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108_停学殿下

前回、ギルバートとひと悶着やった続きです。

サブタイが結構なパワーワードですね。

108_停学殿下


「おい、おっさん。またくだらない事してくれて。どういうつもりだ。」


アズイールとギルバートが列人達と合流するのと同じ頃、

そこに丁度到着したヴィルヘルムが自分の主たる国王に発した一言がこれである。


「ヴィル~、いきなりだね。ギルもいるのにもう少し気を使った言い方してくれないかな。

ほら、親の威厳とかあるだろう。」


「アズさん、それ多分もうお亡くなりになっていると思うよ。」


「コラ!レット!あんたはそのアズさんって言うのやめなさい!

普通に不敬罪直行の物言いよ、それ!」


「ああ、ミランダ嬢。気にしなくていいからね。レット君も今まで通りでいいから。」


「・・・あの、アズイール陛下?多分そんなんだから父親の威厳とかが死ぬんだと思いますよ。」


「うわ~、何気にアミちゃんも酷い。なんで陛下が疑問形なの。」


「・・・父上、話を進めてください。」


アズイール達が騒ぐ光景に呆れながら、ギルバートが話を進めるように促す。

それに答えるようにアズイールが話を始める。


「まず、最初にさっきレット君達が話していた事についてだけど、こちらから追求しないよ。

今重要なのは君達の過去ではなくこれからどうするか、だからね。ギルもそれでいいね。」


「はい、父上がそう言うのでしたら。」


「次にヴィルの件だけど、今回はどうしても席を外してもらう必要があったんだ。

そうしないとレット君の本音が聞けないからね。」


「でしたら先にそう言えばいいのです。わざわざ嘘の時間を教えるなど。」


確かにアズイールの言う通り、列人の本音を聞く上でヴィルヘルムはいない方が好都合だった。

アズイールは一応はヴィルヘルムの主人であり、列人はヴィルヘルムのところで厄介になっている。

ヴィルヘルムの前でアズイールの息子であるギルバートに先ほどの様な罵声を浴びせるのは流石の列人も躊躇するかもしれない。

だがそれでは本音を言った事にならないとアズイールは考えた。

故にヴィルヘルムに嘘の時間を教えた、というのは半分本音、半分建前で残りの半分はヴィルヘルムの反応を面白がる為だ。

ヴィルヘルムもそれがわかっているからあの第一声が飛び出したのである。

それはさておきアズイールは話を続ける。


「さて、では今後の話だがギル、ミランダ嬢と一緒にお前も停学ね。」


「「「「「・・・・は!!!!!」」」」」


「ああ、ついでにミランダ嬢と揉めた女子生徒3人も停学ね。」


「・・・・理由を聞きましょうか。」


5人が驚くのは当然の事である。

公衆の面前で王子をビンタしたミランダが停学になるのは当然として、王子自身も停学というのはいささか腑に落ちない。

その理由をギルバートが問い詰めるとそれにアズイールが答える。


「まず建前だけど、ミランダ嬢はギルをビンタしたから当然としてもだ。

3人の女子生徒はミランダ嬢とモニカ嬢を侮辱する発言をしており、その事がそもそもの発端だ。

ギルは女子生徒達の侮辱について追求せず、ミランダ嬢を責めた事で今回の事の引き金を引いたからだね。

まあ、要するに喧嘩両成敗だね。あくまでも建前上は、だけど。」


「では本音は?」


「一度、ギルには王太子ではなくただのギルバートとしてレット君の師事を受けて欲しい。

勿論レット君の同意を得られればだけどね。

その為には『学園』は枷にしかならない。」


「それで停学ですか。しかし王族が停学など前代未聞ですね。」


「いや、一応停学になった事がある王族はいるよ。目の前にね。」


「あなたは一体何をしたんですか。」


「まあ、僕の話はいいよ。それよりギルは停学に了承してくれる?

正直今回の件は王族を停学にするには少し弱いから自主的に停学処分を受けたって形にしたいんだ。」


アズイールの問いかけにギルバートは少し難しい顔をする。


「私は構いませんが、レットはどうなんでしょうか。

正直な話、レットの私に対する印象は良くない。

私としては命が掛かっているし、師事を仰ぎたいのだが。」


「・・・アズさん。一つ確認と提案がある。」


「何かな?レット君。」


「まず、確認から。ギルバート。どうして俺に師事を仰ぎたいと思った。」


「・・・私が命を狙われている事は父上から聞いた。

そしてレットに師事を仰ぐのが最善だと父上がおっしゃられたから。」


「つまり、お前自身は俺の実力とか為人を知らないと。」


「・・・まあ、そうなるな。だが噂ではある程度は確認している。

なんでも盗賊ギルドを単独で壊滅させたとか。」


「あくまでも噂だ。自分の目で確かめたものじゃない。

そこで提案の方なんだが、これから俺の実力を見せようと思う。

ついでに王都周りのゴミ掃除もする。」


「ゴミ掃除とはなんだい?」


列人の提案の内容にアズイールが疑問を投げかけ、それに対して列人が答える。


「先日、百香が得た情報だが王都の外れに魔族がモンスターの軍隊を潜ませているらしい。

目的は『学園』生徒つまりギルバートへの襲撃と国王アズさんの暗殺。

その内『学園』の方は幹部の1人が取りまとめているから今すぐ手出しは難しいし正確な場所もわからない。

だがアズさんの方は元々指揮する予定だった『軍師』が百香に倒されたし、場所の情報や規模も聞き出している。

おそらく俺1人で対処可能だ。そいつらを今始末しておきたい。」


「つまり、その見学にギルも連れて行きたいと。」


「そういう事、どうだろうか?」


列人の提案にギルバートとアズイールが少し考え込んでから答える。


「・・・私としてはありがたいが父上はどう思いますか。」


「そうだね。できれば僕も行きたいかな。ただそうなると護衛の問題があるね。

足手纏いになるなら遠慮するけど。」


「そうだな。ギルバートの護衛は亜美ちゃんとミラに任せたい。

アズさんについてはヴィルヘルム、頼めるか?」


「ああ、問題ない。ただしそのおっさんが大人しくしているというのが条件だ。」


「ところでレット、アメリアとミランダ嬢が私の護衛とはどういう事だ。」


「ああ、ミラがゴリラになっているのはこの間の訓練で知っているだろう。」


「ちょっと、レット!言葉を選びなさいよ!いい加減ぶっ飛ばすわよ!」


「・・・・ああ、以前とは比べ物にならないくらい強くなっているのを目の当たりにした。」


「亜美ちゃんはそれ以上のゴリラだから。」


「列人お兄さん。言い方。」


「・・・アメリアも強いのか。」


列人のあんまりな説明にミランダと亜美が憤りを顕にし、ギルバートが少し呆れながらフォローする。

ここでギルバートから列人にある質問が行われる。


「レット、最後に質問をしたいのだが、先ほどから名前が出ている『モモカ』というのはモニカ=ローゼスベルク嬢でいいのか?」


「ああ、ようやくその質問が来たか。そうだ、お前らの『学園』にいた『モニカ』は今コル村で『百香』として暮らしている。」


「先ほど、そのモモカさんが魔族の幹部を倒したと話していたが。」


「ああ、その通りだ。今の百香をモニカと思わない方がいいぞ。

俺はモニカを知らないが聞く所によると完全に別物らしいからな。」


「そうか、つまり私はモニカ嬢に謝る事はできないということか。」


「でもまだ百香がいる。そっちにはちゃんとけじめをつけた方がいいだろう。」


「そうだな。私は足掻くと決めたのだから。」


「そうか、でも顔面ワンパンくらいは覚悟しとけよ。」


「・・・・モモカさんとは一体どんな人物なんだ。」


百香に会うことに一抹の不安を抱えながら、それでも前に進むと決意するギルバートだった。

こういう今いる人物に記憶が上書きされるタイプにおいて、その人物が何者かと言うのはなかなか難しい問題ですね。

特に百香はモニカとして17年暮らした後の上書きですので、モニカのウェイトが大きく、今の状態はモニカが死んだと言う見方もできるわけです。

下手をすれば百香によってモニカが殺されたと考える人も出るかもしれません。

今作品ではそういう人物が出てきていないのがある意味幸いですね。

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