷わずレットにつく。」
「・・・・そうか。それじゃあ、お前の信用を勝ち取る為に仕事をするかな。」
「ゼクス、皮肉にしか聞こえんぞ。」
「そのつもりで言っている。」
「君達、仲良くとまでは言わないけど喧嘩せずに仕事しようよ。」
「おい聞いたか、ヴィルヘルム。サボリ魔が仕事したいそうだ。」
「ああ、ゼクス。俺も聞いたぞ。早速溜め込んだ大量の仕事を処理させよう。」
「鬼~~、悪魔~~~。」
「「うるさい!!嫌なら仕事を溜めるな!!」」
普段はいがみ合っている癖にこういう時ばかり結託する2人。
このあと、騎士団の綱紀粛正は滞りなく進んだ。
補足
今までゼクス軍務大臣の噂はあまりいいものがありませんでしたが、そういう風にわざと擬態しています。
情報収集が得意なバクラですら騙されるレベルで、ヴィルヘルムも外ではあえてゼクスと仲が悪い風に演じています。
理由は不穏分子(ジギスムント派)に取り入って内情を調べる為と相談役のツァウ(軍師_ツァオガウ)に変な真似をさせない為です。それに加えて、汚れ仕事をする上で便利というのもあります。




