114_女子達の日常
日常回です。
今回は亜美、百香、ミランダの3人です。
114_女子達の日常
列人がギルバートの訓練をしている頃、百香、亜美、ミランダの3人はバンの街にやって来ていた。
目的は観光である。
事の発端は亜美の一言からである。
「・・・通帳残高が6億超えている・・・」
「あ、本当ね。この間のレッドドラゴンやアースドラゴンの素材の代金が振り込まれたみたいね。
あと工事のバイト代も振り込まれているわ。」
「・・・私も1億振り込まれているわ。」
そう、ここ数日で稼いだ素材の代金やらあのトンデモ工事で重機替わりに扱われた報酬がこの日一気に振り込まれたのである。
どうやら金額が大きかったので少し時間がかかったようだ。
「どうしよう、取り敢えず仕送りはするとして、でもあんまり大きな額を一度に振り込むと驚くだろうから取り敢えず100万。
どうしよう、まだ全然余っている。貯金なんてこんなにいらないしどうしたらいいの。」
「落ち着きなさい、アミ。別に貯金があったからって困ることはないでしょう。
それに100億超えている訳でもないのだから驚く額ではないわ。」
「シャラップ!これだから貴族のお嬢様は困るんだよ。
いい、お金っていうのはね、確かにあった方がいいけども、持ちすぎると逆に変なものを呼び込むんだよ。
お金目当てに近づいて来る自称恋人志願者や自称親戚に自称友人その他諸々。
宝くじを当てたせいで碌でもない人間に追い回されて人生滅茶苦茶にされる事だってあるんだからね。
周りの人間は全て泥棒か結婚詐欺師だと思って行動しないといけなくなるんだよ。」
「落ち着いて亜美ちゃん、なんかやたらと実感が篭っているんだけど前世で何かあったの。」
「お姉さんは知ってる?ヒーローの引退後って。
ヒーローって高収入の割に使う機会が無いから貯金だけ異常に貯まるんだよね。
つまり引退まで勤め上げたヒーローってものすごいお金持ちなの。
その上精霊との契約を解除する人がほとんどだから普通のお金持ちの一般人になるの。
そしたらもう碌でなしにとってはいいカモにしか見えないのか、
やれ慈善団体から募金の要請、やれ青年実業家からの投資の案内、やれ開発途上国への支援依頼、煩わしいったらないのよ。
平和の為に必死で働いたんだから余生くらいゆっくり過ごさせて欲しいのよ。
老後の資金まで毟り取ろうとするんじゃないわよ、ハイエナどもが!!」
「アミ、落ち着きなさい。あなたの無念はわかったから。」
「ごめんなさい、亜美ちゃん。もういいから、思い出さなくていいから。」
亜美が前世の頃の嫌な記憶を思い出し、目のハイライトが消え、『亜美さん』になってブチ切れているのを2人が必死で宥める。
2人はこの時、なぜ亜美がお金にシビアなのかを知った気がした。
でもなぜ列人の貯金100億クレトを狙ったのかは謎であるが、おそらくノリだろう。
「そういうわけだから、百香お姉さん、ミラ、豪遊しに行くよ。」
「「・・・・豪遊?」」
といった経緯なのだが、
「じゃあ、まずは何をしようか?」
「まさか亜美ちゃん、何も考えてなかったの。」
全くの無計画だった。
これに対してミランダと百香が呆れた様子で亜美に問いかける。
「呆れたわ、この子は。あんた『学園』ではもっとしっかりしていたわよね。」
「そういえばそうね。モニカの記憶でもしっかりしていたのに?」
「だってしょうがないじゃない。
『学園』では色々気を張っていたからそう見えたかもしれないけど、今は気を抜いても平気だから思わずそうなっちゃうんだもん。」
「はは、仕方ないわね。取り敢えずご飯にでもする。」
「そうね、食べながら考えましょう。」
「できるだけ高いお店ね。」
「アミ、あんた、あてはあるの?」
「ないよ。百香お姉さん、心当たりある?」
「・・・はぁ、取り敢えずこの間列人達といったお店にしようか。
高くはないけど美味しいから。」
「まあそうね。無理に高い物にする必要もないし。」
「賛成!早く行こう。」
3人はこれから始まる戦の為にまずは腹ごしらえをする事にした。
店に到着した彼女達は早速注文をするのだが、
「チキンステーキセットとトマトサラダ、オニオンサラダ、チキンサラダ。
デザートはチョコレートケーキと紅茶のストレート。」
「焼き魚定食、刺身盛り合わせ、ミニ天丼とお漬物。
デザートはあんみつと飲み物は緑茶で。」
「ミックスサンドイッチセットとコーンスープ、飲み物はコーヒーブラック。」
「ねえ、ミラ。それだけで足りるの?もっと食べないとダメだよ。
成長期なんだから。」
「あ!アミの説教久しぶりに聞いたわね。いいのよ。
最近体重が60キロ超えたからダイエットよ。」
「えっとね、ミラ。言いにくいだけど圧縮された筋肉って簡単には落ちないのよ。
先に脂肪が落ちて見た目もゴリラになるけどいいの?」
「・・・デザートにいちごケーキ追加ね。」
「そうそう、ミラ。諦めが肝心だよ。見た目は変わらないんだし、いい方に捉えようよ。」
「うるさいわね、アミ。私はあんたほど割り切れないのよ。
しかしアミ、あんた変わった料理が好きね。この辺で生魚とか食べる習慣ないわよ。」
「ミラも食べてみる。でも苦手な人は本当にダメだから無理にとは言わないけど。」
「遠慮しておくわ。それからモカはなんでサラダを3品も頼んでるのよ。それにチキンが被ってるし。」
「筋肉を落とさずに無駄な脂肪(胸)を落とす為よ。」
「あんたまだ諦めてなかったの。確かに邪魔だと思う時はあるけど。」
「黙らっしゃい!!あなた達持つ者は持たざる者をそうやって傷つける。
私だってDとまではいかなくてもCくらい欲しかったよ。
なんで転生してまでB(自称)なの!!」
「「・・・・・ごめんなさい。」」
胸囲の話になり、血の涙を流さんばかりの勢いで抗議をする亜美に対して、その勢いに負けて思わず平謝りする2人。
女性3人で姦しいとはよく言ったものである。
3人は楽しそうに今後の予定について話し合う。
「でも、亜美ちゃん。豪遊って具体的にはどうするの。贅沢したり、無駄にお金を使ったり?」
「そうだね。贅沢はいいとして、無駄なことにお金は使いたくないかな。」
「アミ、あんた絶対豪遊するのに向いてないわ。モカ、何か案はある?」
「そうね。高いお酒飲んだり、いい男侍らせたり。」
「うわぁ、なんか発想が俗っぽいね。」
「むぅ、そういう亜美ちゃんはなんかいい案あるの?」
「そうだね。欲しかった物買ったりとか。」
「割と普通ね。具体的には何を買うの?」
「包丁にフライパンに戸棚に食器、それから箒も欲しかったんだ。
包丁の業物とかないかな。」
「あんたは発想が所帯じみすぎよ。」
「そういうミラは何か案はあるの。」
「そうね、コンサートホールを貸し切ってオーケストラ演奏を楽しむとか。」
「無駄だよ!その上、他の人の楽しみの邪魔をしてるよ!」
「豪遊とは無駄なものなのよ。」
「・・・私に豪遊は向かないみたいだね。」
「まあまあ、せっかく来たんだから豪遊とか考えずに楽しみましょう。」
この後3人は美術館、劇場、アクセサリーショップなどを廻り、その後に公園で一休みをしていた。
そこで3人は決して見てはならないものを見てしまった。
「ダーリン、見て。あの木に止まっている小鳥、とっても可愛いわよ。」
「すまない、ハニー。美しく可愛らしいお前の事ばかり見ていて気付かなかったよ。」
「もう、あなたってば、恥ずかしいわよ。でもそんな紳士的なダーリンも好きよ。」
「俺もだよ。ハニー。」
そこでは長身、強面、色黒、筋肉質の見た目マフィアのボスの様な男と、金髪に青い瞳で見た目は20代半ばの美しい女性が人目を憚らずイチャついていた。
これに女子3人は危機感を感じ、気配を消し背景と同化する。
「いい、絶対に見つかっちゃダメよ。」
「わかってるよ。あんな危険地帯に飛び込むバカはいないよ。」
「ええ、見つからない内に撤退ね。」
バカップルの存在に警戒レベルをMAXにした彼女達はそのまま公園を去ることにした。
この後3人は服や日常に必要な家具等を購入し家路につくのであるが、
「さて、そろそろ帰りましょうか。今から走れば日が沈む前に村に付けるでしょう。」
「行きといい、走って50キロを30分とか我ながら人間やめちゃったわね。」
「ミラ、何言ってるのよ。列人はグレートサイクロン号引っ張って20分切るのよ。
私達はまだまだ一般人よ。」
「百香お姉さん。ヒーローが現れる前の地球人類の100mの世界最高タイム知ってる?
時速に換算すると平均で40キロいってないんだよ。」
「こっちでも魔法無しなら似たようなものよ。」
「・・・・さぁ、この話はやめましょう。誰も幸せにならないわ。」
「「・・・・そうね(だね)。」」
オチも付いたところで、彼女達の楽しい日常の1日は幕を下ろした。
そしてこの日常を守るための戦いはまだまだ続くのであった。
実は亜美はお金が好きだけど大金を持つとビビる小市民です。
お金があってもなくてもこの子は暴走します。




