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転生したら神になれって言われました  作者: 澪姉
第五章 神国篇
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55話 クルル

挿絵(By みてみん)

「リュカー! (no)ヴェレン(veren)!」


「んなろっ……、おらぁ!」


 レアのエルフ語の声援に応えたものか、強烈な魔力を撒き散らしつつ突き出された魔熊の熊爪の一撃を、リュカはジャンプしながら両手と片足でその腕に右半回転して身体を巻付けつつ手首と肘を瞬時に決め。


 最後に左足で腕を引き戻せなくなった魔熊の無防備な右側頭部に、威力を殺さぬままの左回し蹴りを叩き込み、その回転力をも利用して空中で極めていた魔熊の右腕を乾いた音を立ててへし折った。


 ――地球で言うところの、サンボの飛び込み腕十字である。


 ただし、屋外かつ他の敵もいるため、地に伏せて関節技を継続するようなことはせず、瞬時に極めて折った後はすぐに腕を離し距離を取っていた。


「レア、止まれ、ダーロ(daro)! まだ危ないから!」


 駆け寄ろうとするレアにエルフ語混じりの制止の言葉を投げかけ、リュカは更に別の魔物に向かって助走をつけた蹴りを放ち圧倒し始めた。


――――☆


 フィーラス帝国の帝都エル・フィールをフープ・ディル・アルトリウス率いる諸王国連合軍が攻め落としたのは半年前だったが、その後もゲリラ化した帝国軍残党が神国国境から神国内へ敗走しており。


 その国境付近から新生アルトリウス王国建国成ったアルトリウス軍に散発的にゲリラ戦や破壊工作行為を繰り返していること。


 盗賊ギルドの過去の数々の破壊工作行為が明らかになったことで、神国内部にあるという盗賊ギルド本部の支持者引き渡しを神国に求めているが返信がないこと。


 神国の主神アマテラスに破壊行為の疑い有り、ということで人界の女王ククリヒメを二代目国王に据えたアゼリア王国より強い抗議を送ったが無視されていること。


 などの理由により、アゼリア王国自治領クーリ領主オキタ・タクミ公爵率いる聖神軍団とその同盟国ドワーフの鉄輪王国軍が共同で神国に宣戦布告、侵攻を開始しているのが現状だった。


 ただし、『神国内部には神しか居住していない』という情報があることから、帝都エル・フィール改め王都アヴァロンに座するフープ・アヴァロン・アルトリウス国王以下の軍は侵攻に関わっておらず、ただ重要同盟国となった隣接するクーリ自治領軍とドワーフ王国軍の自領通過許可を与えているだけ、かつ帝国軍残敵掃討主力として王国が雇っているだけ、という状況であり。


 また、西方ディルオーネ王国を主軸とする衛星国家群の騎士団から成っていた西方諸王国連合軍もフィーラス帝国滅亡を果たしたことで大義名分がなくなったことから、そのままアルトリウス王国軍として残留し仕官を求める一部の騎士以外は全て戦果と褒章を以て国元へ帰参する予定となっていた。


 その新仕官兵士も荒廃した国土内の整備などの治世に追われること、かつ砂漠の国土の王国で持ち込んだ戦争資金が尽きる前に新収入源を安定させる必要性が高いことで既に戦争をやっている場合ではなくなってしまっており。


 よって、建国戦争に多大な貢献を果たしたクーリ自治領およびドワーフ王国軍には親衛隊を貸し出すに留めるしかないのが現状だった。


 クーリ自治領領主であるタクミの方も、仮にも神族相手に人間で構成された聖神軍団を当てる気は毛頭なく、それはドワーフ王国も同様で、神国侵攻部隊は北部の地竜の洞窟経由と南部の王都アヴァロン経由の二正面作戦に分かれており、南部側にスサノオ、タキリ、サヨリを中心とした聖神軍団・ドワーフ王国連合軍が国境付近に駐留し残敵掃討中。


 ……聖神軍団の本隊はどちらかというと「鬼の超高速舗装屋軍団」として重宝されているらしい。あと井戸堀作業。


 そして本命のタクミらが、ドワーフの鉄輪王国北東部にある地竜の洞窟の奥深くで発見した神国へ繋がる開口部を、ドワーフたちの協力も得て拡張し、そこから北部侵入隊として侵入しているのだった。


「何が『神国内部にゃ神しか住んでない』だよ、魔物だらけじゃねーか!」


 獅子の背に山羊の頭、尻尾が蛇になった炎を吐く魔物――キマイラを前にしたリュカが、空中を一回転するほどの強烈な回し蹴りの一撃で、獅子の首の骨を叩き折って絶命させつつ吐き捨てた。


「そおおおぉぉぉぉいっ!」


 煌めきしか目に映らないほど、かつ砂塵が舞い上がるほどの高速で身の丈ほどの銃棍を振り回したタギツが、気の抜ける可愛らしい気合の声を上げつつも絶大な威力となった回転力を以ての一撃で、巨大な双頭の黒犬――ケルベロスを叩き伏せると同時に、銃棍からの途切れることのない連続射撃を更に加えることで物言わぬ肉塊へと変貌させる。


「うーん。これはさっぱり進めないねえ。どうしようかティース?」


 巨大な大蛇でありながら、頭頂部は鶏状でくちばしがあり、とさかを持ち、四対の足を持つ炎を吐く蛇の魔物の首を片手に顕現させた巨大な重力渦で締めるようにして固定したタクミが、のんびりと空いた逆の手で頬を掻きながら軽く振り返って尋ねた。


「と申しましても、寄せる魔物は駆逐するに越したことはありませんしねえ? とりあえず、そろそろ休憩しましょうか、夕食時ですし?」


 高速で回転させた八連銃棍から発射、炸裂させる無尽蔵の雷球銃撃による弾幕で、タクミが持ち上げているバシリスクの他、砂芋虫サンドウォームといった様々な視界に入る全ての魔物たちを粉砕して行っていた。


「とーちゃん! あたしの獲物がいない!!」

「とーちゃん言うなし。どこで覚えたんだそれ。ククリはお留守番ご苦労さん、ご飯だよー」


 どういう神力の使い方をしたものか、レムネアの形見である本来は全長2メートルに達する大きさであった赤竜の竜弓をククリの現在の身長100センチにちょうど良いサイズらしい60センチ程度まで縮小させたククリが、タクミの側まで駆け寄り勇ましく竜弓を構えたまま言い募ったものの。


 あっさりと胸に抱えられてティースの元に連れ戻されることに不満を覚えたものか、身をよじってタクミの胸元から逃れようとしてじたばたと暴れたが、重力渦によって背を掴まれ、空中にぶら下げられたまま強制連行と相成った。


「ククリ、アルバイン(albain)! レア、ダゴール(dagor)!」

「ククリはこれでも神だからいいの。レアは戦えないの、だから大人しく待ってなさいっ。ダルソ(dartho)!」


「――すっかりお母さんだねリュカ」

「なっ?! いや、だってよぉ? オレから離れねェんだもん、連れて来るしかねェじゃねーか」


 うろたえつつも、胸にしっかりとレアを抱き上げたその姿は若々しい母親そのもので、タクミは微笑を浮かべてリュカの腰を抱き寄せた。


「エルフ語まで覚えちゃって?」


「いや、レアって幼いから単語の片言なんでまだ分かるんだよ。大人のエルフ語は難しすぎてさっぱりだった。あと、レアって精霊力で感情の波を感じてるみたいで、簡単な感情なら言葉の壁越えて通じるみたいだ」


 並んで歩きつつ、お互いが胸に抱いた子が軽く叩き合ってじゃれ合っていることに気づき、お互いにほっこり。


 野営地を探していたミリアムが戻ったことを知って、そちらへ全員で移動することに決めたのは戦闘を終了して更に一時間ほど経過してからだった。


――――☆


「なんかめんどくさいしさー。俺が残ってここ維持しつつじわじわ進んでる間に、ティースがドワーフ王国戻って神鉄出して、全員乗れる戦車としてドワーフたちに加工して貰って。補給物資積んでゲートでまた戻って来るのはどうだろうね?」


「ああ、それがいいかもしれませんわね? わたくしとククリ、レアちゃんのような非戦闘員も同行しておりますことですし、このペースですと神都到着まで一ヶ月は掛かりそうですし」


 ……誰が非戦闘員だって? 最強遠距離火力持ちが何言ってんだ。とかいう感じの全員のツッコミ顔をさらっと流し、更にティースは言葉を続けた。


「どちらにせよ、これだけ神気に溢れた土地で変異した魔物たちを相手にしつつ先へ進むのでしたら、やはり後衛を守ったり休息するための陣のようなものは必須になるのではないかと思います。

 今はタギツちゃんの神域結界で外敵を弾いておりますけど、この先ずっとこれ、というわけにも参りませんでしょうし。

 幸い、まだそれほど進んでおりませんから、一旦引き返すことを決めるにはいいタイミングだったかと。

 ……あら、レアちゃんにはちょっと熱かったのかしら?」


 目の端にレアがスープを器に吐き戻すのを見て、ティースがそんな一言を付け加える。


サェア(saer)……」


 しかし、顔をしかめて胸に抱えたレアの頭を軽く叩いたリュカが首を振り、スプーンからスープをすくってレアの口元に近づけた。


「いや、ハーブの苦味が苦手なだけだ。こいつ意外と好き嫌い激しいんだよ。苦くないっ、アルサェア(alsaer)! レア、ちゃんと飲め! ほら好き嫌いだめだって、飲め、ソゴ(sogo)! ――そしてこのスープ美味いよな。ミリアムさんの意外な特技を見たって感じ」


 リュカの賛辞に、料理を担当したミリアムは照れ笑いを浮かべた。


「母が元宮廷料理人で、女子の嗜みとしてしっかり仕込まれましたので。ムーンディア王国は諸王国連合の辺境で小国ですから、王族でも身の回りの最低限のことは自分でやるように教えられておりまして」


 それに、女子であれば当たり前のことです、と続けたミリアムの屈託の無い笑顔に、同じ女子であるはずのリュカはそっと目を逸らした。


 ――ティースは神器であり、タクミと同じく普通の食事は摂れない身、かつ本来食事の必要がない身体なので、タクミと同様に食事風景を見守っているだけである。


 神でありタクミたちと同様に食事が必要ないタギツとククリはまだテントの外で模擬戦をして遊んでいた。


「あと、あんなに大事にしてた宝剣で調理しちゃってたのがちょっと笑った」


 タクミの言葉に、ミリアムははにかんで腰の後ろに斜めに差したミスリル宝剣の<シャープエッジ>を軽く叩いてみせた。


「ムギリさまに教えられましたし。道具はただの道具、道具は使われてこそ幸せなのだから、過剰に意味を持たせて使い道を限定しすぎてはいけない、それは道具にとっては不幸なことだ、って」


 ミリアムにしては珍しい大照れの様子に、おや? とティースとタクミ、リュカが顔を見合わせ。


「ミリアムちゃん、ズバリ。ムギリさんのことをどう思ってますかー?」

「えっ、あっ?! いえ、道具としての剣の価値と、道具が喜ぶ使い方をご教授して下さった方であり、こうして宝剣と宝鎧を真の姿に戻して下さった方であり……」


 タクミの言葉にしどろもどろに弁明を始めたミリアムに、ティースが更に質問を続ける。


「殿方としてどう思われてますか?」

「ふぁっ?!?! えっ、ええと、頑強な肉体とそれに見合う戦斧の技量をお持ちで、1,000年もの間ずっとドワーフ王国を護られ続けて来た守護王であり……」


「で、いつ告白すんの?」

「ふぇぇえぇぇぇっ!!??」


 リュカのとどめの一撃に、口元を抑えて赤面してしまった様子は15歳の普通の女の子でしかなく。


 くすくすと笑いながら、皆でぽんぽんと代るがわる赤面が収まらないミリアムの頭を撫でたのだった。


――――☆


 ――クルル。おーい。


 皆が就寝した後、割り当てられた一人用テントで。


 タクミは横になった後、自らの深層に潜り、ずっと姿を見せないクルルが居るはずの『奥』に向かって進みつつ、無駄とは思いつつもクルルに向かって呼びかけた。


 ……無論、返事はない。さほど遠くもない真闇の空間を飛翔したタクミは、その空間の最奥にあるひとつの扉に易々と辿り着く。


『ダイナマイトバディ猫耳美少女、正妻クルルちゃんのお部屋♪』などと扉の表に書かれた丸文字に苦笑し、ドアノブを捻るが……、がちゃがちゃとノブが捻られるのみで、押しても引いても開かない。


 ――クルル。今日は、押し通る(・・・・)よ?


 深層意識下の仮想空間故、鍵がかかっている状態やこの扉も所詮ただの意識内での仮想現実での具象化に過ぎない。いつもは諦めて『表』に戻るのだが、今日のタクミはいつもと違っていた。


 ノブから左手を離し、固く閉じられた扉の表面にそっと右手を撫でるように這わせる……、と同時に、扉は始めからそこに存在しなかったかのように消え失せ、真っ暗な空間の床に、ぽつんと身を横たえたクルルがまっすぐに上を見つめつつ横たわっているのが遠くに見えた。


 ――クルル。起きて?


 近づこう、と意志を込めただけで、瞬時にタクミの意識体は横たわるクルルのすぐ横に移動する。


 ――クールールっ。起ーきーろー。いたずらしちゃうぞー。


 身を屈めてクルルの両脇に手をついて上半身を支えるように覆い被さり、両目の横に大量の涙の筋を作り、未だ泣き続けるクルルの顔の至近距離から優しく呼びかける。


 と、ぱちっ、と目を開けたクルルは、滂沱の涙を宙に撒き散らしながら、間近にあったタクミの身体に抱きつく。


『ごめんなさい……、クルルは許されないことを』


 ――怒ってないよ。……「どこまで気づいた?」


『ここまでの行程が、全部「システム」の手のひらの上です。不自然に制限された神々の知識、神核と神力の関係性、全て「システム」に制御されてます』


 ――上出来。俺と一緒のとこまで気づいてる。システムっつか、「世界のことわり」っつか。抜け道は?


『あるだろうと思いますけど分かりません。巧妙に隠されているのと、クルルの知識に部分的にブロックされている部分があって、そこに入っている知識は覗けません』


 ――うん、そうだろうと思った。俺も、「親父やお袋、爺さんの顔が思い出せない」。職場の同僚や上司とかもね。つまり、俺たちのそういう記憶は全部「作られた記憶」ってことだ。道理で、親父たちの魂がこっちでも会える、ってティースに言われたのに会おうと思わないわけだ。「プログラムされてない行動」だからだろ?


『恐らく。タクミさんが四肢を失うことも全て「世界のことわり」の予定調和で……』


 ふうう、と大きく息を吐いて、タクミは中途半端な姿勢で上半身のみで自身に抱きつくクルルをそっと床に戻しつつ、自身の体重をクルルにゆっくりと預け、義手の爪でクルルの乱れた前髪を撫で付けた。


 ――これはこれで慣れたからもういいや。ってか、たぶんだけど、「ヒルコの身体」が生まれつき四肢欠損だったんだろうと思う。だから、これが本来の俺の生身なんだろうね。もう、こっちに来てから生身の手足よりずっと長く義手義足だから馴染んじゃってるし。……地球の俺の体験も、記憶が曖昧なところを見ると転生自体が本当の記憶か怪しいんだけど、あっちで生まれたのは確かなんだろうな。神話にも残ってるくらいだし。


『そうでしょう。タクミくんの数百回の転生を数千年見守ってきたクルルの記憶も、正しいのかどうか……』


 ――俺の方に記憶がないのか、「ブロックされてて思い出せない」のかは分からないけど。そこら辺はいじってないと思う。あんまりブロックだらけにすると他の神の記憶もいじる必要性出て来るから、逆に面倒になるんじゃないかな? とりあえず、「世界の理」が俺たちにやらせたいことって何だと思う?


 言いながら、タクミは泣き続けるクルルの顔から首筋にかけてを優しく義手の爪先で撫で下ろしつつ、頭の後ろに片手を回して腕枕の姿勢を取った。


『アマテラスも一部を操られていると思います。たぶんですが……、カグツチの影響を強く受けてしまった男神アマテラスを抹殺すること、ではないかと』


 ――やっぱりか。あの残虐なアマテラスの人格と、最初に出会った人格が別じゃないかな、って思ってたんだよね。最初に出会った奴も途中でころっと変わった印象あったし……。


 言いながら、タクミの指先の動きで熱い息を吐いたクルルの唇にキス。何度か続けて、そのまま耳の方に舌を這わせて行く。


『あぅん……。タクミくん? あの、その、何を?』


 ――いやごめんっ! 愛してる女の子が無防備で泣いてたら手を出さずに居られないってか、クルルいま自分で気づいてるのかどうかわかんないけどめっちゃくちゃ可愛すぎ!! 据え膳頂きます!


 潔いんだかなんだか分からないタクミの宣言に、悲しげな表情を崩さずにいたクルルがぷっ、と吹き出して笑い始めた。


 ――うん、クルルはやっぱりいつも笑ってて欲しいな。「作られた記憶」なんか与えてくれて手のひらの上で踊らせてくれちゃってた「世界の理」には腹が立つけど、こうしてクルルに出会わせてくれたことには感謝しかない。……愛してるよ?


『私もです、タクミくん。……クルルは未来永劫、あなたのものです』


 ――男冥利に尽きるね。……アマテラスはカグツチに影響されて壊れたってか修復不可能になったんだろうね。バグが発生したっていうか。なんていうか、多分だけど、俺は「アマテラスの天敵」なんだと思う。重力魔法しか使えないのもそうなんだろうな。


『……光を唯一吸収して曲げる力、ですものね。親方との出会いも仕組まれていたとしたら?』


 ――仕組まれてても操られてても、俺は親方には感謝しかない。ってか、全部プログラムされてる筋書き通りのことだったとしても、俺は今まで俺を助けてくれた全てに感謝してる。もちろん、いちばんの感謝はクルルにね。


 笑って、タクミは腕枕にした片手を曲げてクルルの頭を自らに寄せ、長く続くキスを交わした。そのまま、空いた手をクルルの腰に回し、半回転しつつ体勢を入れ替えて自身の上に乗せるように導く。


『思考や感情に制限は入っていないように思います。「世界の理」の温情でしょうか? こうしてクルルがタクミくんに恋焦がれているのも、クルルだけの感情ですね、たぶん』


 いつの間にか衣服を消し去っていたクルルが、柔らかい神気を放つ光り輝く全身の肌を、タクミの青と金の幾何学模様で彩られた全身の鎧に強く押し付けるように密着させた。


 ――逆に考えたら、ブロックされてることでブロックを回り込んだり別の手段でこじ開けられるかも、って考えてる。ブロックがあることを知ったならやりようはいくらでも有りそうな気がしない? 俺のクルルなら思いつけるよね、きっと。


『いじわるですね、タクミくん。はぁぁぁあぅっ……、そんな風に言われて、張り切らないクルルはっ、クルルじゃないです』


 全身を貫く刺激に息を切らしながら、クルルが激しく身悶えしつつ答える。刺激を途切れさせないまま、タクミも言葉を継いだ。


 ――とりあえず、神核。俺の考えだと、アレは必須なモノじゃない。「実際に、今俺が使ってる神力は神核を通さずに使えてる」。クルルの考えはどう?


『たぶんっ、あんっ、タクミくんの、思う、通りですっ……、んっ!』


 ――じゃあ。起きたらいろいろと試そうよ。「どこまで本当にブロックされてるのか、全部確認しないと」。ね?


 既に言葉を返せなくなったのか、全身を打ち震わせながら、強く目をつむってがくがくと頷きを返すクルルを心底可愛い、と思いつつ、タクミは更に強い刺激を与え続けた。


――――☆


「なんか眠った気が全然しないわ」


「タクミくん激しすぎなんですよっ。もうー、朝になっちゃったじゃないですかっ。クルルはへとへとですっ」


 んー、と片腕を天頂に伸ばして思い切り背筋を伸ばしつつ呟いたタクミに、『実体のクルル』は、べっ、と小さく舌を出しながら苦情を申し立てた。


 東の空から伸びてくる朝日の光を全身に浴びながら、タクミとクルルは両手を絡ませ、額を当ててお互いに苦笑すると、昇り来る朝日を眩しそうに見つめた。



転神IIの方の進捗の都合とかで、ここから1日1話18時うpになりまーす。


転神終了後に間隔開けずに連載開始する予定で地図やモデル作ってる最中なのです(なんで小説執筆さ行に3Dモデル製作が関わってくるのか。

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