109_エレメンタルレッド
戦闘回です。
遂にこの時がやってきました。
109_エレメンタルレッド
列人達は王都の外れの森までやって来た。
見たところ特になんの変哲もない森だ。
とてもここにモンスターの大群が潜んでいるとは思えない。
だが、ここにきて列人と亜美、ミランダが異常に気づいた。
「列人お兄さん。あのスペース、どう見てもおかしいよね。」
「ああ、明らかになんかあるな。」
「結界かしら?実際にあるものを見えない様にしているわ。」
森の中に生き物がいない大きなスペースがあったことに列人と亜美は不自然さを感じたのである。
それに対してミランダは結界が存在していると推測した。
実は列人は魔法が使えない為、魔法による隠蔽を見破る事ができない。
逆にミランダは補助魔法師である為、魔力の流れに敏感だ。
故に洞察力の鋭い列人は怪しいところまではわかるが原因が魔法である事はわからない。
ミランダは怪しい場所の発見は列人ほどうまくないが魔法を発見する事には長けている。
両方同時にわかるのは亜美くらいである。
早速ミランダが結界の解除に掛かる。
魔法的な罠の解除も補助魔法師の領分である。
「じゃあ、まずは罠の種類を調べるわ。『ディテクトトラップ』」
『ディテクトトラップ』
罠探索用の魔法、術者の技量に応じて罠や結界の詳細を把握する事ができる。
「ミランダ嬢、罠の種類は?」
「はい、殿下。姿を隠蔽する結界と警報の魔法が設置されています。
中に入ったり隠蔽の結界に触ったりすると警報が発生し襲われる仕組みです。
結界の規模はかなり大きく中には相当数の敵がいると推測されます。
それからよくわからない召喚魔法陣があります。かなり大規模なものです。」
「そうか、どうするレット?」
ミランダに詳細を聞いたギルバートが列人に意見を聞く。
「そうだな、まずはギルバートとアズさん、亜美ちゃんとヴィルヘルムは危険のないところまで下がってくれ。
ミラは隠蔽の結界だけを解除したらすぐに亜美ちゃん達のところまで下がる。
モンスターは俺が全部相手をする。作戦は以上だ。」
「・・・それは作戦というのか。」
「細かい事言うな、じゃあ行動開始。」
「ああ、レット君頼んだよ。ヴィルもよろしくね。」
「お任せ下さい。陛下。」
「では、殿下。私達も下がりましょう。列人お兄さん、頑張ってね。」
「そうだな、アメリア。ではレット、私達は後ろから見させてもらうよ。」
列人の指示にそれぞれが行動を開始する。
尚、ヴィルヘルムは現在仕事モードなので普段通り真面目な口調だ。
本来ヴィルヘルムのデフォルトはこっちである。
「じゃあレット。結界を解除するわよ。『ディスペル』」
『ディスペル』
解除魔法。術者の技量に応じて解除可能な魔法の種類が変わってくる。
警報を踏まずに魔族四天王の魔法を解除できるあたり、ミランダの技量は相当高い。
「よし、結界が解けたならミラも下がって。」
「わかったわ。あとは頼んだわね。」
ミランダが列人に促されて急いで下がるのを確認する。
結界が解けてから中が見えるようになるまでわずかにタイムラグがあるようだ。
ミランダが下がり終わった頃、結界の中がようやく確認できるようになった。
何もないと思っていた森には無数のモンスターが存在していた。
主にオーガ種とレッサードラゴン、ロック鳥等の飛行種。その数100を優に超える。
おそらく飛行種に騎乗したオーガ種で城を強襲する予定だったのだろう。
その光景にミランダ、ギルバート、アズイールは唖然とする。
「ちょっと、なんなのあれ。あんなのに1人で勝てるわけないじゃない。」
「そうだ。すぐに助けに行こう。」
ミランダとギルバートが慌てて助けに行く事を提案する。
それを亜美が強い口調で止め、ヴィルヘルムが亜美に同意する。
「ダメだよ!列人お兄さんの邪魔になるから。」
「そうだな、ここはレットに任せるべきだ。」
「なにを言っているの。オーガロードやオーガキングまでいるのよ。
明らかに個人で戦えるレベルじゃないわ。」
「ねえ、落ち着こうよ。出発前にレット君が大丈夫だと言ってたよね。
じゃあそれを信じて様子見をするべきだと僕は思うよ。
ほら、始まった。」
5人が言い争っている内に列人の方で動きがあった。
場面は変わって列人側
列人の目の前には100を超えるオーガ種、飛行種の群れ。
しかもどちらも上位種が相当数含まれている。
よくもこれだけ集めたものだとある意味関心する。
列人は取り敢えず数を減らす事にした。
『火流双破斬』
列人の刀が膨大な熱量を持った炎を纏い、その連撃で次々にモンスターを蹴散らしていく。
あまりの威力にオーガどころか上位種のオーガロード、オーガキングですら止める事ができない。
あっと言う間に地上にいるオーガ種を根絶やしにしていく。
『キュウゥゥゥウ!!!!』
オーガ種を攻撃している隙を狙ってロック鳥が列人に殺到する。
その巨体を活かし、複数で列人を押し潰すつもりのようだ。
『日輪炎舞』
列人はそれに対して飛び上がるとともに縦回転をしながら放つ炎の斬撃で迎撃する。
斬撃を受けたロック鳥は数体同時に胴体から真っ二つになる。
だが飛び上がった先にはレッサードラゴンが待ち構えている。
『ガルルルルゥゥゥゥ!!!!』
列人の近くにいるレッサードラゴンは爪で列人を襲い、離れているレッサードラゴンは風魔法で攻撃してくる。
列人はこれに対して冷静に対処。お得意の空中多段ジャンプで爪を回避し、刀で風の刃を弾き返し、全ての攻撃をことごとく防ぐ。
『赤刀一閃』
列人は空中多段ジャンプで空中の敵に近づき確実に首を落とし数を減らしていく。
『キュウウウゥゥゥ』
数体のロック鳥が勝てない判断し、狙いを亜美達の方に変える。
『焼殺』
亜美達の方に向かったロック鳥達は突如現れた巨大な炎によって全て焼き払われる。
ほどなくして敵は全滅した。
それを見ていた5人の内、亜美とヴィルヘルムを除いた3人は唖然としていた。
「・・・・炎の剣だと。」
「なんなの、あの力は。ありえないわ。」
「すごいね。話では聞いていたけど実際に見るのでは大違いだ。」
「アメリアとヴィルヘルム団長は知っていたのか?」
「はい、殿下。私は以前見せてもらっていました。」
「殿下、あれが初代エレメンタルズリーダー_赤坂列人です。」
「ヴィルがよく言っていたよね。コル村に手を出すな。
この禁を破るとアカサカ=レットに滅ぼされるぞ、とね。
流石に誇張していると思っていたんだが事実だったとわね。」
「陛下、まだまだレットの力はこんなものじゃないですよ。」
「え!嘘でしょ。流石の僕も勘弁して欲しいんだけど。」
「「・・・・・・」」
列人の本気を初めて見た3人が驚愕する中、列人の方に異変が発生した。
先ほどミランダが発見した召喚魔法陣が青い光を放ち始めたのである。
よく見ると本来あるはずのモンスターの死骸がいつの間にかなくなっている。
実はこの時モンスターの死骸が召喚魔法陣発動のエネルギーとして使われていた。
魔法陣の光が収まるとそこには炎に包まれた体長20mを超す、手に巨大な棍棒を持った巨人の姿があった。
「あれは・・・『フレイムジャイアント』、災害指定モンスター。」
災害指定モンスターとは以前列人が変身をして倒したベヘモス同様、存在するだけで災害として扱われるモンスターのことだ。
このフレイムジャイアントは腕力こそベヘモスほどではないが、全身に炎を纏った状態で暴れまわり周囲に甚大な被害を齎す。
その上、炎耐性が高く普通の炎使いとは相性が悪いモンスターだ。
このモンスターには本来騎士団とAランク以上のハンターが1000人規模で対処しなくてはならない。
おそらく魔族側が対列人用に準備した切り札なのだろう。
これには亜美を除いた全員が唖然とする。
「まずい、すぐに騎士団を編成しないと。
ヴィル、レット君にも引き上げの指示を。」
「はい、陛下。流石にあれはレットでも厳しいだろう。」
「ダメ!!列人お兄さんの邪魔になる。
あの程度で列人お兄さんは、私のヒーロー『エレメンタルレッド』は負けないから。」
亜美が叫びながら皆を制止した瞬間、列人の身体から激しい炎が立ち上った。
『変身』
そこには全身赤いスーツを纏い、炎に包まれた男が立っていた。
『エレメンタルレッド』である。
『炎獄桜花咲』
列人の居合から放たれる超極大の炎がフレイムジャイアントを包み、本来火耐性が高いその身体を一瞬で消し炭に変える。
そして残ったのは直径50mほどの焼け野原と巨大なモンスターだったものの塊である。
この間1秒にも満たない。
列人はフレイムジャイアントの撃破を確認後、即座に変身を解除、亜美達の方に戻っていく。
亜美以外の全員が唖然とする中、列人がいつもの調子で皆に声を掛ける。
「ただいま。取り敢えず王都のゴミ掃除完了だな。」
「列人お兄さん!完了だな、じゃないよ!変身するなんて無茶しすぎだよ。」
「いや、悪い。確かに変身無しで時間を掛けて倒すって選択肢もあったんだけどさ。
ほら、そうすると皆に被害が出るかもしれないだろ。」
「わかってるけど、身体の方は大丈夫なの?」
「ああ、一瞬だったからそれほど負担は大きくないみたいだ。
まあ、それでも疲労感はかなりだけど。
こりゃ、長時間は無理だな。そう考えると百香はすごいよ。」
「そう、よかった。本当に無事で。」
「それより亜美ちゃん、いつものはないの?」
「ああ、そうだったね。『おかえりなさい、列人お兄さん』」
「ああ、『ただいま、亜美ちゃん』」
「「「「・・・・・・・・」」」」
いつも通りの亜美と列人に対して、他の者達は今起こった現象を未だに受け止めきれなかった。
災害指定モンスターが一瞬にして消し炭になったという非現実的な事実を受け入れられるほど彼らはまだ常識を失っていなかった。
ようやく列人も変身しました。
ヒーロー設定なのに主人公の変身に100話以上かかるとは・・・・
こいつら元が強いせいでなかなか使う機会がないから下準備に苦労しました。




