113_天然ジゴロのコル村巡り
しばらくは日常回が続きます。
まずは列人とギルバートです。
113_天然ジゴロのコル村巡り
秘密基地での話も終わりその日は一旦解散となった。
そして次の日、早速とばかりにギルバートを連れてご近所への挨拶である。
「こんにちは、スコットさん、アンナさん、いる?」
「まあ、おかえりなさい、アル君。王都に言ってたのよね。随分と早かったのね。」
「おう、アル坊、久しぶりじゃな。王都の用事は済んだかのう?」
「ああ、取り敢えず一段落って感じかな。今日は紹介したい奴がいる。
俺のダチで王都でお世話になった人の息子のギルバートだ。仲良くしてやって欲しい。」
「初めまして、ギルバートです。今日からしばらくこの村でお世話になります。
どうぞよろしくお願いします。」
「あらあら、礼儀正しい子ね。その上色男だし、ジーニアス君といい、ミランダちゃんといい、やっぱり都会は違うわね。」
「いえいえ、アンナさんも十分お美しいですよ。」
「やだ~、この子ったら。こんな叔母さんをその気にさせてどうするつもりかしら。」
「おい、ギル。お前、女だったら誰でもいいのか!」
「そういうつもりではないが、そうだな。
あまりこういう事を言うのはスコットさんに悪いな。
怒られるといけないので私達はこれで退散するとしようか。」
「それじゃあね。アル君もギル君もまた来てね。」
「おい、母さんや。わしの方があんな若造よりお前の事を愛してるぞ。」
「わかってるわよ。もう、しょうがないのね。」
「・・・・・」
このようにギルバートが挨拶を行う際、必ず女性を褒める為、コル村内でもギルバートの女性ファンがドンドン増えていった。
褒め方も非常にスマートで既婚者相手だと、ギルバートが褒める様子に夫側も刺激され、より仲がよくなると言う副次効果つきである。
ギルバートは自分が間男にならない絶妙な褒め方をし、決して相手に不快感を与えない距離感を保っているのである。
しかもこれを計算ではなく、天性の感覚で行っている。まさに真の天然ジゴロである。
これは将来の王妃はさぞ苦労するだろうなぁと列人はその様子を呆れながら見ていた。
一通りご近所、自警団、ハンターギルドに挨拶を済ませ、村の女性の大半がギルバートのファンになったところでお昼となった為、ハンターギルドの食堂で昼食を摂ることにした。
「それでどうだった。村の様子は?やっていけそうか。」
「ああ、皆親切でいい人達だな。特に女性は素朴で好感が持てる。
王都だと私の地位を目的に色目を使ってくる女性が多くて正直辟易していたからな。」
「お前、ここに来ても懲りずに女か?いい加減刺されても知らないぞ。」
「だからそういうつもりはないと言っている。だいたい私は女性を口説いた事など人生で一度もない。」
「・・・・マジか、こいつ。」
そう、ギルバートは女性を口説いているつもりが全くないのである。
女性を褒めるのはあくまでも日常会話の延長。
ただしやっているのはイケメンでしかも褒め方がスマートとくれば女性はその気になる。
彼が王子でなかったらおそらく既に女性に刺されてこの世にいなかっただろう。
ギルバートは罪の意識0で罪を作っていく非常に厄介な性質の持ち主なのである。
鈍感男、デリカシー0の列人ですら呆れるレベルである。
昼食をすませ、今日のところは生活の準備を行うとの事だったのでこのまま買い物に付き合い夕方の前には解散となった。
ギルバートの暮らしの為の準備は特に問題なく、この様子なら合宿を行う必要はないと列人は密かに胸をなで下ろしていた。
尚、これは蛇足だが2人が買い物をしている様子をトリシャ(アル×ジニ派)とアイーダ(ジニ×アル派)2人の醗酵少女達に目撃され、腐った妄想を大いに掻き立てられていたが、それは列人達の知るところではない。
次の日はバクラの霊力操作訓練の時に行った方法と同様に魔力の操作訓練を行った。
この際、列人が炎の燃焼についての講義も同時に行う。
その結果、炎の剣の熱量が『学園』にいた時と比べて格段に上昇した。
その様子をご覧に入れよう。
「『感知』『移動』『増減』『変化』『放出』か、そして燃焼のイメージをしっかり持つ。」
「そうそう、そんな感じだ。じゃあ、やってみようか。」
「では、『ファイアブレイド』」
ギルバートが炎の剣を呼び出す。それは赤く煌々と燃え盛り、大抵のものなら焼き払えるであろう凄まじい熱量を秘めていた。
その剣の熱量に一番驚いているのはそれを作り出したギルバート本人だった。
「うむ、手順を把握してイメージを改善するだけでこれほど違うとは。
どうだろうレット、うまくいっていると思うのだが。」
「そうだな。『学園』の時に比べたら格段に良くなっている。
でもまだ熱の圧縮のイメージが足りないな。
余計な火の粉が舞って熱を無駄にしている。
威力を追求するなら燃えてればいいってもんじゃないんだ。
炎ではなく超高温のエネルギーそのものを剣にしている感じのイメージだな。」
「うむ、なかなか難しいものだな。」
「まあ経験だからな。回数こなすしかないさ。」
そして訓練も終わりに差し掛かった時、列人からある提案が行われた。
「よし、ギル。せっかく炎の扱いも上手くなった事だし、ここいらで組手をしようか。」
「それはありがたいが、相手は?」
「当然、俺がする。大丈夫、加減はできるから。」
「・・・・ああ、胸を借りさせてもらう。」
「じゃあ、行くぞ。『赤刀』」
「こちらも行くぞ。『ファイアブレイド』」
「お、なんだ。アルと新入りが組手を始めたぞ。」
「2人とも炎の剣を出しているぞ。なんかすげえぞ。」
「え!レットって炎の剣が使えたの。そんな面白いこと僕に内緒なんて酷いな。」
「きゃ~、アル君。素敵~。流石私の旦那様です。今すぐ抱いてください。」
「・・・野次馬が集まってきたがどうする?レット。」
「・・・ギルは全力で来い。俺の方で調整する。」
「・・・ああ、わかった。」
この後、ギルバートは全力で列人に剣を振るった。
ギルバートの剣は振るたびに美しい炎を舞散らせるのに対して、列人の刀は火の粉が全く出ない。
代わりにその刀の赤はどこまでも深く熱い。
いくら全力で剣を振るっても列人には届かない事に対して、ギルバートは高揚感と悔しさ、そして微かな喜びを感じた。
列人はそれを微笑ましく思いながら、さらにギルバートの全力を引き出す為に時に弾き、時に躱し、時にこちらから打ち込む。
その光景は荒々しくも美しい剣舞のようであり、野次馬達を大いに沸かせた。
最も一番興奮していたのは自分の夫(自称)の勇姿その目に焼き付けていた自称妻と列人が炎の剣を使える事を初めて知った研究バカであった。
こんなに疲れたのは久しぶりだ。
だがこんなにすっきりした気分なのも本当に久しぶりだ。
今夜はぐっすりと眠れそうだ。
清々しい気分で一日を終えるギルバートだった。
ギルバートは今まで自分とまともに訓練をできる相手がいなかった為、列人との訓練がとても楽しい模様です。
きっと王都にいた時の訓練相手は余計な忖度をしていたのでしょう。




