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110_赤色への思い

列人が変身した後の話です。

それぞれが列人に何を思うかという内容です。

110_赤色への思い


「おい、レット!あんな隠し玉があるとは聞いていないぞ。」


列人が変身をしてフレイムジャイアントを倒した直後、第一声目を発したのはヴィルヘルムである。


「いや、ヴィルヘルム。流石にこれは言えないだろう。」


「うっ・・・それはそうだな。」


思わず聞いていない事を責めてしまったがよく考えなくてもこんなもの人に言えるわけがない。

言おうものならよくて病人扱い、信じてもらえたとしても国の研究所送り。

そうなれば列人と国の間で戦争が勃発、勿論国側が負ける。

そんな地獄絵図が簡単に想像できてしまうあたり、ヴィルヘルムは大概毒されている。


「じゃあ、なんで今見せた。隠したままの方がいいのだろう。」


「いや、だって時間かけたらお前らに被害が出ていただろう。」


「・・・・・」


「それにここにはアズさんがいるから口止めしてもらえば完璧に外には漏れないし。

そういうわけでアズさん、よろしく。」


列人がヴィルヘルムの疑問になんでもないと言った風に返事をして、一応口止めをお願いする。

それにアズイールが呆れた風に答える。


「あのね、レット君。一応口止めはするけど、こんな事話しても病人扱いされるだけだよ。

国王の僕が言ったって誰も信じないよ。」


「・・・・・」


「どうした、ミラ。さっきから黙り込んで。初対面のときみたいにまた怖くなった?」


「はぁ!誰にもの言っているのよ。あんたみたいな能天気男、誰が怖がるのよ!」


「・・・・ミランダ嬢、なんか性格変わったな。」


「殿下、こいつを相手にするなら大人しいだけではいられないんですよ。」


「・・・・そうか・・・苦労しているんだな。」


ミランダが以前と比べて、あまりに性格が変わっている事にギルバートが思わず苦笑いする。


「じゃあ、帰りましょう。皆、列人お兄さんの実力もわかったと思いますし、ここにはもう用はありませんから。」


「そうだね。じゃあ解散、と言っても街までは皆一緒なんだけどね。」


皆、思い思いに意見を言い合っていたが、アズイールの号令によりひとまずこの場は解散となった。

解散しそれぞれの家路についた後も、やはり先ほど見た列人の実力が気になるようでその話で持ちきりだ。

その様子を今からご覧に入れよう。


列人・亜美side


「列人お兄さん。いきなり変身するなんて、本当に無茶がすぎるよ!

ドライバー無しの変身の弊害は知っているよね。

万が一があったらどうするの!」


「あれ?さっきの話で納得してもらえてなかったのかな。」


「納得はしてるよ。でも今のお兄さんってヘトヘトだよね。

みんなの前では隠しているつもりだったでしょうけど、疲れているのがバレバレだよ。」


「そっか、心配かけちゃったみたいだね。

さっきの変身時間って多分5秒くらいだったと思うし、戦闘時間は本当に一瞬だったんだよね。

それでこの疲労度だから、とても通常の戦闘で使える代物じゃないよね。」


「そうだね。さっきみたいに超火力で一気に決める時くらいにしか使えないね。

無理して長時間使ったらきっと命に関わると思うよ。だから今後もなるべく変身はしないでね。」


「わかってるから、必要な時以外は変身しないし、無茶な変身はしないよ。」


「約束だからね。」


「ああ、約束だ。」



ヴィルヘルム・ミランダside


「・・・ヴィルヘルム団長、私達ってもしかしてとんでもない秘密抱えちゃったかしら。」


「ああ、そうだな。あれはちょっとありえないな。」


「もしかしてレットって『炎の勇者』だったりしないわよね。」


「ミランダ嬢、あいつに『勇者』って称号が似合うと思うか?」


「ふふ、似合わないわね。まあ関係ないけどね。レットはレット。私の友達だから。」


「友達か、あいつをそういう風にいう者はあまりいないだろうな。」


「私からお願いしたの。あいつと皆で勝負してその時に私が勝って、そのご褒美としてね。」


「レットに勝ったのか!それはすごいな。」


「まあ5対1でなんだけどね。

私が友達になって欲しいってお願いしたらあいつ何って言ったと思います。

『ミランダ=コースト、俺は君の友になることを願う。

そして、友である君が困難に直面したとき、全力を持って助ける事を誓う。』

って言ったのよ。あいつらしくないなんとも気障なセリフだと思わない。」


「はは、そうだな。あいつもそんな事が言えるんだな。」


「ほんとにね。でもこの宣言通り私が困っている時にあいつは助けてくれた。

私が殿下を引っぱたいた時もすぐに駆けつけてくれたし、今回変身したのだって私達を守るため。

あいつがどんなに強くても何者でも関係ない。レットは私の友達よ。」


「そうだな、何も変わらない。あいつは俺の命の恩人で戦友だ。」



ギルバート・アズイールside


「ねぇ、ギル。お前はレット君についてどう思う?」


「どう、ですか。率直な感想をいえば驚異でしょうか。

あの力はもはや人のものではありません。

彼の気分次第で国が滅ぶ可能性すらあります。」


「では、どうするべきだと思う。」


「・・・どうもしません。というより何かする必要はありません。

彼が牙を剥くのは悪しき権力者に対してです。

ならば自分は正しくあればいいだけですから。」


「自分で正しいと思っていてもレット君には間違っていると判断されたらどうする。

それにレット君自身が悪の道に進む事だってあるかもしれないよ。」


「確かに自分とレットの間での価値観の相違はあるかもしれません。

でもレットは人です。話し合いの余地はあります。

『人間言わないと何もわからない。』この言葉ってレットの言葉ですよね。」


「・・・そうだよ。」


「それにレット自身が悪の道に進むなどありえません。

そうなる前に止めてみせますから。

『人間言わないとわからない』つまり『話し合えばわかる』ということです。」


「お前はたった半日ですごく成長したね。」


「衝撃的な体験をたくさんしましたからね。

父上、私は決めたんです。足掻き続けると。」


「そうか、じゃあ衝撃的ついでに史上2人目の王族の『学園』停学経験者になってみようか。」


「やはり史上初は父上だったんですね。」


変わらないと心に誓うもの、変わろうと足掻くもの。

それぞれの思いを胸に歴史に語られることのない大事件は幕を下ろすのであった。

今更ですが、列人の周りの人間ってすげーおおらかというか懐が広いというか。

普通はこんなの見せられたらもっと怖がったり、ネガティブな反応をしたりすると思うんですよね。

やっぱり列人の能天気さを知っているからでしょうかね。

そう考えるとギルバートが一番凄いかもしれません。

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