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この世界は、『転生したBL好きの悪役令嬢』と『転生したハーレムルートを希望するヒロイン』がいる世界ということ。
自分を見返してホッとしたのは『転生してハーレムルートをひた走る女の子』の前世と考え方を、自分の記憶として持っていないことだ。
つまり、例えば、ほんのりGL好き女子→ハーレムルート好き女子に転生→乙女ゲームヒロインに転生→悪役令嬢小説の悪役ヒロインに転生、と言うような複雑怪奇な転生では恐らくないってことだ。
これは割と重要で、ほんのりGL好き属性である自分が、転生したくらいでハーレムルート好き女子に変わってしまうという事実が認められないし許せないし、BL好き属性に変じる以上に黒歴史だ。
当然ノーマルカップリングだった場合でも、一対一の純愛を押し……ではなくて。
少なくとも、私は『ハーレムルート』を選択したいとも思わないし、悪役令嬢を囮役にしようとも思わない。
当然攻略対象に突撃したいとも思わない。
なぜなら、
私の
押しは
『悪役令嬢とそのメイド』
だからです。
そもそも平民として生まれたんですよ。
前世も当然一般市民です。
クラスの中で行われているグループ派閥の争いとか、できれば近寄りたくもなかったんですよ。
中立地帯がいい。
身の丈にあった立ち位置が希望です。
高望みは身を滅ぼします。
転生悪役令嬢小説の中でも、そう説いています。
ですので、私は基本的に攻略対象には近寄りません。
そして悪役令嬢にも近寄りません(眺めることができるなら遠目から眺めます)。
……そう思って、計画を立てていたんですよ。
穏便に過ごすため、乙女ゲームの舞台と言われている、王立学園での生活方法を。
いや、いっそ学園へ進学しないで済む方法を考えていました。
学園に行くきっかけになった、『聖女』認定とやらも吹っ飛ばせないかなって。
そうしたら、王侯貴族と平民、立ち位置が違いすぎて恋愛になんてならない、はず。
本来のストーリーは、悪役配置された公爵令嬢が、断罪ルートを回避するために王子様との穏便な婚約解消を望み、清純で正統派の高貴な令嬢になるべく努力し、ヒロインには極力近寄ろうとしないわけです。
そこに、ヒロイン側でも平民でいるための努力をしつつ、攻略対象にも悪役令嬢にも近寄ろうとしないのであれば、何も起こらないのではないかと。
何も起こらないで(切実)。
そう思っていた時期が私にもありました。
何故か、王子様が私と市場デートしようと偶然を装って街中をウロウロしているし、王子様が私に会うために王都の教会まで会いに来るし、森に山菜を取りに行って魔物に襲われたところを王子様とその護衛候補の子どもたちに助けられるし、攻略対象とのフラグがめいいっぱい。
これ、ゲームの強制力?それとも小説の強制力?
……これ、私の目線で見たら、なんか普通にストーカーされてる気になるんですけど、気のせい?
本来の小説ならば、ストーカーしてるのはヒロインの方なんだろうけどなぁ……。
もっと言うと、乙女ゲーム単体のシナリオで考えるならば偶然の産物。
いや、どうだろう。最初のスリ事件の時にどちらも一目惚れする設定だったから、お互い探し合ってたんだろうか。
ただ、最初のスリ事件で誘われた『市場を一緒に回る』を断ると、市場デートも教会デートも無くなるはず、…………と、悪役ヒロインの目線で書かれた巻末ショートストーリーに書かれてた。
なのに何で発生してんの?
……いや、もうややこしくてややこしくて、何がなんだか。
なんなの、ヘッドアタックがヒロインとの市場デート並に衝撃を感じたと言うことなの?
王子様、頭大丈夫?いや、王子様がぶつけたの、顎なんだけどもね。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。
続きがありますので、よろしければお読みくださいね。