つかみどころの無さすぎる鉄壁
「それじゃあね、悠くん、また、明日。久しぶりにぼっちだぁ…」
そんな悲しそうな声でボソッと言うんじゃない。俺まで悲しくなるだろうが。
「さて、生徒会室か。」
初めて赴くことになるが、そもそもその機会が訪れるとは夢にも思っていなかったぞ。しかも、呼び出しで、な。
まだ、6月だぞ。俺がこの高校に入ってまだ2ヶ月ほど。一体俺が何をしたと言うんだ。初めこそ不慣れな環境で赤点続きであったが、コツをつかめば後は造作も無いことだった。最早、九割を下回る方が難しい。
この世界には魔素が無い故、魔力を補うことも出来ず我が奇跡を行使できぬが、もとより最強の魔王である俺様には関係の無いこと。魔法が使えずとも、我が肉体は不滅!世界記録を塗り替えてしまうほどの身体能力。運動部からの勧誘が今でも続いている。だが、男どもと友情を育んでいる暇は俺には無い。
加えて、この荒々しくも爽やかな甘いマスク!
「自分で自分が恐ろしい。」
そうこうしているうちに着いたか。
「失礼するぞ。」
誰もおらんでは無いか!どういうことだ、この俺様を呼び出しておきながら不在とは…仕方が無い、20分だけ待ってやろう!
どこかに腰を下ろしておくとするか。ふむ、あの生徒会長と書かれたプレートの置いてある無駄にでかい机、いいな。
「やはり、机と椅子は機能性よりもデザイン性とデカさだな。俺の偉大さが強調される。」
おぉ、教室の席とは座り心地から違うでは無いか。俺を差し置いてこの席に座るとはおこがましいやつだ。
ん?ようやく来たな。この俺を待たせるとは全くけしからん!おこがましい!活を入れてやろう。
「失礼しまーs」
「いつまでこの俺を待たせるつもりだ!こぉの痴れ者がぁ!」
「ひっ!そ、そんな怒らなくてもいいじゃん、急に大きい声怖いよ…え、てか誰?」
入ってきたのは小柄な女だった。明希と同じくらいか、少し小さいかといったところか。制服もぶかぶかではないか。いや、あれは萌え袖というやつか?
何より目を引くのは、ピンク髪。淫乱色だな。淫乱色の髪をおさげで結んでいるが、片方だけだな。片お下げとでも言うのか。
一言で言えばギャルだな、気が強そうだ。
ならば、その強気な瞳を曇らせてやろう!
「そんなことは俺が知ったことでは無い!俺を呼び出した以上、貴様には俺を丁重に出迎える義務があるぅ!」
「あの聞いてる?もしも~し。」
「何をごちゃごちゃ言っている貴様。…ん?な、なんだと!?」
生徒会長とやらの顔や声は正直言って、覚えていない。だが!女性であったことは確かだ。だが、よくよく見れば今目の前にいるこいつは…俺としたことが大事な所を見落としていた。くそっ!
「俺としたことが…申し訳ない。人違いだったようだ、反省する。」
「やぁっと、返事してくれたよ。入ってきたら急に怒鳴られるんだもん、怖かったんだけど、マジで。」
「本当にすまなかった、少々気が立っていたようだ。急な呼び出しのせいで予定が狂ってしまってな。」
「え、君も?そうそう!だよね~!お昼に急に呼び出しされるんだもん、れいあもマジ萎えって感じでさ。今日は茜と愛理とカラオケだったんだよ?早く帰らせてー」
「それは、お互い災難だ。やはり、貴様もあのよく分からん張り紙の犠牲者だったか。」
「そだよー、てことはやっぱ君が噂の神喰悠理くんってわけだ。噂通り、常識無しの中二病乙って感じなんだね、うける。」
「誰が、常識無しの緊急搬送不可避の末期中二病乙だ!逆に、貴様に関しては想定外だな。」
「そこまで言ってないんだけど。え、マジ?どういう風に?気になる気になる。」
「いや、れいあ、という名前から女だろうと思っていたのだがまさか男だったとは。この2ヶ月で2回目だ、男を女と早とちりしてしまうのは。」
「は?」
「ん?」
「え?見たら分かるよね?私、女なんだけど?超絶美少女れいあたんですけど?」
なにを言っているんだ、こいつは。そんな馬鹿なことがあってたまるか!あり得ん、あり得てはならんのだ!そんな、そんな!
「そんな命綱があってもフリーフォールしそうな絶壁の胸でか!?」
「ぶっ殺すぞ、てめぇ。」
貧乳とかそういうレベルではない、完全絶壁無乳の女と俺は出くわしてしまった。




