知ラヌ社ニ狐鳴ク
*この作品はpixivで投稿した作品のリメイクです。
何が起こったのだろうか。
目が覚めると僕は賽銭箱のそばで横たわっていた。
体を起こし周りを見渡す。
そこはさっきまでいた場所と同じはずなのに。同じはずなのに、見える景色は全く違うものだった。
古びた社は最近建てられたかのように思えるほど綺麗になり、葉は落ち枝の上に雪が積もっていたはずの木々には桃色の花びら...満開の桜が広がっていた。
周りを見渡していて気がついたが、いつもより視線が低くなっている気がした。前髪が目にかかった。あれ、僕ってそんなに髪長かったっけ...
それだけじゃない。頭は少し重く、背後に妙な重量を感じた。思わず後ろに手を回す。
モフッ
手にふわりとした感触が伝わる。
モフッ、モフッ
二度、三度とふわりとした何かに手で触れる。骨盤のさらに後ろ当たりを触られる感触がある。
次に側頭部に手を当てる。耳があったはずの場所には何も無く、ただ、滑らかな肌に手が触れる。
そして頭頂部に手を伸ばす。もふりとした何かがそこにはあった。
足元を見る。そこには幼さの残る小さな、しかし確かな丸い二つの山が、男には無いはずの膨らんだ胸があった。
思わず股間に手を伸ばす。しかしそこには何も無く、ただ空を切るだけだった。
すぐそばの池を覗き込む。
そこには着物を着込んだ少女が映っていた。体格は12、3歳程度だろうか。腰まで伸びた狐色の髪に縦に割れた瞳孔、その大きな瞳の色は紅葉のように紅い。着込んでいる着物は上から下へ、白から紅へと鮮やかなグラデーションがかかっており、金色に枠どられた菊の花が散りばめられている。
そして小さな頭からは大きな耳、おしりからは大きなしっぽが。色は髪とおなじ狐色。
僕が動けば水面に映る少女も同じように動く。
頭の中で今の状況を整理し、一つの結論へとたどり着く。
僕は狐の少女、妖狐になってしまったらしい。
「なん...だ...これぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
可愛らしい絶叫が辺りにこだました。
どーも、帆楼です。
これにて前編部分は完結となります。後編部分は近いうちに出したいと思います。(願望)
それでは、ごゆるりとどうぞ!