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運送屋の交流記  作者: ねんねこ
第5話
36/83

07.

 当初は床を滑るような勢いで走って来ていたゴーストナイト達だったが、3体いるうちの2体はふわりと浮き上がり、イザークさんを頭上から襲う。手にはいつの間に持っていたのか、スピアのようなものを持っていた。

 頭上から降り注ぐ2本のスピアを難なく躱したイザークさんが、真正面から向かってきたゴーストナイトの1体を真っ二つに斬り裂いた。音も無く斬り伏せられたゴーストナイトは不気味な声を上げるとややあって四散する。見た目はどう見てもゴーストなのに物理攻撃が普通に効く事に困惑を隠せない。

 しかし、飛んでいるゴーストナイトはどうするのだろうか。やはりここは、イザークさんをモンスターの所まで運ぶしかないだろうか。


「イザークさん、私が――」

「何?」


 思わず言葉を切った。何と、イザークさんは服の下から銃を取り出したのだから、そりゃ絶句もする。騎士とは何だったのか。


「あの、あのー……それ、何ですか?」

「知らないの?銃だよ、銃。ああ飛び回られちゃ厄介だからね。これで撃ち落としてやろうと思って」

「イザークさんって騎士じゃなかったっけ?」

「そうだよ。でも、別に騎士が銃を使っちゃいけないなんて決まりは無いでしょ。便利な物は使うに決まってるじゃん」


 そう言って銃に居場所を追いやられたはずの騎士は手慣れた様子で銃口をモンスターに合わせた。

 そのまま発砲。ほぼ同時に破裂音がし、ゴーストナイトの1体が撃沈。四散する。

 同じ要領で最後の3体目に標準を合わせるイザークさんを見て私は思った。私って全然働いてないどころか、解説してるだけだなと。

 硝煙を漂わせながら、イザークさんは最後の1体を仕留め終えると自身の肩を叩きながら深い溜息を吐いた。


「技能、習得出来てないと思うけど報告しなきゃならないから、一度ギルドに戻って」

「あっはい。でも――今ちょっと思ったんだけど、最初、私って技能を習得しない方が良い流れだったよね?迷宮になんて行きたくないわけだし。もうこのままトンズラしちゃって良いんじゃない?」

「君と二人で?冗談じゃ無いよ。金はどうするのさ」

「えっ、お金の問題さえクリアすれば着いて来てくれるの?」

「だって君、技能のお陰で移動費ゼロなんでしょ?ちょっとした旅行くらいならただ乗りするよ」

「お、おおー。私、イザークさんと仲良くなってきたんじゃない?」

「ねぇ、寝言言ってないで良いからギルドに戻ってくれる?どのみち、君が技能を習得するまで依頼地獄は終わらないんでしょ?妄想している暇があったら、足を動かしてよ」


 イザークさんはやっぱりイザークさんだった。

 適当な事をほざいてみたが、サークリスギルドは好きだ。そんなギルドの言いつけを無視して小旅行なんて暴挙には出られない。


 ***


 依頼3つ目、場所は夕暮れの国、トワイライト・マウンテン。内容は肉食鳥の討伐である。


「――で。ここはどこなのさ」

「おかしいな、トワイライト・マウンテンに飛んだはずなのに」


 地図帳を見ながら移動したので行き先に間違いは無いはずだが、周囲は一面の闇。まだ昼間なので日が差していないのはおかしい。ただ、ここは夕暮れの国なのでいつだろうと夕暮れなのだが。

 周囲をゆっくり見回す。目はちっとも慣れて来ないし、地面を踏みしめている感触はあるが、それ以外は何も無い場所だ。一歩進んでみると、爪先に硬い物が当たった。壁とか、そんな感触に似ている気がする。


「イザークさんは周囲の景色、見えてる?」

「え、何でそんな恐い事訊くの?……何も見えないけど。君には何か見えてるわけ?」

「いや、何も見えない、真っ暗だね」

「じゃあどうして確認したんだよ。まさか僕が失明でもしたのかと思ったでしょ」


 動揺した事を悟られたくないのか、イザークさんは舌打ちまで漏らした。


「ご、ごめんよ。でも迂闊に動かない方が良いかも。何か足に当たって――」


 絹を裂くような甲高い鳥の鳴き声が続く言葉を遮った。ギョッとして声が聞こえてきた頭上を見上げるが、やはり何も見えない。


「全く何も見えないね。ミソラ、声がした方へ瞬間移動出来ないの?こんなんじゃ、依頼にならないんだけど」

「出来ると思うけど、それでも何も見えて来なかった時は一度ギルドに撤退していい?」

「真っ暗闇って事は無いと思うけど。何せ、鳥は鳥目だからね」


 根拠の無い自信は聞かなかった事にした。活動時間が夜中の鳥だって、世の中にはいるというのに。

 イザークさんを連れて行くべく、そのイザークさんを捜すが、私がその場から動いてしまったばっかりに手は宙を掻くだけだ。あれ、イザークさんはどの辺に?


「ねぇ、どこ見てるの。こっち」


 全く予想だにしなかった方向から腕が伸びてきて、私の腕に触れた。これ私だけじゃなくてイザークさんもその場から動いてたな。


「よし、行くよ」


 見た事も無い食肉鳥をイメージし、大体上空である事を指定する。あれ、今思ったけど不確定要素多いな、大丈夫かこれ。

 一抹の不安が頭を持ち上げた瞬間、景色が変わった。


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