102_桃色の復活
ツァオガウ戦の事後処理です。
102_桃色の復活
ツァオガウ襲撃の次の日
百香は今、途方にくれていた。
原因は目の前にいる4人、ヨーゼフ、レベッカ、アルト、マーヤである。
「よかった。モモカおねーちゃん生きてたんだ。」
「でも酷いよ、モモカねーちゃん。どうして死んだなんて嘘つくんだよ。」
「ほんと~にそうだよ~。モモカちゃんのお目目が開かなかった時は私も心臓が止まりそうだったんだよ~。」
「全くだ。モモカちゃんがいなくなるなんて人類の損失だからな。」
この4人は百香の事を本当に死んだと思っていたらしい。
アルトとマーヤは仕方がない。字が読めない、つまり回覧板が読めないのだから。
しかし、ヨーゼフとレベッカはおかしい。その辺を問い詰めるべく百香が口を開く。
「ねえ、ヨーゼフ(差別主義者)、レベッカちゃん。
どうして2人は私が死んだと思ったの?回覧板に今回の作戦について書いていたはずだけど。」
「え~!ふくちょー、回覧板ってみる~?」
「いや、見ないな。もしかして書いていたの?
あと、俺の名前呼ぶ時なんか後ろに余計な物ついてない?」
「気のせいじゃないかしら、ヨーゼフ(女の敵)。それよりちゃんと回覧板見なさいよ。
これから私達の連絡手段は回覧板がメインになるんだから。」
「絶対なんか付いてるよ。さてはアルだな。あいつモモカちゃんに変なこと吹き込んでないだろうな。」
「別に列人からは何も聞いていないわよ、ヨーゼフ(おっぱい星人)。
あなたがミラの胸をジロジロ見ていたとか、持たざる者(貧乳)に対して差別発言をしていたとか、持つもの(巨乳)を賛美し媚びへつらっていたとか、そんな事は全然、一切、何も聞いていないわよ。」
「やっぱり聞いてるんじゃないか。アルの野郎、後で絶対に締める。」
「じご~じとくだよ、ふくちょー。そんな事よりモモカちゃんなんか怖いけどどうしたの~。」
「あ、ごめんね、レベッカちゃん。私もまさか近くに差別主義者がいたと思わなくってショックだったから。
そこのヨーゼフ(ドスケベ野郎)は女の敵だからレベッカちゃんも気を付けないとダメよ。
(胸が)もう少し成長したらきっとレベッカちゃんの事もいやらしい目で見てくる様になるから。
アルト君、こんなダメな男にならないようにね。」
「うん、わかったよ。モモカねーちゃん。」
「わ~、ふくちょーってサイテ~です。流石の私もドン引きです。」
「俺ってそこまで言われるほどの事してる?」
「してるわよ、ヨーゼフ(人間のクズ)。大体女性の胸をジロジロ見るとかありえないわ。」
「ねえ、モモカおねーちゃん。そんな事より絵本読んでよ。」
「そうね。ヨーゼフ(社会悪)の事なんて放っておきましょう。
マーヤちゃんとの約束の方が大切よね。どの本にしようか?」
「あ!マーヤ、ずるいぞ。モモカねーちゃんは俺と剣の稽古してくれるって約束してたんだから。」
「ごめんね、アルト君。今は運動は禁止されているの。
それと先にマーヤちゃんと約束してたから、アルト君とはまた今度ね。」
「ちぇ、仕方ないな~。モモカねーちゃん、絶対だからね。」
「ねえ、俺の扱い酷くない。俺泣くよ、いいの。」
「うるさいわね、さっさと仕事に戻りなさい。レベッカちゃん、その馬鹿連れて帰ってくれる。」
「うん、わかったよ~。モモカちゃん。」
「とうとう隠す事すらしなくなった。」
「ほら、帰るよ。ふくちょー。」
この後、百香はお昼になるまでマーヤ、アルトの相手をした。
久しぶりに流れる穏やかな時間を百香は満喫した。
尚、蛇足だがレベッカはD手前のCで未だ成長中である。
午後は散歩と村人へのお礼行脚である。
村の中での散歩はゲオルグから許可をもらっている。
勿論それ以上の激しい運動は禁止、それを破るとゲオルグが怖そうなので百香は素直に従う。
「こんにちは、スコットさん、アンナさん。
今回は本当にお世話になりました。」
「気にしなくていいわよ。村を守るために頑張ってくれてるんだもの。」
「そうじゃよ、わしらに出来る事があったらなんでも言うといい。」
「それより、体の方はどうなの?調子が悪かったら必ず言うのよ。」
「ええ、わかってます。お気遣いありがとうございます。」
「いいのよ。村を守ってくれてありがとうね。モモカちゃん。」
村人は皆口々にお礼と百香を気遣う言葉を掛けてくれた。
百香は自分のやって来た事は間違いではなかった事を再確認すると共に列人がこの村を守る理由に納得していた。
『ヒーローは市民の命を守り、市民はヒーローの心を守る。』
そんな前世での教えを思い出しながらハンターギルドにやって来た。
ギルドに入ると仕事モードのフィオが百香に声を掛けてくる。
「こんにちは、モモカさん。身体の方は大丈夫ですか。」
「フィオちゃん、こんにちは。
怪我とか疲れとかはないんだけど、運動はゲオルグ先生に禁止されているから今日は散歩がてら昨日のお礼を言って廻っているの。」
「そうでしたか。問題がないようで何よりです。
マスター、ネスさんに会っていきますか?」
「ええ、そうしたいけど今大丈夫かしら。」
「確認してきますね。」
フィオが席を立ち、ネスを呼びに行くと他のハンターやギルド職員が百香に声を掛けてくる。
皆が口にするのは百香への感謝と心配と気遣いの言葉で、百香は嬉しさと気恥ずかしさでいっぱいである。
しばらくするとフィオが戻ってきて、マスター室に通された。
「いらっしゃい。モモカさん。」
「こんにちは、ネスさん。」
ネスがいつもの笑顔で挨拶をしてきたので、百香も笑顔で挨拶を返す。
「調子はいかがですか?昨日かなり激しい戦闘をして絶対安静だと伺いましたが。」
「ええ、おかげさまで。戦闘はしばらく無理ですが、散歩したり日常生活を送る分には支障はありません。」
「それは何よりです。あなたにもしもの事があったら悲しむ人が大勢います。
あなたの命はもうあなた1人のものではないんですからね。」
「・・・ネスさん、もしかして今回の作戦の事、怒っていますか?」
「ええ、怒っています。嘘でもああいうのは気分のいいものじゃありませんからね。」
「最近、怒りっぽくなってませんか。」
「以前はバクラさんが先に怒ってくれていましたので。
今ではそのバクラさんが問題児側に回りましたから私が怒るしかありません。」
「・・・なんか、申し訳ありません。」
「いえ、これは私の感情の押し付けでしたね。
あなたが村の事を考えて最善だと判断した作戦だったのでしょう。
『私は村を守ったんだ。』と胸を張っていいところでしたね。
本来私はギルドマスターとしてあなたに感謝を述べなくてはならない。
しかし自分を省みないあなたを見てると素直に賞賛する気になれません。
私もまだまだ未熟者ですね。」
前より怒る事が多くなったネスの小言はどこか優しげでその言葉には心配と気遣いに溢れていた。
「ネスさんって、村長とかにならないんですか?」
「なりませんよ。あんな裏切り者がやっていた仕事なんて。」
「・・・・そうですか。」
ネスの態度が先ほどとは打って変わり刺々しいものとなる。
ネスのこのような態度は本当に珍しい。
コル村は10年前の騒動の頃から村長不在なのだ。
理由は10年前の騒動で真っ先に村長が村から逃げて、それ以降誰もやりたがらないからである。
コル村の中では村長=裏切り者という構図が出来上がっている。
この時、百香はこの事について知らず、後から列人に聞く事になる。
ネスはそんな自分の態度が失敗だったと思い、慌てて謝罪する。
「申し訳ありません。おかしな態度を取ってしまって。
私は今まで村を守ってきたハンターギルドの仕事に誇りを持っています。
今更、村長になどなれませんよ。」
「すみません。差し出がましい事を言いました。」
「どうかお気になさらないでください。
そういう役職が必要なのも事実ですから。」
その後百香は、ネスと世間話などを軽くしてから医務室に戻った。
今はそちらで入院扱いである。
それから、数日後。
チル集落から戻ってきたゲオルグが百香の健康診断をした結果
「・・・モモカさん、たいへん言いにくいのですが、あなたもレット殿と同じ運動不足の傾向が見られます。
今日で退院です。戦闘行為も解禁ですが無茶はしないでください。
はぁ、あなたもやはりレット殿と同類だったようですね。」
「はぁ・・・ありがとうございます。」
退院は嬉しいが列人と同類扱いされた事に釈然としない気分の百香である。
今日はアルト君の剣の稽古を見てやるか、それとも久しぶりにソロで狩りをするか、今は体を動かしたい気分でいっぱいの百香だった。
百香がコル村に来ておよそ2ヶ月ですが、もうすっかり村の住人です。
今トーマスが来たら、列人と一緒にトーマスを殴る側に回っているかもしれません。




