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106_ミランダの激昂

『学園』でのミランダの話です。

106_ミランダの激昂


『学園』訓練場


現在ミランダが在席するクラスでは魔法の実技訓練が行われていた。

といってもコル村で行われるような命懸けのキチガイ訓練ではなく的に魔法を当てるだけの平和なものだが。


「おお!!!」


「すげー!!」


「訓練用の的がバターみたいに簡単に切られているわ。」


「流石、王子殿下の炎の剣だ。」


訓練場の一角でギルバートが訓練用の的を切り裂いた事に他の生徒がどよめき賞賛の声をあげる。

そこから500mほど離れた林の影でその様子を観察する者がいた。


「ねえ、列人お兄さんから見てギルバート殿下はどう。」


亜美の質問に列人が難しい顔をしながら答える。


「ダメだな。剣の熱量が全く足りない。おそらくイメージ力不足だろう。

燃焼の仕組みを正しく理解してないからうまくイメージできていないんだろう。」


「はぁ、列人お兄さんは厳しいね。

確かに『学園』の授業内容って地球に比べたらお粗末だけど、そんな中であれだけできていればすごいと思うよ。」


「まあ、亜美ちゃんが言っている事は理解できるんだけど、戦場ではそんなの関係ないんだよな。

弱ければ死ぬだけだよ。だから可能な限り鍛えないといけないんだよ。」


列人の評価はヒーローらしい厳しいものだった。

少し重くなりかけた空気を払拭する為、亜美はミランダの方へ目を向ける。


「ミラの方はどうかな。」


「なんかイメトレしてるな。的を殴るのが無意味だと思ったんだろう。」


「まあ、そうだよね。ミラには必要ないもんね。」


「あ、なんかミラが他の生徒に絡まれてるぞ。」


「え!本当だ。・・・これは一旦様子見だね。」


場所は戻って訓練場の隅の方

ミランダはイメージトレーニングをしていた。


(まずは全身の魔力を『感知』して掌握、全身に均等に魔力を『移動』させ、その魔力を『増幅』、魔力の性質を鉄の様に硬く『変化』、硬くなった魔力を自分の拳の周りに固める形で『放出』し固定。)


ミランダは列人達と訓練をしている内に自分の攻撃手段の少なさを痛感していた。

現在訓練として行っているのは列人達が行っていた攻撃手段のイメージだ。

今、行っているのはバクラの『破岩掌』のイメージである。


そんなミランダに3人の女生徒達が声を掛けてくる。

3人共ミランダと家柄が近い伯爵家、子爵家の令嬢である。


「あら、ミランダ様。こんな隅の方で目を瞑ってお加減でも悪いのかしら。」


「それとも、サボりかしら。まさか真面目なミランダ様に限ってありえませんわよね。」


「言ってはいけませんわ。ミランダ様は補助魔法以外使えないのですから。」


「そうでしたわね。失礼いたしました。攻撃手段持ちではないお淑やかなミランダ様にはこの訓練は退屈でしたわね。」


この国の魔法事情だが、別に補助魔法が劣っているという訳ではないが、直接攻撃手段となる魔法の方が評価が高い傾向がある。

そしてギルバートの様に1属性で強力なものや、ジーニアスの様に複数の属性を攻撃手段として使いこなせる者が持て囃される事が多い。

つまりミランダは決して落ちこぼれではないが地味な補助魔法師というのが世間の評価である。

3人の女生徒はその事を揶揄してミランダを笑いものにしようとしているのである。


その事でミランダは今、若干頭にきていた。別に補助魔法師を馬鹿にされたからではない。

自分が列人達に追いつく為に必死にイメトレをしていたのを邪魔され、サボっていると言われたからである。


「・・・・・・」


ミランダは黙ったまま、おもむろに立ち上がり訓練用の木刀に手を掛け、的の前に立つ。

ミランダはイメージしていた。

(まずは肉体強化、それから木刀の周りにも魔力を移動させ、鋭い刃の形に固定。只管硬く、只管薄く、只管鋭く)

そして居合の構えを取る。そう、これは列人の刀技のイメージである。


シュン!!


ミランダから放たれた居合の斬撃が訓練用の的を紙切れの様に切り裂く。

その断面は木刀を使っているにも関わらず、業物の剣で達人が切った様な見事な断面である。


「え!うそ!」


「・・・ありえませんわ。」


「・・・・何かの間違いよ。」


ミランダに絡んだ3人の女生徒は唖然とする。


だがミランダの行動はこれでは終わらない。

的を切り裂いた後、その足でそのまま近くの大木まで移動する。

そして再びイメージする。

(今度は木刀周りの魔力を厚く、重く、幾重にも圧縮、只管強く、只管重く)

そして木刀を中段に構える。これは百香の棒術のイメージである。


ズドーーーーーン!!!!


ミランダの棒術の突きによって大木に大穴が穿たれ、そのまま倒れる。


「「「・・・・」」」


3人の女生徒はただただ目の前の光景に驚愕し、押し黙る。

これを見ていたこの場にいる全ての生徒が信じられないものを見る目で倒れた大木とミランダを見比べる。


その光景を見たミランダの胸中はと言うと、

(しまった。頭にきていたとは言えやりすぎた。これもレット達のせいだわ。

私もコル村に常識を落っことして来ているみたい。気を付けないと。)

などと自分が常識を失いかけている事に危機感を感じていた。

コル村では大木を切り倒したり、岩を素手で砕いたりするのは日常風景である。

ミランダは居た堪れなくなり、元いた訓練場の隅っこでイメトレの続きをするのである。


一方、遠くからこの様子を見ていた列人達はと言うと、


「・・・なんか、ミラ、やらかしちゃったみたいだね。」


「ああ、そうだな。他の生徒達すげービビってる。」


「当たり前だよ。普通大木を叩き折るなんてできないもん。」


「そっか、一般人はそんなものなのか。俺にとっては大木を折るとか当たり前だったから気付かなかった。」


「どうするんだよ。完全にミラが浮いちゃってるよ。列人お兄さんのせいだよ。」


「え!俺だけのせいなの。ちょっと理不尽じゃない。」


「いいえ!お兄さんがミラをゴリラにしたから悪いんだよ。」


「えっと、エレメンタルズナンバー1ゴリラ女子の亜美ちゃんがそれを言うの。」


「酷いよ!こんな小さくてか弱い少女を捕まえて!」


「小さくてか弱い少女は10トン超のワイバーンとロック鳥の素材を引きずったりしません。」


ちなみにエレメンタルズのゴリラ度の順位だが

1位は当然列人で、2位が意外にもバクラ、3位が亜美で、普段ゴリラ呼ばわりされている百香が4位である。

バクラは元々戦闘経験豊富な上、霊力の才能も高かったため、霊力の使い方を知ってからはみるみる力を付けていき、単純な腕力だけならば列人の次に強くなっていた。

ただし技術面では他の3人に劣る為、結果総合的な実力は4位となる。それでも地球の元ヒーロー相手に大健闘と言えよう。


列人達がミランダについて散々な事を言いながら騒いでいる頃、ミランダはまた先ほどの3人に絡まれていた。


「ミランダ様、これは一体どんなインチキを使ったのでございますか。」


「・・・・ふふ、インチキ、か。」


3人の中でリーダー格の伯爵家の少女が言い掛かりを付けてきた事に対してミランダは思わず苦笑した。

(そりゃそうでしょうね。私だってエレメンタルズを知る前にこんなもの見せられたらインチキだと思うわ。)

ミランダが少女の言い分に納得し、黙って聞いているのを無視されたと勘違いしてさらに捲し立ててくる。


「だんまりかしら。そうやってお高く止まって。

あの『無気力令嬢』にでもなったつもりかし「黙りなさい!」」


「「「ひっ!!」」」


少女のこの発言にミランダが切れた。この少女の発言はモニカを侮辱するものだったからだ。

しかもこの少女達は事もあろうにモニカの裁判で有罪に追い込んだ証言をした貴族達の一部。

つまりミランダにとっては元々敵であり、怒りを向ける対象なのだ。

ミランダの恐ろしい量の殺気に3人の少女達は怯み、他の生徒達も不穏な空気を感じ取る。


「あなた達にあの方の何がわかるというのかしら。

くだらない嫉妬心であの方を無実の罪に追い込んだ汚らわしいあなた達に。」


「「「っぅ!!!」」」


ミランダの近くにいる者は皆ミランダの殺気に当てられていた。

一番近くで殺気を受けた少女3人の状態は特に酷く全身が震えて歯がガタガタと噛み合っていない。

他の生徒達が動けない中、1人だけこの状況で動ける物がいた。ギルバートである。

ギルバートは不穏な空気の発生源であるミランダを止めようと声を発する。


「ミランダ嬢、落ち着け。

何があったかは分からないが、その様に殺気立っては君にとって良くない方向に話が進みかねないぞ。」


パチン!!


辺りの空気が一瞬にして凍りつく。


ミランダがギルバートの頬をビンタした。


それでもミランダの激情は収まらない。その荒ぶる思いをそのままギルバートに叩きつける。


「何があったかわからないですって。あの方が、『モカ』が侮辱されたのよ。

なんで元とは言え、婚約者だったあなたが一番に庇わないのよ。

それは裁判の時だってそうよ。あの方がなんと言おうと関係ない。

どうして無実を信じて徹底的に調査できなかったのよ。

だから『モカ』が無実の罪を着せらてた上に死ぬような目にあったんじゃない。」


「・・・・」


「なんとか言いなさいよ!!このバ「そこまでだ。」」


激昂するミランダの元に慌てて駆けつけた列人が無理やりミランダを止める。


「なんで邪魔するのよ!!あんたは悔しくないの。『モカ』が侮辱されたのよ。」


「ああ、頭にきている。だが今のこいつに言っても仕方がない。

こいつは自分がやった事の重大さに気づいていない。

今こいつを糾弾しても君の状況が悪くなるだけだ。」


「・・・・うぅ。」


ミランダは列人に諭され、怒りを無理やり押し殺し、悔しさの涙を必死で堪える。


「騒がせてすまなかった。ミラはこちらで引き取る。

君達は引き続き授業を続けてくれ。」


列人は吐き捨てる様にそう呟き、ミランダを連れて訓練場を後にした。


その後、ミランダの無期限の停学が決まった。

ミランダは一番にモニカの心配をしないギルバートに対してお怒りです。

ギルバートもミランダの怒りからその事に漸く思い至ります。


さて、なかなか拗れていますが、これからどうなるかは次回以降のお楽しみと言うことで。

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