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111_ただのギルバートとして

変身騒動の後日譚です。

ここで一旦王都とはお別れです。

111_ただのギルバートとして


「なぁ、レット。これはなんだ?」


「グレートサイクロン号だ。」


「いや、そういう事を聞いているんじゃなくてだな・・・」


「殿・・じゃなかった。ギル、これはグレートサイクロン号。

コル村の主要交通機関で高速通常走行時の速度は時速100キロ。

動力源は列人お兄さんだよ。」


「殿・・じゃなかったわ。

ギル、いつ聞いても頭がおかしくなりそうな乗り物だけど慣れないとダメよ。

これにはしばらくお世話になるのだから。」


今は王都のゴミ掃除が終わった2日後だ。

列人達に連れられて王都の郊外までやって来たギルバートは今、頭のおかしい大八車(グレートサイクロン号)の前に佇んでいた。


どうしてこうなったかというと遡ること、ゴミ掃除の翌日、つまり昨日の事だ。

王城内の国王の屋敷にギルバートは呼び出されていた。


「父上、ギルバートただいま参上いたしました。」


「ああ、ギル。いらっしゃい、て言うのもなんか変だけど、よく来てくれたね。

人払いはもう済ませているからくつろいでいいよ。」


「おう、ギルバート。昨日ぶり。」


「こんにちわ、殿下。」


「ちょっとあんた達、寛ぎ過ぎよ。

はは、ご機嫌よう、殿下。」


そこにはお茶と菓子を食べながら思いっきり寛いでいる列人達がいた。

その事に対してギルバートの顔は思いっきり引き攣った。


「父上、何故レット達がいるのですか?」


「ギルバート、ちょっと待ってろ。今からお茶入れるから。」


「じゃあ、私お菓子出すね。」


「アミちゃん、お菓子は上から3番目の引き出しね。」


「・・・・・」


しかも普通に備品の位置まで把握して給仕までしている。

これにはギルバートも絶句である。

そんなギルバートに対して亜美が笑顔で席を勧める。


「はい、殿下。座ってください。

今日の焼き菓子はアズイール陛下お気に入りのお店のものですよ。

お茶は今列人お兄さんが入れているのでもう少し待ってくださいね。」


「・・・ああ、そうか。ありがとう。」


「どういたしまして。あ、噂をすれば。」


「はい、お待ちどう様。流石アズさん。いい茶葉使ってるね。」


「いやぁ、君の腕もなかなかだよ。家に雇われてみない。」


「お断りします。俺は忙しいので。」


「ちょっと、あんた達。殿下おいてけぼりじゃない。

もうちょっと空気読みなさいよ。」


「・・すまない、ミランダ嬢、状況説明を頼む。」


ミランダ以外はあてにならないと考えたギルバートは悪いとは思いつつもミランダに質問する。


「はい、殿下。と言っても私達も陛下に呼び出されただけですから。

私も状況は分かってないのよ。」


「・・・父上、説明を。」


ギルバートは呆れながら、氷点下の眼差しで父親を見ながら説明を要求する。

これ以上ふざけるとただでさえ無い父親の威厳がさらにすり減ると思い、アズイールは慌てて状況説明をする。


「いやねぇ、昨日は色々ゴタゴタしちゃって肝心な事の答えをレット君に聞いてなかったじゃない。

だからその確認をしようと思ってね。」


「アズさん、なんか忘れている事ってあったっけ?」


「ほら、ギルの先生になってくれるかについてだよ。君の了承の返事を聞いてなかったからさ。」


「あ、そういえば言ってなかったか。じゃあ、返答の前にギルバートに再度質問だな。」


アズイールの説明を受け、列人がギルバートに問いかける。


「ギルバート。昨日一応俺の実力を見せたが君は俺の師事を受ける気はあるか?

俺って言ってしまえばどこの馬の骨ともわからないただの平民ハンターだぞ。

王子様としてはかなり屈辱じゃないのか?」


列人のこの発言にギルバートはため息をつきながら答える。


「レット。昨日も話したと思うが私も命が掛かっているんだ。

身分がどうのというような瑣事に囚われるつもりはない。

それから君は絶対に私のことを王族扱いしていないだろう。」


「じゃあ、ギルバートは俺からの指導を受けるって事でいいんだな。」


「ああ、昨日君の力を見てより思いが強くなったよ。」


「じゃあ、契約成立っと。アズさん、明日からしばらくギルバート借りるから。

退学手続きよろしく。」


「『停学』だ。どさくさにまぎれて学校辞めさせて君は何がしたいんだ。」


「だって史上初の『学園』中退で王様になるって超ウケると思わないか。」


「思わない。父上、『停学』の手続きよろしくお願いします。」


「ああ、わかったよ。ところでレット君、これからどうするんだい?」


「俺はコル村に戻ります。ギルバートも連れて行くからそのつもりで。

ミラ、亜美ちゃん、悪いんだけどギルバートの準備するから手伝ってくれ。

色々買い出ししないと。」


「うん、わかったよ。」


「ええ、了解したわ。では陛下、殿下、私達は失礼します。」


「いや、少し待ってくれ。」


コル村に帰ると決め、その準備の為、解散しようとしていたその時ギルバートが皆を呼び止める。


「どうした?ギルバート。」


「これから私が城から出たら殿下と呼ぶのは無しで頼む。

私は王子ではなくただのギルバートとしてレットの師事を受けたい。」


このギルバートの発言に列人は思わず頬を緩める。


「ああ、わかった。これからよろしくな。ギル。」


「ご指導の程、よろしくお願いする。レット。」


こうしてその場にいる全ての者が頬を緩めながらこの日は解散となった。



そして冒頭の場面に戻る。

グレートサイクロン号の前で佇んでいたギルバートが列人に問いかける。


「なあ、レット。私達はこれからこれに乗ってコル村に向かうんだよな。」


「ああ、そうだよ。わかったら早く乗って。シートベルトを忘れるなよ。

あと今回はギルには悪いけど時速100キロで行かせてもらうから。

モンスターの処理は亜美ちゃんよろしく。」


「列人お兄さん、了解したよ。」


「ちょっと待ちなさい。今シートベルト締めるから。殿・・じゃなかった。

ギルも早くシートベルト締めて。」


「発車5秒前、4・・・・2,1,0、発車。」


「おい、レット。ちょっと待て、って速・・・・・・。」


「ああ!ギルが白目剥いてる。」


「ちょっと!!しっかりしてギル。ちょっとレット、スピード緩めなさい!」


「いや、そうすると今日中に付けないから無理だ。

悪いけど気絶していてもらおう。」


「あんた鬼か!!!」


「亜美ちゃん、索敵よろしく。」


「了解だよ。」


「アミも普通に受け答えするんじゃないわよ!!!」


初めてのグレートサイクロン号に白目を剥くギルバートとそれを見て絶叫するミランダを乗せ、騒がしくコル村に帰還する列人達だった。

今回、王都からとんぼ返りですけど、本来の目的である王族に危険を伝えると言う目標は達成しています。

ヴィルヘルムやアズイールとの繋ぎも取れたので無理にミランダが王都に残る必要もなくなった為(そもそも停学)コル村に戻る事になりました。

さて、コル村に行ったギルバートはどうなる事でしょうか。

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